[KATARIBE 21898] [HA06P] 『雨から護るもの』

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Date: Tue, 26 Jun 2001 18:17:51 +0900 (JST)
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21898] [HA06P] 『雨から護るもの』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200106260917.SAA44467@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21898

2001年06月26日:18時17分50秒
Sub:[HA06P]『雨から護るもの』:
From:ソード


 こんにちは、ソードです。

 灰枝さん、美都の雨宿り、ありがとうございます〜。

 私がお返しできるのはEPだけ……って事で、あの絵が挿し絵に出来るような
話を書いてみました。

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エピソード『雨から護るもの』
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登場人物
布施美都(ふせ・みと):
        : 過去の記憶、記録の無い少女。「フツノミタマ」に関係が
        :有るらしい。
紫苑(しおん) :金属生命の猫。人の姿も取れる。美都を護ると誓っている。

突然の雨
--------
 SE     :ザアァァァ……

 突然の雨、その雨を受けない地面に一人の少女が走り込んできた。Gパンに
Tシャツというラフな格好であるが、道行く人の目を引く整った顔と綺麗な長
い髪の少女である。

 美都     :「ふぅ……参ったなぁ……まだ買い物終ってないのに。ぬ
        :れるつもりで走ろうかな……」

 Tシャツの色は白。彼女の好みであったが、ずぶぬれになるにはいささか抵
抗がある。いい年の女性なのだからそういう配慮はすべき……と、居候させて
もらっている女性から教わった。

 美都     :「こういう時に限って紫苑ちゃんいないんだからっ」

 無茶なことを言う。ついてくると言っていた紫苑を「下拵えしておいて」と
住処に残してきたのは彼女である。
 少し気合いの入った料理を作る為、下拵えを紫苑に頼んで一人で買い物に来
たのだ。それほど距離の無い駅前までだし、人通りも多い……安全なはずであっ
た。

 SE     :ごろごろごろ……
 美都     :「雷?」(空を見上げる)
 雷      :ぴかっ
 SE     :ドドーン

 美都が見上げた瞬間、空に光が走り轟音が轟く。美都はそれに魅せられたか
のように視線を離さなかった。

 美都     :「かみなり……」

 胸に右手を当て、思いつめたような表情になる美都。以前から雷を目にする
と心がゆれる自分には気がついていた。事情を知った今では、その理由も良く
分かる。
 彼女が「成る」ものは、雷の神に振るわれることになるのだ。神の名は「タ
ケミカヅチ」振るう剣は「布都御霊剣(フツノミタマノツルギ)」。

 美都     :(やっぱり……どきどきがとまらないよ……)

 雷に見とれる美都。美都は気付いていなかった。駅前の大通りから一本入っ
ただけというこの場所で、先ほどから人影がさっぱり見えないことに。

突然の襲撃
----------

 男の声    :「シャッ」
 美都     :「えっ?!」(突然周囲に風が渦巻く)
 SE     :カキンッ

 声を聞いた瞬間、美都の周囲に風が渦巻き、胸の中心を狙って飛ぶ一本の矢
の方向を変える。矢は先の壁に跳ね返って硬い音を立てた。

 美都     :「あなたっ……なんなの?」
 男      :「分かっているのだろう? ミタマ……」(弓を引き絞る)
 美都     :「(私を狙う人達……っ。武器持ってないよっ)くっ」
 SE     :カキンッ

 美都が飛びのいた場所に矢が射られる。矢尻の無い破魔矢だが、美都の身体
を貫くには十分な法力が込められている。当然、周囲の施設に被害はない。
 既に大通りに向かって走りだす美都。人の目を気にするのか、無関係の人間
がいればあきらめる。
 刺すような雨のなか、息を切らせて走る。曲がり角が有れば成るべく曲がり、
後ろから射抜かれるのを防ぐ。

 美都     :「はぁ……はぁ……」

 路地裏から大通りに飛び出し、軒下に入る。周囲を見渡すが人影はない。

 美都     :「人払いの結界……? まずいよ……」

 美都の存在は狙う「敵」にとって目立つらしく、隠れても大抵見つかってし
まう。周囲の人間に極力知られようとしない為、美都も普通の生活が出来てい
るのだ。

 美都     :「何か武器……と。これ……」(道に落ちていた鉄パイプ
        :を拾う)

 美都も鍛練を続けている。武器さえあれば並みの男には負けないが、条件が
悪い。雷によって乱れた心はそう簡単に正常に戻らない。
 雷を見たことで高揚している自分を手に足跡の武器を持ったことで認識した。
感じている。今遣り合えばやり過ぎてしまうだろう。相手の命に関わるほどに。

 SE     :パシャッパシャッ

 水溜まりを跳ねる足音が近づいてくる。

 美都     :「……だめ……やだよ……」

 手にしたものを放そうとするが、手がそれを拒否する。自営本能は武器の携
帯を強要した。達人の技は武器を選ばない。美都もまた、木刀で木片を、真剣
で大岩を切る域に達していた。

 美都     :「もう…………紫苑ちゃん……」


突然の守護者
------------
 SE     :パシャシャッ

 足音が止まった。

 SE     :ドスッ……バシャァッ

 柔らかいものを殴る音、大きなものが水溜まりに落ちる音。
 そこで、待ちはざわめきを取り戻した。人が建物や駅から出てきて、大通り
はいつもの姿を取り戻す。

 美都     :「え……?」
 声      :「大丈夫ですか? 美都」
 美都     :「え……紫苑ちゃん……?」

 男が現れんとしていた路地から出てきたのは、美都を守ると誓った魂無き存
在、紫苑。

 紫苑     :「雨が強くなったから迎えにきましたが……ずぶぬれです
        :ね」
 美都     :「……そうだよ。紫苑ちゃん来るの遅いんだもんっ」
 紫苑     :「すみません」
 美都     :「いいよっ。来てくれたんだし。さ、買い物して帰ろう」
 紫苑     :「はい」

 そこまで言うと、紫苑は美都を抱き寄せるように近付き、そのまま姿が解け
て行く。数瞬で発水加工のジャケットと傘になり、美都を雨から防いだ。

 美都     :「……(一緒に歩いてくれないし……)」
 紫苑     :「美都、何か不満が有りますか?」
 美都     :「ん〜。べつにっ」(ぷいっ)

 どこから顔を背けているのか分からないが、とりあえず傘から目を離してみ
る。

 美都     :「さ、買い物買い物っ」
 紫苑     :「はい」

時系列
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 2001年6月ごろ

解説
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 雷に特別な想いのある美都を狙う男の影。雨の中、美都の逃亡が始まる。

参考資料
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紫苑ちゃん待ち。 (絵師:灰枝さん)
http://kataribe.com/HA/06/G/mitoameup.JPG

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 ってなわけで、相変わらず紫苑さんを借りてます。リューさん、お手数で
すがチェックよろしく。


 ではまた


    

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