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Date: Sat, 31 Mar 2001 07:10:20 +0900
From: 夜月 天星 <nmhs@kun.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21464] [WP01P] 血と月と太陽と
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
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とりあえず駕樋怜を出さなくてはと思い書きました。
皆さん、これから怜くんをよろしくです(礼)
ちなみに子供に弱いからと言って、ジャックフロスと人形で
ドついたりしないで下さい(謎)
それでは、拙筆な文章ですいませんが、お目汚しお願いします。
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エピソード『血と月と太陽と』
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登場人物
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駕樋 怜(がとう・れい) : 若き吸血鬼。警察に追われる身。住人。
川島 竜也(かわしま・りゅうや) : 月島が保護者。店の手伝いをする。
月島 直人(つきしま・なおと) : 喫茶店「月影」店長。物体操作能力者。
血
--
夜の闇を駆ける影。銀髪がサラサラと光り、これだけが彼の存在を闇に示し
ている。
怜 :「……」
ただ黙し、ふと足を止める。赤い双眸は月明かりを浴びて更に妖しく輝いて
いる。
怜 :「……」
彼の眼が一人の若い女性捕らえた。女性は二十歳前後だろうか。少し顔に丸
みがあり、童顔だ。もしかしたら、もっと若いのかもしれない。
怜 :「……」
無言で腰に下げていた水筒を口元に引き寄せる。彼は妖艶な笑みを浮かべな
がら、その水筒の口に唇をつけた。真っ赤な液体が彼の喉を潤す。
怜 :「はぁっ……」
小さな掛け声と共に彼の"場"が周囲に展開される。"住人"の間では"結界"と
呼ばれるものだが、彼はまだそれを知らない。ただ便利の良い"場"と呼んでい
る。
怜 :「さぁ……おいで」
怜は手招きをする。すると結界の内部に先程の女性が現れた。彼が召還した
のだ。すぐさま、彼は紅き両眼で女性を見つめる。紅く甘い光に、通常の人間
が耐えられるはずはない。一瞬でこの若い女性は怜に魅了されてしまう。
怜 :「……いい子だ」
彼はゆっくり女性に近づくと、首筋に牙を立てようとする。
怜 :「少しの我慢だ……」
怜はゆっくり彼女の首筋に牙を立てる。つーっと紅い筋が女性の首から垂れ
る。もったいないと言うように彼は最後にそれを舐め取ると、彼は女性の手の
甲に口付けした。……何時の間にか、水筒が血液で満たされている。
怜 :「ありがとう、レディ……」
彼はポーッと頬を上気させた彼女を見ると精神を集中する。
怜 :「……はっ」
彼の短い掛け声と共に彼の"場"は解除された。女性を近くの公園のベンチに
つかせる。
怜 :「では、また」
女性に軽く会釈して、彼は公園を出ていこうとした。
だが……。
月
--
直人 :「貴方……"結界"を使えるんですね?」
怜は首をかしげ、なんのことだと言ったポーズを取る。銀髪が風になびく。
直人 :「貴方が先程使われた……もののことですよ」
男は、どうやら先程の事を見ていたらしい。あの"行為"を人に見られたのは
初めてだ。怜は内心、動揺していた。
怜 :「"場"のことか?」
怜はゆっくりと口を開いた。動揺を隠さなくてはならない。
直人 :「貴方は"場"と呼んでいるのですか」
男は苦笑している。貴方は……と言うことは他にもこの能力を使える者がい
ると言うことか。
直人 :「えっと……とにかく立ち話もなんですし……お話を聞い
:てもらえませんか」
怜は頷いた。この男は隙も無いが、敵意も全く無かったからだ。二人は公園
に引き返し、同じベンチの端と端に腰掛けた。
直人 :「えっと……とりあえず、これを」
直人は上着から名詞を抜き取ると、怜に手渡した。
怜 :「……喫茶店の店主が俺に何のようだ?」
名詞を読み終えた怜の開口一番の台詞だった。
直人 :「まぁ、色々ありまして」
苦笑しながら、怜の質問に応える直人。
直人 :「格好良く言うなればそれは表の顔、本当の顔は終末の住
:人をまとめる役目を持った者。それが私です」
直人は真顔に戻っていく。
怜 :「終末の……住人……?」
怜にとっては初めて聞く言葉だ。聞き返さずにはいられない。
直人 :「はい、貴方や私のように結界が使え、時間のループを体
:験、または感じている者のことです。勝手に私達がそう呼
:んでいるのですがね」
怜 :「……お前は……この現象について、この時が巡ると言う
:ことについて知っているのか!? 教えてくれ! これは
:何なんだ!」
怜は久しぶりに感情を表に出している。警察に追われ、精神が既に極限状態
にあった。叔父を殺した罪は償った。だが、警察に追われる……。
直人 :「落ち付いてください……と言うことはあなたは2度目の
:1999年を体験しているのですね?」
怜は呼吸を整え、平常心を保とうとする。だが、まだ心臓の鼓動は速く、大
きい。
怜 :「……すまない。……これで2度目の1999年を俺は体験して
:いる」
直人は目を細めた。
直人 :「そうですか……私もです。私もこれで2度目です」
怜 :「……」
月が流れてきた雲に隠れ、直人の顔が闇に沈む。
怜 :「……この現象はなぜ起こっているんだ?」
直人 :「災厄……です」
怜 :「災厄?」
直人 :「そう……それによってこの時間のループは起こっている
:と思います。……まぁ、私も良くは分かってないのですが
:ね」
直人の左眼が光っている。銀色に……月光の色に。
怜 :「その災厄は……止めれるのか?」
直人 :「私は結界を張れ、災厄と立ち向かえる能力者を総称し、
:終末の住人、略して住人と呼んでいます」
直人はその質問に応えず、それだけ言った。
沈黙が流れる。
直人 :「えっと……本題に入りたいのですが……」
怜 :「お前の支配化に入れというのか」
怜は鋭く冷たく言い放った。
直人 :「支配化だなんて……そんな。協力して欲しいのです」
怜は空を見上げる。雲が月を覆い、闇が広がっている。
怜 :「協力か……」
直人 :「今の世界は異常です。これを普通に戻さなくては……」
怜 :「なぜ……なぜ、そう思う。お前には別に、同じ時が巡
:ろうと関係ないではないか」
怜は呟いた。
直人 :「そんなことはないですよ……」
直人は呟き、そして立ち上がった。
月が雲から逃れ、彼らを優しく照らす。
直人 :「私は、その名刺の裏の地図にある喫茶店のマスターで
:す……協力してくださるなら、そこに来て下さい。せめ
:て……連絡だけでもつくようにしていただけると嬉しい
:です。それでは、失礼……」
直人は公園を立ち去った。
怜はベンチに横たわる。彼の脳裏に、父が母を殺害する場面、自分が叔父を
殺害する場面、獄中での場面が次々に浮かび上がり、そして消えていった。
怜 :「……」
月明かりは、彼をいつまでも優しく見守り続けた。
太陽
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直人の店のシャッターが開く。
直人 :「あの人は……来てくれるだろうか……」
誰にともなく呟く。横にいた竜也はそれを目ざとく聞き返す。
竜也 :「あの人?」
この年頃の子はなんでも聞きたがるからなぁと直人は思い、笑った。
直人 :「あの人って言うのはね……外人さんかな……銀髪で紅
:い瞳で、長身で……私よりかっこいい人だよ」
一般的に見て、直人はもてない方ではないだろう。むしろもてるほうだ。
竜也 :「ふーん……」
直人 :「今日はその人を待ってるんだけど……そう簡単にはき
:そうにないな……」
朝日に目を細めると、直人は喫茶店の中に戻ろうとする。
竜也 :「わぁ……」
その時、竜也が歓声をあげた。どうせ朝日は綺麗だなぁとかまた言うのであ
ろう。直人は振り向きもしない。
竜也 :「ねぇ……銀髪の人がいるよ」
銀髪……!? 直人は驚いて振り向いた。
そこには長身の外人が立っている。
怜 :「俺は……」
怜はそれだけ言うと黙った。
それを見て、直人は優しく微笑んだ。月のように。
直人 :「分かっています。珈琲を飲みにきたのでしょう?」
怜は、にやりと笑う。
怜 :「ああ……」
直人 :「勿論、私の奢りですよ。開店にはまだ早いのですが、
:今日は特別です。どうぞ好きなところに座って下さい」
怜はカウンターに向かう。
竜也 :「おはようございます、銀髪さん!」
ひどくでかい声だったが、何かが吹っ切れそうな、いい声だった。
怜 :「おはよう、ボーイ。だが、俺の名前は怜だ。駕樋怜。
:ちゃんと名前で呼んでくれ」
直人 :「すみません、駕樋さん」
怜 :「怜と呼んでくれ、直人。……奢ってくれる仲間だろ?」
直人 :「そうですね、では。怜と呼ぶことにしましょう」
直人は珈琲豆を丹念に引き始めた。香ばしい香りが辺りを包む。
竜也 :「僕は竜也って名前があるよ! ボーイじゃないよ!」
怜 :「それはすまなかった、竜也」
竜也 :「いいよ、怜兄ちゃん。もう忘れるから」
怜はぷっと吹き出した。久しぶりの心からの笑いだった。
怜 :「それより……この子も仲間か?」
この子から感じる力。自分と同じ力。怜はそう確信していた。
直人 :「ははっ、やっぱり分かってしまいましたか。ええ、そう
:ですよ。竜也も……仲間です」
そう言って、直人はにっこり竜也に微笑んだ。怜はカウンターの前の一席に
座る。
竜也 :「え、なになに?」
竜也の問いに、二人は顔を見合わせ、笑うだけで返答しなかった。
直人 :「どうぞ」
直人は珈琲を怜の前に置いた。怜はそれを無言で飲む。
香りは口一杯に広がり、鼻腔を抜け、久しぶりに安らかな気分にさせてくれ
た。
怜 :「美味いな……」
直人 :「喜んで貰えて嬉しいですよ」
直人もカウンターの自分用の椅子に腰掛ける。
怜 :「定期的にここにくる……連絡もいれる」
怜は直人を見らずに、珈琲に目線を落としている。
直人 :「協力、感謝します。私達も協力しますよ」
直人は、そんな怜を見て、少し微笑んだ。
竜也はなんとなく分かるが、なんとなく分からないので、店にあるおみくじ
を引いて遊んでいる。
直人 :「あ、そうです。対の存在を怜は知っていますか?」
怜 :「対?」
また知らない単語だ。怜は直人に会ってから知らない単語ばかり出てきて頭
をひねってばかりで、正直、少し首が痛くなってきていた。
直人 :「ええ……対自体は私達住人の敵と言うわけではないので
:すが……。どうやら私達住人一人につき、一人だけ、その
:住人と同じ能力、または、それと全く正反対の能力、鍵を
:持つ者がいるようなのです。……そして自分の対、即ち、
:住人に対してなぜか殺意を抱いているのです……」
怜 :「理由もなく?」
直人 :「ええ……」
怜 :「それは災厄が俺たちを殺すために作ったのか?」
直人 :「それはわかりません……そうかもしれませんが」
怜 :「……あと、鍵とはなんだ?」
直人 :「私はこれです」
直人は自分の左眼を指し、鍵を発動させる。目が銀色に光る。
直人 :「自分の能力を高める……まぁ、一種の増幅器ですよ」
怜 :「なるほど、俺のこれか……」
怜は右手を出し、鍵を発動させる。右腕に黒い触手が蠢く。
直人 :「多分……そうでしょう」
怜は空になった珈琲カップをソーサーの上に静かにのせた。
怜 :「話しが戻るが、俺にも……対はいるのか」
直人 :「ええ……恐らく。そして他にも敵……のような存在が
:います」
怜 :「まだいるのか……」
直人 :「堕とし子と言う災厄からの刺客、そして結界には入れ
:ませんがそれ以外では強力な力を持つ異能者など……」
怜 :「しかしその全てを敵とは言えない……か」
直人 :「ええ……しかし今の所、私達が戦った堕とし子は形状
:や能力は様々ですが、全て私達の敵……として出現して
:います」
怜 :「そいつらを倒すことで災厄は消えるのか?」
直人 :「分かりません……私のこの知識は御大と言う方からの
:受け売りですから……」
怜 :「御大……ある意味、一番謎のようだな」
怜はずばり指摘した。
直人 :「ええ……そうかもしれませんね……。ですが、今こう
:して『月影』があるのはその方の融資のおかげですし」
怜 :「と言うことはそいつが俺達、住人を集めているのか」
直人 :「そうなります」
怜 :「……まぁ、俺にとってはありがたい話しだ。これだけ
:の情報と……」
彼はそこで言葉を区切った。
怜 :「美味い珈琲を奢ってくれたのだからな……そいつは」
直人 :「……どうも」
直人は珈琲カップを洗いながら答えた。
怜は音も無く立ち上がると、音も無く『月影』を去った。竜也がくじ引きを
止める頃には、既に店内には誰も居なかった。
竜也 :「あれ? 怜兄ちゃんは?」
直人 :「さぁ……どうしたんだろう」
直人は竜也を見つめながら、珈琲カップについた水を布でふき取る。
竜也 :「また来てくれるかな?」
直人 :「きてくれるさ」
そう即答する直人の顔は太陽のように輝いていた。
時系列と舞台
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1999(2nd)7月の中頃の出来事。舞台は東京のどこかの公園と『月影』。
解説
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とりあえず駕樋怜の登場シーンと言うお話です。そんなに複雑な内容ではな
いと思うので、そんなに解説は要らないと思われます。後書きとしては、実は
竜也は使いにくい子と言う印象を受けました。どうやって大人らしい口調にす
るか、です。かと言って、5、6歳の男の子を大人にする訳にもいきません。そ
れで悩んだ挙句、結局、今の形におさまっています。とりあえずまともな事は
言う男の子にしているつもりです(苦笑) ついでに言うと、直人もなんか良
くわからないです(笑) 優と絡んでいるときはスケベ親父ーな奴なのに、日
向と戦うときはめちゃくちゃかっこいい。なんでしょうね、このギャップは。
怜はこれから『月影』に協力し、堕とし子と戦っていきます。彼は、自分を追
う者を助ける側についたのでした。
起きた変化
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駕樋怜が結界や災厄について知り『月影』に加わる。
駕樋怜が堕とし子を退治していくことを決意。
追加される設定
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駕樋怜が結界や災厄についての知識を得る。
『月影』に新しいメンバーが加わる。
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EPって、こんなのでいいんですか?(爆)
なんかダメ小説のようになってしまっている(うぅ)
精進します、それでは。
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NMHSこと、夜月天星
nmhs@kun.ne.jp