[KATARIBE 21081] [HA06P] 『くりーちゃー・わんだーらんど』

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Date: Tue, 12 Dec 2000 01:39:18 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 21081] [HA06P] 『くりーちゃー・わんだーらんど』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200012111639.BAA04251@www.mahoroba.ne.jp>
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2000年12月12日:01時39分18秒
Sub:[HA06P]『くりーちゃー・わんだーらんど』:
From:久志


 久志です。
EP書けない病だのう……

とゆわけでなんとか一本流してみる。

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『くりーちゃー・わんだーらんど』
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人物紹介 
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 山本治彦(やまもと・はるひこ) 
     :不動産屋のおにーさん、なぜか不幸。
 橋本喜一(はしもと・きいち)
     :山本の上司。その正体は……
 橋本元晴、朱敏:橋本家の息子達、その正体は……

ちょっと一杯のつもりで
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 夜の八時過ぎ、吹利駅前商店街。
 夕ご飯の買い物の時間はとうに過ぎて、会社帰りのお父さんたちの姿がまば
らに見える。山本は当番の事務所のモップがけを済ませ帰り支度をしていた。

 橋本     :「山本君、一杯どうだい?」
 山本     :「いいですね、つきあいます」

 疲れた社会人たちの一時の憩い、たまにはいいでしょ?お母さん。


酒飲みはガマの油の如し
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 一杯が二杯、二杯が三杯、三杯が……

 山本     :「あのぇ、橋本さぁん、少しペース早くないですかー?」
 橋本     :「わははは、山本くん。これっくらいでへばってちゃ男が
        :すたるぞ!」
 山本     :「はっ、橋本さん、ヤバイです、もー私ヤバイですって」
 橋本     :「だーいじょーぶ、まだまだいけるぞー、次行くぞ次!」
 山本     :「すっ、すいません、お勘定ー。橋本さぁん。もー帰りま
        :しょうって、ヤバイですっ!」
 橋本     :「いーから、いーから山本くん。じゃあウチで飲みなおそ」
 山本     :「え!?いえ、ご家族の方に悪いですから……って、橋本
        :さんしっかりしてくださぁいっ!」

 月末よくある見かける光景三十六のうちひとつ。酔っ払って陽気な上司とへ
れへれになって引っ張る部下の図である。


目覚めたら……
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 目を覚ましたのは見知らぬ部屋だった。

 山本     :「ふわぁ……あ?」

 カーテンから漏れてくる陽射しからして、まだ早朝と言っていい。
 すぐ脇にもう一組の布団がしかれ、ぐうぐうと橋本が眠っている。

 山本     :「えーーーーと、夕べは」

 記憶と一緒に思い出したように胃が痛む。

 山本     :「ああ……あの後、タクシーで橋本さん家にきて…」

 それから記憶がない。どうやらそのまま橋本家で撃沈してしまったようだ。

 山本     :「……やってしまった(汗)」

 今度こそ、どんなに誘われても無茶な飲みはやめようと五回目の節酒の誓い
を立てる山本であった。

 山本     :「う……」

 キリキリと痛む胃。できれば水の一杯でも飲みたい所だが、家に押しかけ、
つぶれて泊めてもらった挙句、朝早くから家人を起こして水をもらう……など、
とても言えるわけがない。

 山本     :「お水をもらうだけです、本当に、すいません」

 誰も聞いちゃいないのだが一応断って、橋本を起こさないようにそっと起き
あがり、音を立てないように襖を開け廊下へと出た。


通りすがりのくまさん
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 抜き足差し足。
 別に悪いことをしているわけではないのだが、なんといっても人の家。必要
以上にびくびくしてしまう。

 山本     :「こっちかな」

 目指すは台所、そろそろと廊下を歩く途中に……

 山本     :「□*▽●!?」


 クマがいた。


 クマ     :「………(ぽやーん)」
 山本     :「……えうあうあえおあお(錯乱)」

 なぜかぶかぶかパジャマを着込んで二足歩行、おまけに時折眠そうにあくび
をしている。

 山本     :「あ、あう、あえおあういあ、あのその、あのあの」
 クマ     :「(とろーん)………がぅ(ぼけー)」

 まともに言葉の出てこない山本を尻目に、クマはとてとてと山本の脇をすり
抜け、トイレへと入っていく。

 山本     :「えう……お……あ……(混乱)」

 しばし、空白。トイレのドアがゆっくりと開いた。が。

 元晴     :「ふわぁ……」
 山本     :「▲%◎□?!」


 トイレから出てきたのは小学生くらいの男の子だった。


 元晴     :「うにゅー(ごしごし)」
 山本     :「○&#$!?!?!?!」

 絶句している山本に目もくれず、眠そうに目をこすりながらとてとてと元来
た廊下を歩いていく。

 山本     :「えう、あおあえ……」

 既にさっきからまともな言葉が出てこない。
 男の子が階段を昇っていくのを呆然と見送って、我に返った。

 山本     :「く、く、く、くま……」

 目をこすってみた、正常だ。
 顔をなでてみた、もう酔いはさめている。
 頭を抱えてみた、まだボケるには早すぎる。

 確かにクマだった。
 確かに少年だった。

 山本     :「…………水を飲もう」

 頭の中で何かがオーバーフローしたらしい。
 ひとまず当初の目的に帰ることにした。

 考えるな、感じるんだ。


冷蔵庫のうるふめん
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 台所の場所はすぐにわかった。
 というより、行きつく前に起こった出来事のせいで頭が真っ白になっていた
せいで、最初から場所はだいたいわかっていた。

 山本     :「ん?」

 台所に人の気配がする。
 多少朝は早いが早すぎる時間帯ではない、誰かが朝食の支度でもしているの
かもしれない。勝手に台所に顔を出すのはさすがに気まずいので、少し様子を
伺った。

 首にかけたタオル。
 タンクトップ。
 ジャージ。

 ここまでは普通。おそらくジョギング帰りか何かだろう。
 だが。


 オオカミだった。


 山本     :「…………(絶句)」

 全身全霊の力をこめてひたすら音を立てず静かに後じさる。

 もう水などどうでもよかった。


となりのらいよん
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 どうやって部屋まで戻ったのか、記憶にない。
 ただ部屋に戻っていた。

 ぴっちりと襖を閉める。
 台所へ行って戻って、ただそれだけで異常なほどに疲労している。

 山本     :「な、ななな、な、なんなんですか、一体」

 その問いに答えるものなし。

 山本     :「……寝よう」

 それ以外にできることはない。

 が。
 そういう時に限って余計なモンが目についてしまうのは性なのか。

 山本     :「…………………………はしもと、さ……ん?」


 隣の布団に寝ているのは一匹のライオンだった。


 山本     :「はうっ…………」

 山本治彦、撃沈。


へーわないっかだんらん
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 奥さん    :「山本さん、具合どうですか?」
 山本     :「すいません、泊めていただいて」
 奥さん    :「いいえ、こちらこそすいませんね、うちの人がお酒にだ
        :らしなくて。私からもきつく言っておきますから」

 隣の布団には橋本さんがぐうぐうと気持ちよさそうに眠っている。

 山本     :「いえ、本当に気になさらず」
 奥さん    :「うちの人昼まで起きませんから、山本さんだけでも朝食
        :食べて行ってくださいね」
 山本     :「……すいません」

 早朝の出来事はなんだったのか。
 二日酔いの夢か。白昼夢か。

 元晴     :「おはよーございまーす」
 朱敏     :「あ、山本さんおはようございます。うちのオヤジが迷惑
        :かけてすいません」
 山本     :「いやいや、こちらこそ」

 あのパジャマを着た小学生くらいの男の子。
 タンクトップにジャージの中学生くらいの男の子。

 本当に夢だったのか?

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いじょ

 橋本さん……ていうのはあのワーベア少年橋本元晴くんの一家ってことで。



    

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