[KATARIBE 22297] [BM03N]EP: 「空よりきたる」

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Date: Tue, 28 Aug 2001 01:44:13 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 22297] [BM03N]EP: 「空よりきたる」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200108271644.BAA83849@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 22297

2001年08月28日:01時44分12秒
Sub:[BM03N]EP:「空よりきたる」:
From:久志


久志です。

新ワールド、ブルームーンのミニ話です。
イメージオンリーで作ってみました。

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「空よりきたる」
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 週に一度の大風の日、空からあれが舞い降りる。
 僕らは太陽より早く起きて、丘へ向かう。

「爺ちゃん、早く!早く行こう!」
「そんなに走らんでも、やつらは逃げやせん。そんな大声を出しよったらウサ
ギどもが怯えるさね」

 とうに鉱山掘りを引退し、食ウサギ売りの行商も板についた爺の手を引く。
荷台のカゴには生きのいいウサギがわんさと入っている。路地をいくほかの荷
台にはかっちりと焼いた塩パンが、その隣を行く肉屋の荷台には香ばしい鴨肉
の燻製が山と詰まれている。

 今日は飛行船が舞い降りる日。

 この日の為に、街の大半の男達が山を掘り、なるたけ浮遊石を多く含んだ鉱
石をたくさん蓄える。女達や幼い子供、老人達はこの日の為に、日持ちのいい
保存食を作り、岩のような塩パンを焼き、携帯しやすく味のいい食ウサギを増
やして太らせる。

 週に一度、丘へ舞い降りる飛行船。
 空へ浮かぶ島からきた船や、遠い魔術都市からきた船や、はるか海の向こう
の島々からきた船が、ここへ立ち寄る。

 大陸の中継地として、ここの鉱山は途中経由するのに丁度よく、食料や物資
を集めるのによく、出立するために乗る風もよい、というとても恵まれた土地
だという。

 だから、毎週大風の日はどこからかくる飛行船が丘へと舞い降りる。
 飛行船の連中は、僕らとどこか違っていて氷のように冷たくてすけるような
肌をしていて、いつも空を見ている。

 連中は僕らが用意した浮遊石や食料や水をたくさん買いこんで、その日の夜
の大風に乗ってまたどこかへ飛んでいく。この先は当分行かないと充分に補給
できる土地がない。だから、よい風の吹くうちにできるだけ遠くへと遠くへと
飛び立つ。

「ウサギだよ、よく太ってるよ、お兄さん買っていきなよ!」
「お兄さん、塩パンはどうだい? 塩パンの無い食事は味気ないよ、安くしと
くよ!」

 お兄さんは僕と隣のおばさんとを見て、大きな塩パンを二つと生きのいいウ
サギを三匹、と言って小さく笑った。

「ありがとう、お兄さん!」
「お兄さん、良い旅を」

 お兄さんはもときた道を戻り、船へと歩いていく。
 また他のお客はいないかと隣のおばさんが大きな声で通る人に呼びかける。
 僕も負けじと道行く船員に向かって呼びかける。

 高台にはりだすようにのびた丘。

 小さいもの。大きいもの。いかついもの。何台も飛行船が留まっている。

 明日を待たずにまた風に乗って遠くへいく船。

 いつか。
 僕もここから遠くに行ってみたいと思う。

 張り上げる声に力が入った。

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こんな感じで。



    

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