Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Tue, 12 Dec 2000 01:39:18 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21081] [HA06P] 『くりーちゃー・わんだーらんど』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200012111639.BAA04251@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 21081
2000年12月12日:01時39分18秒
Sub:[HA06P]『くりーちゃー・わんだーらんど』:
From:久志
久志です。
EP書けない病だのう……
とゆわけでなんとか一本流してみる。
**********************************************************************
『くりーちゃー・わんだーらんど』
=================================
人物紹介
---------
山本治彦(やまもと・はるひこ)
:不動産屋のおにーさん、なぜか不幸。
橋本喜一(はしもと・きいち)
:山本の上司。その正体は……
橋本元晴、朱敏:橋本家の息子達、その正体は……
ちょっと一杯のつもりで
-----------------------
夜の八時過ぎ、吹利駅前商店街。
夕ご飯の買い物の時間はとうに過ぎて、会社帰りのお父さんたちの姿がまば
らに見える。山本は当番の事務所のモップがけを済ませ帰り支度をしていた。
橋本 :「山本君、一杯どうだい?」
山本 :「いいですね、つきあいます」
疲れた社会人たちの一時の憩い、たまにはいいでしょ?お母さん。
酒飲みはガマの油の如し
----------------------
一杯が二杯、二杯が三杯、三杯が……
山本 :「あのぇ、橋本さぁん、少しペース早くないですかー?」
橋本 :「わははは、山本くん。これっくらいでへばってちゃ男が
:すたるぞ!」
山本 :「はっ、橋本さん、ヤバイです、もー私ヤバイですって」
橋本 :「だーいじょーぶ、まだまだいけるぞー、次行くぞ次!」
山本 :「すっ、すいません、お勘定ー。橋本さぁん。もー帰りま
:しょうって、ヤバイですっ!」
橋本 :「いーから、いーから山本くん。じゃあウチで飲みなおそ」
山本 :「え!?いえ、ご家族の方に悪いですから……って、橋本
:さんしっかりしてくださぁいっ!」
月末よくある見かける光景三十六のうちひとつ。酔っ払って陽気な上司とへ
れへれになって引っ張る部下の図である。
目覚めたら……
--------------
目を覚ましたのは見知らぬ部屋だった。
山本 :「ふわぁ……あ?」
カーテンから漏れてくる陽射しからして、まだ早朝と言っていい。
すぐ脇にもう一組の布団がしかれ、ぐうぐうと橋本が眠っている。
山本 :「えーーーーと、夕べは」
記憶と一緒に思い出したように胃が痛む。
山本 :「ああ……あの後、タクシーで橋本さん家にきて…」
それから記憶がない。どうやらそのまま橋本家で撃沈してしまったようだ。
山本 :「……やってしまった(汗)」
今度こそ、どんなに誘われても無茶な飲みはやめようと五回目の節酒の誓い
を立てる山本であった。
山本 :「う……」
キリキリと痛む胃。できれば水の一杯でも飲みたい所だが、家に押しかけ、
つぶれて泊めてもらった挙句、朝早くから家人を起こして水をもらう……など、
とても言えるわけがない。
山本 :「お水をもらうだけです、本当に、すいません」
誰も聞いちゃいないのだが一応断って、橋本を起こさないようにそっと起き
あがり、音を立てないように襖を開け廊下へと出た。
通りすがりのくまさん
---------------------
抜き足差し足。
別に悪いことをしているわけではないのだが、なんといっても人の家。必要
以上にびくびくしてしまう。
山本 :「こっちかな」
目指すは台所、そろそろと廊下を歩く途中に……
山本 :「□*▽●!?」
クマがいた。
クマ :「………(ぽやーん)」
山本 :「……えうあうあえおあお(錯乱)」
なぜかぶかぶかパジャマを着込んで二足歩行、おまけに時折眠そうにあくび
をしている。
山本 :「あ、あう、あえおあういあ、あのその、あのあの」
クマ :「(とろーん)………がぅ(ぼけー)」
まともに言葉の出てこない山本を尻目に、クマはとてとてと山本の脇をすり
抜け、トイレへと入っていく。
山本 :「えう……お……あ……(混乱)」
しばし、空白。トイレのドアがゆっくりと開いた。が。
元晴 :「ふわぁ……」
山本 :「▲%◎□?!」
トイレから出てきたのは小学生くらいの男の子だった。
元晴 :「うにゅー(ごしごし)」
山本 :「○&#$!?!?!?!」
絶句している山本に目もくれず、眠そうに目をこすりながらとてとてと元来
た廊下を歩いていく。
山本 :「えう、あおあえ……」
既にさっきからまともな言葉が出てこない。
男の子が階段を昇っていくのを呆然と見送って、我に返った。
山本 :「く、く、く、くま……」
目をこすってみた、正常だ。
顔をなでてみた、もう酔いはさめている。
頭を抱えてみた、まだボケるには早すぎる。
確かにクマだった。
確かに少年だった。
山本 :「…………水を飲もう」
頭の中で何かがオーバーフローしたらしい。
ひとまず当初の目的に帰ることにした。
考えるな、感じるんだ。
冷蔵庫のうるふめん
-------------------
台所の場所はすぐにわかった。
というより、行きつく前に起こった出来事のせいで頭が真っ白になっていた
せいで、最初から場所はだいたいわかっていた。
山本 :「ん?」
台所に人の気配がする。
多少朝は早いが早すぎる時間帯ではない、誰かが朝食の支度でもしているの
かもしれない。勝手に台所に顔を出すのはさすがに気まずいので、少し様子を
伺った。
首にかけたタオル。
タンクトップ。
ジャージ。
ここまでは普通。おそらくジョギング帰りか何かだろう。
だが。
オオカミだった。
山本 :「…………(絶句)」
全身全霊の力をこめてひたすら音を立てず静かに後じさる。
もう水などどうでもよかった。
となりのらいよん
----------------
どうやって部屋まで戻ったのか、記憶にない。
ただ部屋に戻っていた。
ぴっちりと襖を閉める。
台所へ行って戻って、ただそれだけで異常なほどに疲労している。
山本 :「な、ななな、な、なんなんですか、一体」
その問いに答えるものなし。
山本 :「……寝よう」
それ以外にできることはない。
が。
そういう時に限って余計なモンが目についてしまうのは性なのか。
山本 :「…………………………はしもと、さ……ん?」
隣の布団に寝ているのは一匹のライオンだった。
山本 :「はうっ…………」
山本治彦、撃沈。
へーわないっかだんらん
----------------------
奥さん :「山本さん、具合どうですか?」
山本 :「すいません、泊めていただいて」
奥さん :「いいえ、こちらこそすいませんね、うちの人がお酒にだ
:らしなくて。私からもきつく言っておきますから」
隣の布団には橋本さんがぐうぐうと気持ちよさそうに眠っている。
山本 :「いえ、本当に気になさらず」
奥さん :「うちの人昼まで起きませんから、山本さんだけでも朝食
:食べて行ってくださいね」
山本 :「……すいません」
早朝の出来事はなんだったのか。
二日酔いの夢か。白昼夢か。
元晴 :「おはよーございまーす」
朱敏 :「あ、山本さんおはようございます。うちのオヤジが迷惑
:かけてすいません」
山本 :「いやいや、こちらこそ」
あのパジャマを着た小学生くらいの男の子。
タンクトップにジャージの中学生くらいの男の子。
本当に夢だったのか?
**********************************************************************
いじょ
橋本さん……ていうのはあのワーベア少年橋本元晴くんの一家ってことで。