[KATARIBE 22100] [HA06P]: 『譲羽の八神邸侵入記』前編

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Date: Fri, 3 Aug 2001 01:20:51 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 22100] [HA06P]: 『譲羽の八神邸侵入記』前編 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200108021620.BAA42464@www.mahoroba.ne.jp>
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2001年08月03日:01時20分50秒
Sub:[HA06P]:『譲羽の八神邸侵入記』前編:
From:E.R


どーも、E.Rです。

その昔、アイデアだけで、内部受けしていたネタがありまして。
ちょっとそこらを書いてみたく、あちこちに御許可頂きまして。
ちょっと過去に戻りまして。
ちょっと懐かしい奴を使いまして。

1999年の夏の話です。

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譲羽の八神邸侵入記
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木霊も屋根から落ちる昼
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 夏の某日、昼下がり。

 譲羽     :「ぢいぢいぢっ(ぴょんこぴょんこ)」

 跳ねているのが、屋根の上というところを除けば普通…………
 ……でもないわけだが。

 譲羽     :『いくんだもんっ。佐古田のおにーちゃんとこ、いくんだ
        :もんっ』

 ぴょんこぴょんこ。
 まあ……普通の人には、どうせ「ぢいぢい」としか、聞こえないわけで、そ
の声は街路樹からかますびしく響く蝉の声に見事に紛れているのだが。

 赤っぽい瓦の屋根を越えて。黒の釉薬の掛かった屋根を越えて。
 到達したのは、ひいき目に見ても、かーなり年季の入った二階建ての家。
 目指すはその2階。いつも窓が開いている部屋。
 
 譲羽     :『わーい、佐古田のおにいちゃんとこだっ』
 SE     :ぴょいっ☆

 さて。
 世の中には、猿も木から落ちるとか、弘法も筆の誤りとかいう言葉がたんと
こさとある。
 猿も木から落ちる。
 ……ましてや木霊の人形をや。

 SE     :どさばさどさっ
 譲羽     :「ぢいいーーーっ」
 SE     :…………ぼふ。

 コンクリートブロックの塀と、風見アパートの間の、ごくわずかな隙間。そ
こにごっそりと雑草が繁っていたのが幸いであっただろう。
 ……大家さんの意見は置くとして。

 譲羽     :「……ぢいっ(ぷんすか)」
 
 怒ってる場合かい。

 譲羽     :「ぢ……ぢいっ(えいさっ)」

 細長い、女の髪のような葉が密集している上に、何とか譲羽は立ち上がった。
 上がった目線のところに……

 譲羽     :「ぢ?(のびっ)」

 丁度、譲羽が立ちあがってうんと手を伸ばすと届くあたりに、窓の枠がある。


 さて。
 譲羽が目指していたのが、2階のJ号室である。
 確かに一旦外に出て玄関からそこを目指すのが正攻法である。
 但し……身長が、普通人の1/3程度の譲羽には、現在立っている雑草の茂
みから脱出することがかなり困難である。
 また、塀をよじ登って2階の窓から入るというのも不可能ではないだろうが、
塀の上でぴょこたん跳ねていたら人に見つかるかもしれない(屋根の上を跳ね
ているのとどっこいどっこいという発想は譲羽には無い)。
 何より目の前、手を伸ばせば届くところに窓の枠があるのだ。

 譲羽     :「ぢいっ(よしっ)」

 窓を通り、この部屋を抜けて、2階に上る。譲羽が他の方法を考えたとも思
えない。
 ……ついでに言えば、部屋を抜けるにはその部屋の扉の鍵が空いている必要
がある、というのは、当然ながら彼女の思考範疇に存在していない(おい)。

 譲羽     :「(むーー……)ぢいっ」
 SE     :ぴょいっ

 んせっと手を伸ばし、枠に手をかける。後は身軽なこの木霊人形には、大し
た困難では無かった。

 …………とりあえず、入るまでは。

 入った先が、問題であった。
 そこは風見アパート一階D号室。
 別名、カオスの館。
 ……八神氏の部屋である。

八神邸侵入っ
------------

 譲羽     :「ぢいっ」
 
 窓枠に手をひっかけ、飛び上がり、そのまま窓から…………

 SE     :どさばさどさっ

 ……何もそのまま部屋の中に落ちなくても良いのに(汗)。

 譲羽     :「ぢいいっ(かすみーっ)」
 SE     :ぼす(停止)

 …………。

 譲羽     :(。‐。)

 上下逆様状態(苦笑)。

 譲羽     :「……ぢい(憮然)」

 んせっと頭の上に伸びている両足を左右に揺すって。

 譲羽     :「ぢいっ(憤然っ)」

 よいせっと、上下方向を正した……ところで。
 譲羽は周りを見まわした。

 …………。
 ………………。

 譲羽     :「ぢい(汗)」

 周りが、そも見えない(爆)。

 譲羽     :「ぢ……ぢいっ(ええとええとこれがごほんで)……ぢ、
        :ぢいいっ(汗汗)」

 足元を見て、急に慌てて足をぱたぱたさせる。

 譲羽     :「ぢいいっ(ご本踏んだらいけないのにーーっ)」

 と言っても。
 後ろには、雑誌の山……の崩れたの。
 前には、別の雑誌の山……の、崩れかけたの。
 足元には、雑誌の崩れた後。

 譲羽     :「ぢい……(全部ご本だよう……)」

 本を踏むもんじゃないっ、と、きっちり瑞鶴店長に怒鳴られた記憶は鮮明で
あるし、ご本は大事だからね、と、にっこり笑って念を押した花澄の言葉はそ
れ以上に記憶に残っているのだが。

 ……が。

 譲羽     :「ぢいーーっ(ご本踏まないとどこにも行けないようっ)」

 ……御説御尤も。


歯ブラシとか包丁とか醤油さしとかマグカップとか
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 譲羽     :「ぢ」

 とりあえず。後で花澄と店長には謝ろう、と一人決めして、譲羽は目の前の
雑誌の山をよじ登る。

 SE     :ぐらっ(小揺れ)
 譲羽     :「ぢいっ(汗)」

 そろそろ、そろそろと。
 適当に積んである分、足がかり手がかりはあるわけだが、しかしその分だけ
振動には弱いわけ……で…………

 譲羽     :「ぢいっ(汗)」
 SE     :どさばさぐしゃっ

 ……いわんこっちゃない。

 譲羽     :「ぢ……(憮然)」
 
 それでも今回は、崩れた本の上にぺたんと座った格好のまま落ちたらしい。

 譲羽     :「ぢ……(思案)」

 右を見る。
 脚の無い椅子みたいなのがある。
 左を見る。
 パルック、と書いた紙のパックから、黒ずんだ蛍光灯の端っこが見える。
 後ろを見る。
 当然、雑誌がある。
 前を見る。
 …………って。

 譲羽     :「ぢいいいっ(やだやだやだあああっ)」

 包丁じゃんか(汗)。
 ステンレスの包丁は、一応刃を下には向けていたものの、譲羽の崩した雑誌
とその向こうのコップの間にちんまりと収まっている。

 譲羽     :「……ぢい……(かすみぃ……)」

 段々、涙目になってくる譲羽である。
 が。

 譲羽     :「……ぢ……(で、でも……)……ぢいっ(譲羽もうおお
        :きいんだもんっ)。ぢいいっ(泣かないもんっ)」

 流石松蔭堂保育園年長組(笑)。

 譲羽     :「ぢいっ(ちゃんと一人で、佐古田のおにーちゃんとこい
        :くんだもんっ)」

 両手握り拳。気合一杯一杯。
 
 譲羽     :「ぢいっ(よしっ)」

 それ以上乗っかっている雑誌が動かないように気を付けながら、包丁の向こ
う、コップの横の小さな隙間に右足をおろす。

 譲羽     :「ぢいっ(よいしょっ)」

 手を伸ばし、適当に掴めるものを掴んで、次は左足を下ろす。

 譲羽     :「ぢいっ(えっへん)」

 とりあえず、着地ようやく成功……したものの。

 譲羽     :「ぢ……ぢ?!」

 伸ばした手の掴んだもの。

 譲羽     :「……ぢい?(なんではぶらし?)」

 頭の部分がすっかり開いている歯ブラシが、畳んだタオルと重ねた単行本の
間に斜めに挟まっている。
 慌てて手を離して周りを見まわす。
 斜め前にあるのは。
 あれは……

 譲羽     :「ぢい……(おしょうゆさしだ……)」

 フロッピーディスクが、その下に斜めに挟まっており、半分くらい入った液
面はきっちりと傾いている。
 醤油が周りにこぼれていないのが、いっそ不思議なくらいである。

 譲羽     :「……ぢ、ぢい……(よ、よくわかんない……)」

 ……それもまた道理である。


とりっぷとらっぷとろっぷ
------------------------

 まあ、醤油さしを引っくり返したくはないので、右側の、畳んだタオルの上
に緊急避難。
 タオルには災難であったのは確かであるが、辺り一面醤油色に染まるよりは
ましだったろう……と、譲羽は無理矢理納得したわけだが。

 譲羽     :『でもここ、たいへんだよう……(しゅんっ)』

 ぽて、とタオルの上に座って、溜息をつく。
 タオルの前には、CDケースが積み重なっている。

 譲羽     :『どこいっても、ここから出れないよう……(じわ)』

 まあ。
 成年男子ですら足の置き場に迷うカオスの館である。譲羽だとまず視界が効
かないし、足を出すところも無い。自然、登っては落ち、の繰り返しになって
しまう。

 譲羽     :「ぢいーーーっ(佐久間のおにーちゃああんっ)」

 その声も、窓からの蝉時雨に紛れてしまう辺りが……あわれである。

 譲羽     :「…………(すんっ)」

 べそをかきかけて、ふと前を見る。
 CDケースの積みあがる、その向こうに見えるのは。

 譲羽     :「ぢ(ベッドだ)」

 以前、無道邸、みかん嬢の部屋で見かけたもの。
 あの上で、ぽふぽふと跳ねるのは楽しかった。

 譲羽     :「ぢいっ(あそこならわかるっ)」

 上で跳ねたら、多分どっちに出口があるかわかるだろう。
 …………なんか根本が判ってなかったのは秘密である。

 譲羽     :「ぢいっ(えいっ)」

 火事場の莫迦力。
 よいしょっと目の前のCDの山を突き飛ばして(おいっ)。
 
 譲羽     :「ぢいっ(えいいっ)」

 がらがらと崩れた上を、んしょんしょと登って降りて。

 譲羽     :「ぢいっ(嬉々っ)」

 こちらに垂れてきているタオルケットをんせっと引っ張った……途端。

 SE     :ばさどさ……がっこん☆

 しーん………

 譲羽     :「……ぢ?(汗)」

 目の前に、何故か白い柵がある。
 頭の上に、何だか柔らかいものが乗っかっている。

 譲羽     :「ぢ(苛っ)」

 それを引っ張って落し、目の前に持ってくる。

 譲羽     :「………ぢ(ぶらうすだ)」

 ……ゆずよ。それはTシャツだ。

 譲羽     :「ぢ……(苛)……ぢいっ(ゆさゆさ)……ぢいぢいっ」
 
 平たく言ってしまえば。
 ベッドの上に、洗濯物籠が置いてあって。
 それが端っこにおいてあったりして。
 タオルケットを引っ張った途端に落ちてきて。
 見事に譲羽をとっ掴まえる格好になった……辺りに偶然の悪意を感じるわけ
だが。

 譲羽     :「ぢい……ぢいい……(ゆさゆさゆさゆさ)」

 どうも変な具合に端っこが嵌りこんだらしく、揺すれど叩けど籠は持ちあが
らない。
 ただ、洗濯物だけが譲羽の周りで揺れる。

 譲羽     :「ぢ……(べそ)」

 窓からは、蝉時雨。

 譲羽     :「ぢい……(出して……)」

 じいじいと、途絶えることの無い………

 譲羽     :「ぢいいいいっ(だーしーてええっ)」


*****************************

 譲羽危機一髪!
 カオスの館の中から、彼女は無事脱出できるのかっ!?

 次号、括目して待(どがばきみしっ)


 ……待たないで下さい。ええ。
 あ、でも、続きは明日かそこらにでも(苦笑)。

 ではでは。


    

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