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Date: Wed, 25 Apr 2001 12:35:34 +0900 (JST)
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21616] [HA06P] 『初挑戦』修正版
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200104250335.MAA64166@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21616
2001年04月25日:12時35分34秒
Sub:[HA06P]『初挑戦』修正版:
From:ソード
こんにちは、ソードです。
ちょっと修正しての完成版になるかもです。
解説の部分に灰枝さんの絵へのリンクを張ってもらえると良いかなぁ……と
か。
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エピソード『初挑戦』
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登場人物
布施美都(ふせ・みと):
: 1999年5月より過去の記憶の、記録の無い娘。何者かに命を狙われ
:ているため、身を守るために修行中。
紫苑(しおん):
: 水島邸で作られたらしい金属生命体。普段は紫の猫か美形の男性、
:女性の姿を取る。
訓練
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うららかな午後。ファミレス「マリカ」のバイトを終え、グリーングラスに
帰ってきた美都だが……。
美都 :「ただいまー……あれ? 紫苑ちゃんはまたいないの
:か……」
世話になっている小滝ユラは今から出かけるらしい。一通りの注意を促され
てから出かけていった。
美都 :「ひとり……か。適当に夕飯作って、訓練しよっ」
手早くありあわせのもので夕食を作る。さすがに1年以上も経てば、慣れた
ものである。
しかし、一人で食べる夕飯は、あまり良いものではなかった。
一つ溜息を吐いて食器を片づけ、木刀を持って中庭に出る。いつもの剣術の
訓練だ。
誰に教わるでもなく、自分の中に眠っている技術を呼び覚ますような訓練。
無意識のときの動きを意識的に出来るように、意識的な動きを無意識に出来る
ように修練を重ねる。これも、既に半年ほど続けていることだった。
美都 :「そういえば……その頃から紫苑ちゃんがあまりそばにい
:なくなったのかも……」
そう、一人ごちる。美都が“出現”した頃から常に側にいた紫苑は、ある事
件を境に美都に付き合う時間を減らした。どこかにふらっといなくなり、しば
らくすると帰ってくる。
紫苑 :「にゃぁ」
そう、こんなふうに。
美都 :「あ、紫苑ちゃん、おかえりっ」
中庭に姿を見せた紫の猫に駆け寄る美都。その腕の中で、紫苑はぐったりと
動きを止めた。
美都 :「紫苑ちゃんっ?」
紫苑 :「心配ありません。584秒ほど全機能停止します……お
:休み、美都」
と、紫苑は目をつぶり、くたり……と力が抜けた。
実は、紫苑が機能停止をするのははじめてではない。激しいダメージを受け
ると、全体の修復のために外部への反応を一切しなくなることがある。今回も、
その状況だった。しかし、激しいダメージなど、猫の姿でふらふらしていては
受けるはずも無い……。
美都 :「……最近の成長と、関係あるのかな……」
美都は心配そうに見守る。最近の紫苑は、戦闘経験という意味で飛躍的に進
歩を研げていた。身体能力の成長ではなく、実践経験が豊富になっているのだ。
体を動かすようになった美都には、そういった事も少しは分かるようになっ
てきていた。
美都 :「さて、起きたら聞いてみようっと」
そのまま紫苑を抱いて部屋に戻り、寝かせておいて訓練後の整理体操を行う
美都であった。
決心
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紫苑 :「再起動終了。全機能オールグリーン。美都、おはようご
:ざいます」
美都 :「あ、紫苑ちゃん。だいじょうぶ?」
紫苑 :「はい」
美都 :「そう……いったい、どこでそんなに傷ついてきたの?」
紫苑 :「私なりの訓練……と話したと思いますが?」
美都 :「うん……それは分かっているけどさ……」
紫苑 :「大丈夫です。事実、効果は徐々に現れています」
美都 :「そうなんだよね……。ねえ、その訓練の内容って、教え
:てくれないの?」
紫苑 :「……」
美都 :「ここ数ヶ月、紫苑ちゃんの成長は私にも分かる。だった
:ら、私も同じ事をすればもっと二人で強くなれるんじゃな
:いかな?」
紫苑 :「……危険です。美都を守れるように私が成長すれば……」
美都 :「守られるだけじゃ嫌だって言った!」
紫苑 :「……」
美都 :「紫苑ちゃんが何してるか、すごく気になる。一度だけで
:も良いから、どんな事をしているか見てみたいの」
紫苑 :「危険です」
美都 :「その危険なことならなおさらだよっ。決めた、明日は紫
:苑ちゃんの訓練所まで行くからねっ」
紫苑 :「美都……」
美都 :「さて、もうねよーっと。明日早いもんね。おやすみ、紫
:苑ちゃんっ」
紫苑の言葉にも耳を貸さず、布団に潜る美都。こういう時の美都を紫苑では
止められないことは、紫苑も学習済みだった。
入窟
----
紫苑 :「出来うる限りのフル装備をしてください」
美都 :「うん。末夜さんのお守りも持ったし、ユラさんの薬も持っ
:た」
紫苑 :「では、行きましょう」
美都 :「うん」
二人(一人と一匹)は、そのまま吹利の市街を抜けて行く。ついたのは「水
島」と表札のある大き目の家。
紫苑 :「ここが、私の生まれた場所です」(扉を開ける)
美都 :「そうなんだ……そう言えば紫苑ちゃんの埋まれた場所と
:かって、知らなかったね」(後について入って行く)
紫苑 :「話はしてありますから、このまま地下に向かおうと思い
:ますが……少し休みますか?」
美都 :「ううん。大丈夫。でも、家の人に挨拶しなくて良いかなぁ」
紫苑 :「大丈夫でしょう……さあ、ここです」
そこにそびえる怪しげな扉。
二人は、その扉をゆっくりと開いた。
脱出
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美都 :「きゃあぁぁぁっっ!」
珍しく美都が悲鳴を上げている。あまり物事に動じないのだが、さすがに水
島邸の地下洞窟は美都の想像を凌駕していた。
紫苑 :「大丈夫ですか?」
美都 :「ううっ……こんな所抜けるなんて、人間じゃ無理だよぅ」
紫苑 :「……そう言えば、修行プログラムが私用ですね。人間用
:とは若干違うようだ」
美都 :「……紫苑ちゃん、今日私が来るって、伝えたって言った
:よね?」
紫苑 :「はい」
美都 :「私が人間だって事も伝えてる?」
紫苑 :「ああ、そう言えば特に触れませんでしたね」
美都 :「……そっかぁ……(はぁ)」
紫苑 :「確かに、これでは訓練にすらなりませんね。戻って再度
:挑戦しましょう」
美都 :「うん、そうだね……って!」(慌てて地面に転がる)
美都がついさっきまでいた場所に溶岩“らしき”ものが振ってくる。地面に
当たった瞬間に広がりもせずに消えるあたり、溶岩そのものではなさそうだが、
側にいるだけで熱が伝わってくる。
紫苑 :「目下、私の訓練は耐熱と耐衝撃でしたので……」
SE :ドンッ
美都 :「くっ……」
突然の風。もはや空気の固まりでしかない。美都は持ってきた木刀で若干散
らし、残りを後ろに飛んでしのぐ。着地が上手く行ったのは訓練の成果だろう。
紫苑は慣れたもので、形状をさまざまに変化させ、障害をかわしている。こ
こはまだまだ初級のエリア。訓練を続けていた紫苑ならば抜けることは難しく
ない。
美都 :「何とか戻るよ……炎と風のタイミングは分かってきたか
:ら、走り抜ける」
紫苑 :「はい。後少しで出口ですから」
美都 :「うん……いくよっ!」
溶岩の落下、火柱の吹き上げを間隙を縫い、美都は走り出す。向かってくる
風の固まりは木刀で弾き飛ばす。意識はしていないが、末夜にもらった護符の
効力が木刀を介して発現しているのだ。
紫苑はサポートするかのように後に従う。後ろからの障害を若干ガードする。
美都 :「ここを曲がれば……あれっ?」
紫苑 :「溶岩が固まっているようですね。出口が閉ざされている」
紫苑が人型に戻り、腕をドリル状に変形させて岩に突き込む。削れる音がす
るが穴をうがつことが出来ない。
紫苑 :「瞬時の破壊は不可能……時間がかかります」
美都 :「そう何分もこの場所で耐えられないよ」
紫苑 :「この岩を上回る強度は確保できるのですが……運動エネ
:ルギーが足りません」
美都 :「強度が上って事は、刃になれば“斬れる”んだよね?」
紫苑 :「可能です」
美都 :「紫苑ちゃん、剣に!」
紫苑 :「了解」
紫苑が伸ばした美都の手に触れ、瞬時に融けて美都にまとわりついてゆく。
木刀を覆うようにそれよりも長い刃を構成、硬質化する。それ以外の腕、肩、
胸回りにも展開し、防御と筋力のサポート行う。
紫苑 :「筋組織と同化させます。良いですね?」
美都 :「うう……あれ苦手なのにぃ……でも仕方ないよね。いい
:よっ」
美都の腕や胸を覆っている部分が若干震え、密着度を増す。筋肉や神経パル
スの信号を読み取り、強化、反応を瞬時にするための接合である。
美都には、触れた部分を撫でられ、染み込むような感触がある。痛みはない
のだが、慣れない感覚を味わうことは間違い無い。
美都 :「く……ふぅっ……」
紫苑 :『リンク完了。状態オールグリーン。美都、大丈夫ですか?』
美都 :「はふ……ふぅ……うん、平気」(剣を一振りする)
接合の感触も収まり、剣を一振り。その一振りで紫苑は美都の剣術に最適の
形状、重量バランスの剣に形状を微調整させる。長さ223cmに及ぶ長刀、
「布津御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)」と全く同じ重量、形状である。
美都 :「さて……と」(ぶんっ)
大岩をにらみつつ、背後に一閃。迫ってくる風の固まりや溶岩を押しとどめ
る。
紫苑 :『物体は破壊に適したポイントがあります。現在スキャン
:中ですが……』
美都 :「大丈夫。分かるよ……」
自分の背丈よりも大きい刀を肩に担ぐ。重さを利用しての振り下ろし。しか
し、その威力と共に、今回は数ミリ以下の正確さが要求される。
美都 :「んー……髪邪魔だな……」
集中を解き、風で舞い上がる髪をまとめて根元に刃を立てる。少しの集中の
妨げが失敗に結びつかないとも限らない。
紫苑 :『斬る事も無いでしょう。結んだおいたらどうです? 普
:通のリボンよりは重いので風で煽られるのを防げます』
と、刃が髪に振れた瞬間に変形、分離し、リボンのようなものが髪の先の方
を束ね、煽られるのを防ぐ。
紫苑は体の一部だけを切り離し、別の形態を取る事も出来る。リボンの方も
意識的に動けるようだが、知性度は低めとなるらしい。普段は一定のプログラムにしたがって動くだけだ。今回の場合は髪のまとめと拘束、そして適度な重量の維持である。
美都 :「あ、これ良いね。ありがと。じゃあ……いくよっ」
再び集中をはじめる美都。髪はなびかず、刃の切先の揺れが止まり意識が剣
先にまで伝わる。
美都 :「たあああぁぁっ」(ぶんっ)
刀が地面まで振り下ろされる。溶岩とぶつかった金属音などは響かなかった。
SE :ズ……ズズンッ
大岩に亀裂が入り、ゆっくりと左右に割れるようにずれて行く。奥からは出
口の扉が涼しそうにたたずんでいた。
紫苑 :『ダンジョンからの脱出完了。危険レベルも最低値です』
美都 :「やったね……へへ」
そういって、美都は少し疲れたような笑顔を浮かべたのだった。
解説
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紫苑とともに修行をする事を選んだ美都。水島地下迷宮に初挑戦である。
参考
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試作『剣のA 布施美都』。
http://kataribe.com/HA/06/G/swordAup.JPG
時系列
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2001年2月ごろ
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