[KATARIBE 21474] [HA06N] 『桜雪迷路』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 01 Apr 2001 21:18:18 +0900
From: 不観樹露生 <fukanju@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 21474] [HA06N] 『桜雪迷路』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20010401211305.18A8.FUKANJU@trpg.net>
X-Mail-Count: 21474

ども、不観樹露生@今日から二桁(予定) です。はい。

 久々に、狭淵美樹の日常を一本。

************************************************************

『桜雪迷路』
============

 へっぷちっ
 一つ。くしゃみをした。
「エイプリルフールにはまだ数日ある筈なんですがねぇ」
 そう呟いてみる。
 サーバーマシンの後ろの窓を叩いているのは霰。
 ドアが開く音。閉じる音。
「さっむ〜〜〜っ。あーストーブがあったかい〜〜っ」
 助手の先生。少々にぎやかに帰ってきたらしく。
「温かいお茶でも入れましょうか?」
 技官の先生が声をかけている。
「すいません、おねがいします〜っ」
 こぽこぽこぽ。お茶を入れている気配。
「狭淵君、お茶入りましたよー」
 声がかかる。
「はい、今行きますー」
 取りあえず返事をして。作業中のタスクを閉じる。
 奥のサーバ置き場からお茶部屋に自分のコップを持って。
「あーあ。これじゃ、桜散っちゃうよねぇ」
 そんな話題をしているところに入る。
「お花見が近いのにねぇ」
 研究室の花見は、来週。
「三寒四温って言ってもこう寒くなったり暖かくなったりじゃ、桜
もやってられないだろうねぇ」
 桜迷路。そういえばそんな言葉があったような気もする。
 桜と雪とどちらも降り注ぐもの。その中で立ち竦んで。
「でもねー。桜、こんな寒くても毎日少しずつ開いているんですよ」
 技官の先生が。ほこりと幸せそうにそういって笑む。
 4月。大学に入ってからちょうど丸九年。
「お花見、狭淵君はご出席?」
 今日のお茶請けは桜餅。
「あ、ちょっとまだ判らないんです」
 予定が決まらないままだから。来週の。来月の。来年度の。
「あれ、そーなんだ?」
「えぇ、ちょっと」
 窓の外の霰が、一つ強くなって。
「決まったら連絡します」
 そう応えて。わたしは、桜餅の最後のひとかけらとお茶を呑みこ
んだ。

                           (終)
************************************************************

 てな感じで。ではでは。
 まぁ、人生色々ありますの。

…………。…………。…………。…………。…………。…………。
不観樹露生(ふかんじゅ・ろせい)    4月の標語
fukanju@trpg.net          モノクロームであろうと
UIN:21125410              桜色であろうと。
http://www.trpg.net/user/fukanju/
…………。…………。…………。…………。…………。…………。

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage