[KATARIBE 21770] [WP01N] 終末の住人小説『某日点描』暫定板その二

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Date: Wed, 23 May 2001 02:40:13 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21770] [WP01N] 終末の住人小説『某日点描』暫定板その二 
To: kataribe-ml@trpg.net
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2001年05月23日:02時40分13秒
Sub:[WP01N]終末の住人小説『某日点描』暫定板その二:
From:E.R


ども、E.Rです。
というわけで、暫定板その二、です。

……うーん、これで、少しは怜さんの食欲落ちたのかしら(汗)

*******************************
『某日点描』 
============ 
登場人物
--------
 月島直人(つきしま・なおと): 
        : 喫茶・月影の店主にして終末の住人の組織『月影』のマス 
        :ター。物体操者の住人。 
 占い師(駕樋怜(がとう・れい) ): 
 
 青天目譲(なばため・ゆずる):感情を色として見るエンパシスト。
               :受験生と大学生を行き来する狩人。

本文
----

 感覚というものに信を置く場合。 
 時にして常識をふっとばす必要がある。 


(あー……良い天気だな) 
 ごく呑気な感想と共に、譲はとことこと歩いてゆく。 
 ……の、割に。歩いている場所は、いまいち季節感とは一致しない場所なの 
だが。 
 新宿。五月。五月晴れ。 
 土曜の午前遅い時刻の日光は、この人工物の狭間で次々と跳ねかえり続ける 
ようにも思える。 

(なんかすっかり初夏だなあ) 
 微かに目を細めて、譲は空を見上げる。 
 ひと、ひと、ひと。 
 情報の過飽和状態は、一時的に脳を現実逃避させる。 

 雑多なる色の翻然一体となった様。 

(……ん?) 
 もうすっかり馴染みになった道を曲がり、嘘のように人気の少ない通りを歩 
いていた譲は、足を止めた。 
(……?) 
  
 喫茶、月影。 
 あまり大きくも無い看板と、通りを隔てたあたりに、簡易な囲いがある。 
 そこに……座っている…… 
(何だろ) 

 男性。結構暑い筈なのに、黒っぽい布を頭から被っている。手元の水晶玉と 
の相互作用で、それなりにそれなりの雰囲気を醸し出している……のだろうと 
は思うのだが。 
(うーん……) 
 退屈。退屈。眠気。 
 カーキー色の三角がぽわぽわと力無く周りを廻っている。 
 三角形と手を取るように、やはりぽわぽわと浮いているのは。 
(あ、そっかもうすぐお昼か) 
 重低音に似た、濃い青の食欲の丸い玉。 
 譲は何となく苦笑する。 

 と。 
 とん、と、右肩を掠める寸前、避ける。 
 女の子。後ろからえらい勢いで歩いてきた。 
 えらく勢いの良い。えらく元気そうな。 
「あ、すみませーんっ」 
 ぱん、と弾けるようなオレンジの謝意。そしてひまわりの花弁のような期待。 
「いえ」 
 お義理のように、呟く。 
 既に、彼女の意識は前方に向いている。 
 かつかつ、と、細いヒールが早いスピードで前へと繰り出される。 
 色白の頬が、上気しているのが目についた。


 ……ふと…… 
(?!) 
 急に鮮やかさを増す、青。
(食欲?)
 目の前の、男性から放たれる青。くるくると回りだす球。
 譲は目をぱちくりさせる。 
  
 それは、まあ。 
 美人が目の前を通れば、大概の場合、男性からはある一定の反応があるし、 
それを言うなら女性だってまた別口の反応を示す。 
 しかしけれども。 
(腹減らしてる目の前を、自分が注文したのと同じ定食が通過したみたいな反 
応だよな) 
 えらく具体的なのは、先だって友人と一緒に昼飯を食べた際の風景だからで 
ある(念の為)。 

 かつかつかつ。 
 女の子は、一切気が付く風も無く、ただ前方にのみ意識を向ける。 
 青い球も、それに合わせて回転回数をすとんと減らす。 
 つまりは……まあ、諦めたのだろうけれど。
(うーむ) 

 首を捻りながら、それでも月影に向かう。 
 ドアを開けながら、駄目元で男性の心を『読む』。

『……美味そうだったのに』 
  
 美味そう、という言葉には確かに性的な意味も含まれる場合はあるが。 
(どーも、純粋食欲なんだよなあ……) 
 後ろ手に閉めながら、ちらっと振りかえる。 
(一応人間には見えるけど……人食いか吸血鬼かな?) 
 と、考えてしまうくらいには、前例を知る譲である。 


「いらっしゃい」 
「あ……こんにちは」 
 マスターの挨拶に、いつものように返事を……した、積りだったのだが。 
「どうしました?」 
「え、ああ」 
 やはり、月影にくると気が緩む自分を、多少苦い思いで再確認しつつ、それ 
でも譲は、この場合一番手っ取り早い方法で自分の疑問を晴らすことにした。 

「あの、月島さん」 
「はい?」 
「あの人は……最近、ここに居るんですか?」 
「あ……ええ。そうですね」 
 ちょっと怪訝な顔をしたが、視線で了解したらしく、マスターはすぐと頷い 
た。 
「最近は、よく来ますよ。ここにも」 
「ふうん?」 
 いつものことで、注文する前に出てきた珈琲を一つ頭を下げて受け取って。 
「あの人は、普通の人ですか?」 
「……」 

 途端にマスターの周りを、様々な色が躍りまわる。 
 納得。困惑。首肯。その他諸々。 
 すきっぷするように、くるくると。 
 つまり……いまいちどれも、深刻では無い。 

「……わかりました」 
 出来るだけ生真面目な顔をして珈琲を含む。 
「あのー」 
「見えたんで、わかりました」 
 憮然とした声に、苦笑交じりに応える。 
「読んだわけじゃありませんから」 

 とりあえず。関係者……かもしれないけど、危険では無いのだろう。 
 それだけ納得して、譲は珈琲をもう一口含んだ。 

「美味しいです」 
「……それは、どうも」 


***********************************

 いちおー。
 先程の変化部分に加えて、女の子の描写にも、
『色白の頬が、上気しているのが目についた。』
 を加えました。
 ちょっとはこー、美味しそうに(おいおいおいっ)


 とりあえず、暫定板その二です。
 あ、そいと、怜さんの人物紹介、お願いします(礼)


 であであ。



    

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