[KATARIBE 21471] [HA06N] 染木先生とちび染木と風邪

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Date: Sun, 1 Apr 2001 20:04:48 +0900 (JST)
From: いろは  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21471] [HA06N] 染木先生とちび染木と風邪 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200104011104.UAA30176@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21471

2001年04月01日:20時04分47秒
Sub:[HA06N]染木先生とちび染木と風邪:
From:いろは


いろは です

染木先生が風邪ひきました。
さてはて、どうなることやら
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染木先生とちび染木と風邪
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日記より抜粋
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3月下旬のこと

風邪をひいたので学校を休む。

珍しいことだ。

一部の人間は幽霊と言うものは風邪などひかないと信じているようだが
それは違う。

たしかに滅多なことではならないのだが幽霊も風邪をひく。

ただし、ウィルスや細菌の引き起こす風邪でないことは確かだろう。
(ウィルスの幽霊とか細菌の幽霊などというものがいるのならそれが原
因で風邪をひくかもしれないが私は聞いたことはない)

原因は精神的疲労だと私は考えている。特に私の場合は生きた人間とふ
れあうことも多く、私自身の精神的成長を強要される。一応、緩衝用に
分離体を生成したりするのだが、それでも足りないときに風邪をひくよ
うだ。

吹利学校高等部に赴任してからの疲労は今までとはかけ離れているよう
に感じる。(睡眠波を発するある生徒が原因と考察するが……何か対策
を練る必要があるかもしれない)

なんにせよ、症状は”体がだるい”、”頭がぼーっとする”などと言っ
た生前での風邪の症状に似ているのでこれが「幽霊の風邪」なのだろう。

そろそろ、実体化もつらくなってきたので筆を納めることにする。


ちび染木のこと
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ふと気づくと分離していた。

何だかぼーっとする。

おっきいねぇちゃんは半透明のまま部屋の中をふらふら浮かんでいる。
珍しいことに袴姿だ。

ぼーーー……

春の温かい日射しがカーテンの隙間から覗いている。

外に出たいな……

そう思ったので外に出た。

ふらふらと空を遊泳する。

気持ちいい……

ぼーーーー…………


再び染木先生のこと
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ぴんぽーん……

ベルが鳴る。

だれだろう?

少し感知領域を扉の外まで広げる。

……どうやら、うちのクラスの生徒のようだ。見舞いに来てくれたのだ
ろう。片手に桃やバナナなど果物の入ったビニール袋をさげている。

勧誘やセールスなら無視するところだが生徒なら出なければならない。
それが私の本能であり存在意義だから……

実体化しなければいけない……精神集中する……

おっといけない、いつの間にか袴姿になっている。

これは死んだ瞬間の姿だと記憶している。どうにも集中力が鈍るとこの
姿になってしまうようだ。

病人だからパジャマがいいだろう……柄は何にしようか……

牛柄パジャマ……冗談としては面白いけど……

ガウンだけってのもかっこいいかもしれないが次の日の生徒達の話題が
すごいものになりそうだ。

シンプルに絹のYシャツ型にズボンというのもスマートでよさそう。

ぴんぽーん……

再びチャイムが鳴る。

あんまり待たせてはいけない。

絹パジャマにしよう。

精神を集中する……女袴が霧のように空気にとけ込むと次に私の体を絹
の感触が包む。

着替え終了

床に足をつける。

「はーい……ちょっとまってねー」
扉に向かってそう言いながら開ける。

「あ……先生、具合はどうですか?」

扉の前では女生徒が2人、委員長と彼女とその友達の波田野さんだ。

「まあ、なんとかね」
かるく微笑む。

「でも顔は赤いし、目は潤んだようにぼーっとしているし……やっぱり
つらそうですよ。無理しないでくださいね」

「うーん、せんせー美人だけど、今日はなんかエッチっぽくってかわい
い!!んで、パジャマがこれまたかっこいい!!」

波田野さんはなぜか涙流さんばかりの勢いで目をキラキラさせて私を見
ている。そう言えば、彼女はかわいいものに目がなかった。

「ありがと……部屋に上がってく?」

「いえ……今日はこれ持ってきただけですから……あ、これはクラスみ
んなからのカンパで買ったんです」
委員長は果物が入った袋を差し出す。

「そうなの?うれしいわね。なら是非とも上がって欲しいのだけどね……」

「いーのいーの、いつも美人で今日は特に美人なせんせーと一緒にいた
ら嫉妬で気が狂いそうだから」
波田野さんが冗談めかして笑う。

彼女はいい加減な振りをしているが実はとても気が利く。言い古された
言い方だが彼女はとても優しいのだ。もちろん、本人に言ったら恥ずか
しがって「違う」というだろうが。

今日は彼女の好意に甘えることにしよう。正直な話、風邪の時に客の相
手をするというのはつらい。

「じゃ、悪いわね。これはありがたくいただくわ」

果物を受け取る。
実際のところ私は物を食べなくても良いのだが好意は受け取るものだ。

「それじゃ、先生はやく元気になってね」

その言葉にうなずき。私は彼女たちを見送った。

果物をテーブルの上に置いて集中を解く。

パジャマがほどけ再び女袴になる。

目をつぶるとすぐに眠りに落ちた。


再びちび染木のこと
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しばらくふらふらしていたら見知ったおねえさんがいた。

名前は優麻と言ったか……やさしそうな人だ。

他にも由摩とか勇那とか言った面々がいる。

優麻と勇那はなんとなく波長が合うので幽霊の人だろう。

優麻と由摩はなんか同じ人みたいだ。

実体化しておねぇさんの家に上がる。

家に入ったは良いものの頭がぼーっとするのでぼーーっとすることにす
る。

ぼーーっとしているとおねえさんが頭をなでてくれた。

なんかきついので体が支えられず倒れる。

「だ、大丈夫っ!?」
慌てた優麻が体を揺さぶる。

「あつぅっ……ね、熱があるの!?」

「熱がある?どれ……って、あじゃぁぁあぁ……目玉焼きが出来るくら
い熱いぞ!?」
勇那が叫んでいる。

「わわっ、ど、どうしようっ?」
優麻が慌てふためいている。

「冷やすのはどうかな」
勇那が首をひねるながら言うと、それを待っていたかのように由摩がバ
ケツで水をかけてくれた。

じゅぅぅぅ…………

水が一気に蒸発する。あたりはまるでサウナだ。

「冷凍庫に入れた方がいいかな……」
由摩が頬をかく。

冷蔵庫……食べ物……なにか食べたい……でも動くのツライ……

「液体窒素、液体窒素っと……」
今度は液体窒素をかけるつもりらしい。由摩は液体窒素を探している。

死なないから良いか……

その脇では優麻と勇那がこの原因について考察しているようだがさっぱ
り分からないようだ。

ばしゃ!!

由摩に液体窒素をぶっかけられる。

うーん、ここちいいー

なんかうごけそー……

食い物求めて冷蔵庫へいどう……

ぼんっ!

ほへ?どうやら、中途半端に実体化が解けたらしい。人魂になってしま
った。特に支障はないので冷蔵庫へ移動……

「変化したっ」と勇那が驚き

「わーーーんっ、死んじゃった〜〜」と優麻がびーびー泣いているよう
だが不慮の事故だから”ふかこーりょく”としておこう。

勇那が優麻を慰め、由摩が再び液体窒素をとってきているうちに冷蔵庫
へ……

半透明化しているので冷蔵庫の扉をすり抜けて食い物の園へ……

ハムやらチーズやら牛乳やらいろいろある。みんな食べよう。

むしゃむしゃ……

なにやら、ばちばちっ!!じゅじゅぅぅぅ!!ぶぅぅぅん!!とかいう
音を冷蔵庫が発しているが無視だ。

程なくして、冷蔵庫の扉が開けられたが食べ物はあらかた食べた。
満足である。

なんとなく気が休まった。

いつもの消滅感が体を包む。

あー、すっきりした


三度染木先生のこと
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「んー……ん、体の調子が元に戻ったようね」

背伸びをする。

風邪あけというのは体中の膿が抜けたように気分がいいものだ。

今日はいろいろあった。

日記を追記しよう。


再び日記より抜粋
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追記

生徒が二人ほどお見舞いに来てくれた。

クラス全員のカンパでお見舞いを買って来てくれたうれしい限りである。

教師冥利に尽きるというものだ。

中略

風邪の間に私の分離体がまた余所様に迷惑をかけたようだ。

たぶん、あの冷蔵庫は壊れてしまっただろう。機を見てポストに冷蔵庫
代を入れておこう。

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おそるべき、幽霊の病気と言ったところか

それではまた


    

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