[KATARIBE 21115] [ HA06N ]小説『心』第一章(完成版)

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Date: Sat, 16 Dec 2000 21:07:49 +0900
From: "球形弐型" <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 21115] [ HA06N ]小説『心』第一章(完成版)
To: "ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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ども、球形弐型です。

昔書いた小説を、久々に掘り起こしました(笑)
そーいえば、完成版を流していなかったので、流します。


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[HA06N]小説『心』第一章
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安らぎの心 『皇女を辞める時…』
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 安らぎの心……
 私に、かつてそんなものがあっただろうか……
 私は、孤独だった……
 私には何もなかった……

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伊佐見家の朝
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 それは、ある朝のことだ。
 穏やかな朝日が、伊佐見家の庭を包み込む。
 そして、私の部屋の窓からも日差しが降り注いだ。
 ピッピッ…ピッピッ…

「ん……ん〜……」

 時刻は、午前六時。
 最近、私はこの時刻に目を覚ます。
 それと言うのも、この頃始めた日課があるからだった。
 ある日、お兄ちゃんは私にこう言った…

『優麻、毎日、家に閉じこもっていては腐っちゃうぞ。』

 私は、普段、特にすることもないので、部屋に閉じこもっては「あの人」へ
の思いを募らせていた。
 そんな私を見たお兄ちゃんが、気を利かせて言った言葉だ。

『んー……そうだっ。毎朝、早く起きてウォーキングでもしたらどうだ?あれ
なら、体に負担も少ないし、運動不足の優麻にはもってこいだ。』

 ウォーキングと言っても、ただの散歩……しかし、体を動かすこととしては
もってこいかもしれない。
 私は、特に断る理由も見つからず、お兄ちゃんの言葉に従ってみた。

 吹利の朝―――
 まだ、紅葉が山いっぱいを艶やかにする季節。
 もう寒くなってくる季節でもある。
 今日は晴れ―――
 寒さが、空気を透き通らせ清々しかった。
 私は、いつもの住宅地を一周しようと表に出る。丁度、住宅地を一周するの
に30分ほどかかるので、7時の朝食には間に合うように帰れるのだ。
 住宅地を歩いていると、ふと、何処からか、甘い香りがした。

「金木犀の花の香り……何処からだろう……」

 それは、とある家の庭先に咲いていた。
 私は、その甘い香りを少し楽しむと、また歩き出した。
 暫く歩くと、住宅地の公園に辿りつく。静かな朝には、大抵人気はないもの
だ。
 公園に入ると、やはり人気は無かった。
 私は、人気ない公園のベンチに座って、空を仰いだ。

 空は蒼い……
 何処までも蒼い……
 ふと、吸い込まれていきそうなくらいの蒼さ…

 そんな空を見上げていると、自分がドンドン小さく見えてくる。
 私は、こんなにも小さいんだ。そんな感じを体に受けながら、頃合を見て、
公園を後にする。
 こんな感じて、私は、毎日、ウォーキングと称する散歩を楽しむ。
 住宅地を一周した頃には、もう七時近かった。

「今日は……少し時間がかかっちゃったなぁ……」

 私は、そう呟くと、家の門をくぐった。
 家に入ると、外とは違い、とっても暖かかった。寒さで、冷たくなった耳が
急に熱くなる。

「あっ…お嬢様、お帰りなさいまし」

 玄関のところで、奈々が迎えてくれた。

「丁度、ご朝食の支度が出来たところですよ」

 屈託のない笑顔で、私に言う……
 私は、ちょっと凍えた体を少しずつ暖めながら、朝食を取る為に、居間へと
足を運んだ。

「あ、お姉ちゃん、お帰りっ♪」

 居間へ入ると、一足先に由摩が、テーブルを前に座っていた。

「お姉ちゃん、今日はどうだった?」
「今日は……空が……蒼かったよ」
「そう…よかったね♪」

 他愛の無い話題での会話……これもコミニュケーションの一つだと、お兄ち
ゃんは言ってた。
 私は、なるべく家族とコミニュケーションは取れとお兄ちゃんに言われてい
た。
 口下手な私は、人と喋るのが苦手……
 しかし、意思を表示しなければ人は理解しあえないのだ。
 だから、少しでも会話がすんなり出来る様にと、家族との会話は出来る限り
行うように努力している。
 それでも、私から話を切り出すのは、まだ苦手だった。
 暫くして、お父さんとお兄ちゃんが居間に顔を出した。

「おはようっ♪」
「ああ、由摩おはよう」

 由摩がお父さんに挨拶を交わす……私も交わそうとするが……

「おはよう優麻。さて、飯だ、飯。」

 タイミングを逸してしまった……仕方なく、私は、小声で「おはよう」と会
釈をしただけだった。
 このところ、家族四人できちんと朝食を取ることが多い。そして、今日も朝
食は、和食……最近は、ずっと和食が多い。
 それと言うのも、お父さんが帰国してから言った言葉が……

『日本に居るときくらい、和食が食べたいのぉ』

 とのこと……。
 始め、由摩は「パンの方がいいよぉ…」と駄々をこねたらしいが、最近では
和食でも悪くないと思っているようだった。
 頂きます、との挨拶とともに朝食が始まる。私も、横目でちらっと周りを見
つつも手を合わせ挨拶を交わした。

 朝食も終わり、そろそろ由摩も登校の時間……お父さんも、今日は早めに出
ると言う。
 お兄ちゃんはと言うと、今日は、会社が休みなので、ゆっくり出来るらしい。

「行ってきまーすっ♪」

 由摩は、いつものように元気良く家を出た。
 お父さんが出勤すると、見送りを終えた奈々は、慌しく、掃除や洗濯を始め
のだった。
 本当は、私も手伝うつもりだったが、奈々は、自分の仕事だからと、決して
他の人を手伝わせないらしい。
 仕方なく、私は、いつものように何もすることが無くなって、昼まで、部屋
に閉じこもることにした。


兄と呼んだ日……
----------------

 私は、部屋に戻ると、また「あの人」への思いを募らせる……。
 最近、その思いが徐々に強くなっていくのを感じていた。
 会いたい。でも、会って何を言えばいいのだろう。
 私は、まだただの「顔見知りの娘の姉」に過ぎない。
 考えるたびに、思いは強くなり、心がキュンとなる。
 そんな時、私の部屋をノックする音がする……。
 コンコン……コンコン……

「……優麻……居るかい?」

 お兄ちゃんの声だった。

「お兄ちゃん?………開いてますよ。」

 ガチャと言う音と共に、ドアが開き、お兄ちゃんが顔を覗かせた。

「なんだ……また、部屋に閉じこもってるのか……」
「……うん」

 そう言ってお兄ちゃんは、部屋に入ってくると、部屋を見回しながら、私の
ベッドの上に腰掛けた。

「相変わらず、シンプルな部屋だな……」

 シンプルと言うか、質素と言うか……
 むしろ、殺風景と言う言葉が一番適切かもしれない。
 私の部屋には、必要最低限以外のものは、ほとんど有りはしなかった。
 ベッド、タンス、小さい本棚と机に椅子……
 壁には何も貼ってなどいないしカーテンも白。
 お兄ちゃん曰く「病院の個室みたいだ」と言っていた。

「優麻、欲しいものが有ったら、いつでも言えと言ったのに……」
「……ごめんなさい」

 別に、言わなかったわけではない。欲しいものが無かっただけだ。
 しいて言えば、私が今一番欲しいもの。それは「安らぎ」かもしれない。
 しかし、いくらお兄ちゃんに言ったとしても、それは手に入るとは限らない
ものだ。

「優麻……ちょっと話がある……」

 お兄ちゃんはそう言うと、私をベッドへ呼び寄せる。
 私は、素直に従い、お兄ちゃんの横へと腰掛けた。
 そうすると、お兄ちゃんは、私の両肩に手を添え、向き合わせる。そして、
私の目をじっと見つめた。
 何故か、私は、恥かしくなって、目を逸らす、その時だった。

「皇女……実は、あなたに言い忘れたことがあります」

 皇女?……
 そう……私は、皇女。
 かつて、ラ・ムーと言われ、繁栄を極めた王国の末裔。
 そして、今、私の目の前居るお兄ちゃんも、その王国が作り出した創造物。
 私のお目付け役のはずだ。
 そう言えば、いつからこの人をお兄ちゃんと呼ぶようになったのだろう…。

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 それは、暫く前のことだった……
 私は、気がつくと、吹利の街に居た。
 由摩の記憶の中にある街並……何故、ここに居るのかは、分からない。
 ふと、目の前に一人の男の人を見かけた。
 それは、由摩の記憶の中にある見かけた顔だった。たしか、「前野」と名乗
ったと思う。
 不思議と、何故か懐かしい感じがした。
 何故だろう?
 それは多分、私の持っている遥か昔に出会った知り合いに何処か似ているか
らかも知れない。

 その人は、私のかつての恋人だった人……。
 もう遥か昔に死んだ人……。
 そして二度と会えることは無い人……。

 顔は全然違うし、格好も違う。だけど、何処か、その人の雰囲気に近い感じ
がしたのだ。

「えっと……」
「…あっ…」

 私は、前野さんと目があった瞬間、顔が熱くなるのを感じた。

「…えっと…あ、あの……その……」

 私は、頭の中が真っ白になり、何を言っていいか分からず、ただ、なんと
か取り繕うと必死になってしまった。

「君、何処かであった事無いかな?」

 その時、前野さんの方から話かけてきた。
 だが、余計に何を言っていいか分からず、思わず口裏を合わせてしまった。

「えっ?……えっと…あ、あるかも…しれません……」
「そうですか……」

 前野さんは、ふと首をかしげた。もしかしたら、変に疑われたかもしれない。
 あまり良い印象は与えていないようだった。

「すいません、人違いだったようですね。失礼しました」

 にこっと笑ったそう言うと、前野さんはその場から立ち去ろうとする。

「あっ……ま、まってください…」
「え?」

 私は、思わず呼び止めてしまった。
 呼び止めて、一体どうすると言うのだろうか?
 私には話すことなんてないはずなのに、でも、口の方が先に出てしまったの
だ。
 もしかしたら、心の奥底で、この人から離れたくないと思っていたのかも知
れない。

「…あの〜……わ、私…ゆ…うまと申します…」

 私は、何が言いたいのだろうか。
 その場をただ取り繕うことしか出来ないのに。

「由摩?」
「…由摩?…あっ…そ、そうです…由摩のあ、姉です…」

 私は、言ってて恥かしかった……いきなり、有りもしない由摩の姉だと言い
切る。そんな嘘、すぐ分かってしまうことくらい当然だろうと思う。

「あぁ、そうなんですか、私は前野と言います。よろしく」
「こ、こちらこそ…由摩がいつもお世話になってます…」

 そんな私に、前野さんは、気兼ねなく話してくれている感じがした。
 でも心の中では、疑っていると思う……

「顔が赤いですけど、どこか調子でも?」
「えっ?……そ、そんなことないですよ……」
「なら良いのですが……」

 心配そうに見つめる……そんなに見つめられたら、かえって顔が赤くなって
しまう。
 そう……これが「あの人」との初めての出会いだった。

 その日から私は「あの人」に対する思いが日増しに強くなっていくのを感じ
た。機会があるたびに、私は「あの人」に会うために「あの人」が居る場所へ
と足を運ぶようになっていた。
 そして、暫くしたある日、私は、由摩が良く通うパン屋へとやってきた。
 もちろん、前野さんに会うためだった。だが、私が行ったときには、前野さ
んは居ないようだった。
 居たのは、メイド服を着た前野さんを良く知る人と、いつも笑顔を絶やさな
い男性だった。

「なぁにぃ。アンタが最近旦那を困らせてるって女かい?」

 その人は煌と名乗った。私が優麻だと名乗ると、いきなり顎を指先で持ち上
げ睨みつけてきた。
 私には、一体何がなんだか分からない。この人に恨みを買うようなことをし
た覚えも無い。
 でも、この人は、私を必要に責めてくる。
 私は、前野さんに迷惑なんてかけてない。
 私は、ただ、前野さんのそばに居たいだけなのに。
 そして、涙がこみ上げて来た。自分でも悪いことだとは思っていない、でも、
もしかしたら、私が存在すること自体が、前野さんにとって迷惑なのかもしれ
ないと感じた。

「な、なくなよお」
「あっ…ぐすっ……す、すいません…ぐすっ……」

 そんな会話をしていると、パン屋の扉が開いて、前野さんが姿をあらわした。
 私は、咄嗟に身を潜めてしまった。
 そんな会話の後だ、私が前野さんの前に出す顔なんてない、そう思った。
 そして、続いて私の見知った人が入ってくる。
 由摩の兄だった。
 もう、私には、その場に留まることが出来なかった。もし、この人にばれた
らもう二度と前野さんに会うことなんて出来ないと思ったからだ。
 しかし、もう、前野さんに会わせる顔もない。
 私はその場から離れ、由摩の体へと戻ることにした。
 そうだ、由摩としてなら、まだ機会はあるはず、そう考えた私は、まだ目を
覚まさない由摩を使ってもう一度前野さんに会うことを決意した。
 もしかしたら、誤解を解いてくれるかもしれない。
 そうすればもう一度……。

「……こんにちは。あっ……」
「ん?」
「どうした由摩?」

 やはり、面と向かうとどうしても目を逸らしてしまう。
 でも、言わなきゃ、しかし、周りは、そんなどきまぎしている由摩としての
私に疑いをかける。
 やっぱりダメだ。私には、上手く立ち回るなんて決して出来ない。そんな私
に追い討ちをかけるように、由摩の兄は言った。

「皇女……」

 私は、その言葉を聞いて、びくっとした。

―――き、気づかれている?

 この人には、隠し事は出来ないのだ。
 私はもう何も出来ないと悟り、その場を離れることだけを考えた。
 しかし、そんな疑いのかかったままでは、誤魔化すのもままならない。
 まるで、私は、苛められている気持ちになってきた。
 もう許してほしい。
 心の中で、ひたすら謝っていた。
 そうすると、兄は、帰ると言い出した

―――良かった。

 要約、この場から開放される。
 もう、こりごり……。
 二度と、でしゃばるのは止めにしようと思った。

 帰りの車中……兄は暫く黙ったまま、車を走らせていた。
 私は、今の意識のまま、黙って助手席に座っていた。
 気づいているはずなにの。私の意識は、そのままだと。でも、暫くは何も言
わずしまいでいるのだ。
 怒りたければ怒ればいい。むしろ、黙ったままの方が怖い。
 私は、ドキドキしながらただ黙って座っているだけだった。
 その時、ふと、兄は口を開いた……

「優麻……聞いてるかい?」
「……」

 もう、そんな芝居は止めてほしい。私は、優麻なんかじゃない。由摩と言う
名の体に封じ込められている過去の栄光にすがり付いた一族の娘……

 「聞こえているのだろう?……出ておいで……」

 どの道、隠していても仕方の無いことだ……
 私は、素直にその実体を後ろの座席に表した。

「優麻……」

 はっきり言って欲しかった。
 『もう出てくるな』と。
 怒って欲しかった。
 詰って欲しかった。
 今の私には、そう言われた方が少しは楽だ。
 だが、その次に出た兄の言葉は意外なものだった。

「今日の夕飯、何にする?」
「……えっ?」

 始め、私は、その意味が分からなかった。

 「食べたいものがあったら今のうちに言っておけよ」

 兄は、くすくすと笑いながら、私に言った。私をまだからかっているのだろ
う。もう許してほしい。もう二度とあんな真似はしないから。

「……あのー……私……」
「ん?なんだ優麻。遠慮なんてするなよ。だって、今日はおまえの大事な日だ
からな」

―――大事な日?

 なんのことだろう?
 そんな日、私は知らない。
 その後、伊佐見邸につくまでの間、由摩の頭を撫でながら、何も言わなかっ
た。

 伊佐見邸につくと、私は、由摩の体に戻ろうと考える。しかし、兄はそれを
制止した。

「おまえの家なんだから、隠れる必要はないだろ?」
「………」

 兄は、何を企んでいるのだろうか……そして、寝ていた由摩も目を覚まし車
から降りてくる。
 由摩は、私を見て、不思議そうな顔をした。当然と言えば当然だ。なにせこ
うして向き合うのは、初めてなのだから。
 由摩は、暫く私を色々な角度から観察していた。
 そして、私の前に立ち私の顔を覗いてから満面の笑顔を見せた。

 「お姉ちゃんっ♪」

―――お姉ちゃん?

 私はびっくりした……由摩からそんな言葉が出るとは思ってもいなかった。
 今日の私は、わからずじまいだ。
 兄は、私を怒ることもしない。
 由摩は私をお姉ちゃんと呼ぶ
 何でだろう……分からない……。
 私は、兄の言うがまま、伊佐見邸の門をくぐった。
 そして……

 「それと…俺のこと……お兄ちゃんって呼べよ……」

 この時確かにそう言った。
 そう、この時からだ。
 私は、この人をお兄ちゃんと呼ぶになり、伊佐見家の一員として住むことに
なったのは。

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本当の理由
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 「皇女……ちゃんと聞いてくださいね」

 私は、ふと現実へ戻された。

 「は、はい……」
 「実は……前皇帝からの伝言……と言うより、遺言に近いものですかね…」
 「お父様の?………」
 「はい…」

 私のお父様―――
 それは気の遠くなるくらい昔のこと……。
 とても厳格でいつも険しい顔をしていた。そんな印象しかなかった。
 私は、生まれて間もなく母を失った。
 そして、親と言えばお父様しか知らない。
 滅び行く王国に、あくまでもこだわり、復興を果たそうとして、半ばで命を
失った。その時、私はまだ幼かった。

 「…と言っても、たった一言ですけどね」
 「一言?」

 お父様らしい……
 私には、あまり話すことはない父親だった。

 「ええ……では、皇帝からの伝言です……」
 『普通の女性として生きるのだ』
 「…これだけです」
 「……えっ?」

 何が言いたかったのか

―――普通の女性として?

 何故?
 皇帝の娘として生きろと言ったのは、確かお父様のはず……。
 今更何を言ってるのだろうか。

 「勘違いなさってますね?」
 「多分……」
 「なら、ちゃんと説明しましょう……」

 お兄ちゃんの話を聞いて、驚愕した……
 私の知っている事実とは、あまりにも正反対だったのだ。

 封印された本当に理由―――
 それは、未来の人々に私を託すことだったのだ。
 私は、てっきり王国の未来を託すために封印されたのかと思っていた。
 事実、私はそう言われて、仕方なく運命に身を委ねたのだ。

「この事実を知っているのは、私しか居ません。皇帝は、あの混乱した時代に
おいて、皇女が生きるには、あまりにも酷だと思っていられたのでしょう……
がしかし、それを周囲に悟られてしまえば、あなたに危害が加えられるかもし
れないので、私が極秘裏に進めていたのです。」
「……」

 私は、何も言えなかった……。
 一時は父を恨んだこともあった。今更、それが違うのだと言われても、納得
出来るはずも無い。

「……と言うわけです。つまり、あなたは、現時点をもって、皇女としての地
位を捨てることになります。そして、私の役目もこれで全停止いたします。」

 もう、どうでも良かったのかもしれない。私はまだ良く理解していない。
 だが、これで私は用済みだと言うことだけは理解できた。
 そんな私の考えを読み取ったのか、いきなり私を抱きしめ、こう言った。

「早まらなくてもいい……まだおまえには、やるべきことがあるのだから」
「やるべき……こと?」

 急に、お兄ちゃんがいつもの口調に戻った。

「そう……おまえには、伊佐見家の一員としての役目があるのさ」

 お兄ちゃんは、耳元でそう囁いた……伊佐見家の一員としての役目?…

「そうだよ、今日から本当に伊佐見泰三の娘となり、そして、私の本当の妹と
して……由摩の姉のしての役目が出来たのだよ」

 そう言われて、私は、涙を流していた

―――嬉しかった。

 初めて、本当のこと聞いて不安だった。
 でも、その言葉は、私の心を僅かばかりか救ってくれたのだ。
 後で聞いた話だったが、今まで、私をこの家の住人としてちゃんと迎えられ
るように、準備をしていたらしい。
 戸籍、学歴……そして、周囲の環境。知らなかったのは私だけだったのだ。
 こんなに良い家族に恵まれ……
 そして、お父様にも感謝の言葉……

 「ありがとう……」

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 安らぎの心……
 それは、あの人と一緒に居る時……
 そして、このやさしい家族に囲まれた時……
 私は、安らぐのかもしれない……


時系列
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1999年の秋

解説
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優麻初登場小説。
優麻の心の描写を描いてます。

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ああ……昔はこんな長いものも書けたんだなぁ(w

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球形弐型こと「伊沢英人」

メール BallMk-2@trpg.net

<ひでSWANの暇つぶしに出来たHP>
http://www.interq.or.jp/www1/hi-izawa/index.htm

雑談所    :
http://www.tsm.gr.jp/cgi/pt.cgi?room=3658
TRPG掲示板:
http://hyper4.amuser-net.ne.jp/~auto/b13/usr/me111703/brd1/bbs.cgi

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  スパロボRPG用メーリングリスト開設!!
  詳しくは、HPにて公開しています。
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12月のつぶやき

「いくら言葉を並べても、思いは伝わらない」
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