[KATARIBE 22198] [HA06N] 『蜻蛉羽草紙』

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Date: Fri, 17 Aug 2001 01:01:40 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 22198] [HA06N] 『蜻蛉羽草紙』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200108161601.BAA75647@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 22198

2001年08月17日:01時01分40秒
Sub:[HA06N]『蜻蛉羽草紙』:
From:E.R


こんにちは、E.R@あかとーんーぼー です。
#いや、見て無いけど。

というわけで、ふいと。
現在時点の風景です。

************************
蜻蛉羽草紙
==========


 さこたの おにいちゃんへ

 ゆずは げんきです
 かすみも げんきです
 てんちょうも げんきです

 かすみは いっつもいそがしくしてます
 このまえは ゆずもおてつだいしました
 木のところに いきました
 いっしょに おはなをまわしました
 よくできたねって かすみ いってたの

 ゆずのいるところは おそらがきれいです
 おそらが はんぶんだけだいだいいろです


 ゆず おでんわしたいなっておもいたけど
 さこたのおにいちゃんのでんわ しらないので
 でんわ できません

 とんぼさんが おてがみてつだってあげるねってゆずにいったので
 おてがみかいてます
 おへんじください

 ゆず



 八月も半ばを過ぎると、何となく日の翳るのが早くなる気がする。
 決して涼しくは無いくせに、夕焼けの時間だけが長くなる。
 けれどもまだ、夕焼けの色は何となく中途半端で。
 空の下半分を、クリームの色に染めているように見えて。

 重ねられた粗大ゴミを、上から丁寧に降ろしては隣に積んで。
 下のほうから掘り出した目当てのものを、そっと抱え上げる。
 まだ、充分に綺麗なチェスト。

 作業をしているのは、金髪の青年である。
 タオルを首に巻いた、如何にもな格好なのだが、顔立ちはどうもその格好に
不釣合いなほど整っている。
 ……の、割に、妙にその格好が板についているのも事実なのだが。

 ぱん、と、掘り出したチェストに付いていたゴミを払うと、彼はそれをよく
眺めた。結果として気に入ったらしく、それを道端に置いていたリヤカーに乗
せる。
 その他、幾つかのものが入れてあったリヤカーの柄を、持ち上げて歩き出す。
 その間、見事なまでに……無言のまま。


 暫く。
 暮れかけた空の下を歩く。
 ころころと、音はやはり単調なまま。

 と。
 彼はちょっと足をとめた。
 柄から片手を外すと、首にかけたタオルで汗を拭く。
 
 その、手元に。
 すい、と。

「……」

 それは、まだ季節には少し早いだろう、赤蜻蛉。
 薄い羽を気ぜわしく震わせた蜻蛉は、す、と、タオルの上に留まった。

「……」

 彼は、動かない。

 一瞬、羽を休めたように見えた蜻蛉は、タオルの上に止まったまま、一層激
しく羽を羽ばたかせた。

「…………?」

 細かく震える羽の間から、羽と同じ、もろく透明な何かがほろほろと泡立つ
ように浮き上がる。それをそっとタオルで受けたところで、赤蜻蛉はそのまま
すう、と浮き上がって。
 そのまま、下半分が橙色に変わった空に、溶けるように消えた。


「……」

 その上に、書かれた。
 つたない……どこかたどたどしい、文字。

「…………」


 読み終える。
 暫し考えてから、それを先程拾ったチェストの1番上の引き出しに、そっと
入れる。

 そしてまた、リヤカーの柄を持ち上げて、ごろごろと引き出す。


 空は半分だけ、橙色に染まる。
 どこかで木霊の少女が、同じ色の空を見ている。

 それは、そういう時刻。
 そういう不思議のある時刻。

 そういう頃の、出来事である。


*************************

 と、まあ。
 こーゆー反則技もあるぞ、と(笑)。


 しかし、お約束ですが。
 ゆずが、自分の電話番号を教えてないところが味噌(はあと)<おい

 さて、佐古田のおにーちゃん、どーやってお返事をするのか……
(ええとこんじょわる?(^^;;;<己)


 というわけです。
 ではでは。



    

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