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Date: Mon, 11 Dec 2000 08:51:51 +0900
From: "isana ." <isana__@hotmail.com>
Subject: [KATARIBE 21078] [HA06P] 新装開店再び
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <F17SpgpZ5PM6LBBglhR0000e0d4@hotmail.com>
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勇魚です。
ハーブショップ兼薬屋兼カフェの新装開店EPです。
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EP:「新装開店再び」
閉店後のグリーングラスのカウンターに頬杖をついて、ユラはぼんやりと考え込ん
でいた。
……ありがたい申し出では、あるんだけれど。
もう何回目かの同じ独り言をまた呟く。
ことの起こりは一週間前、師匠の家に新しい薬を受け取りに行ったとき。
グリーングラスのオーナーでもある師匠の奥方がにこにこと声をかけてきたもので
ある。
オーナー :「ユラちゃん最近大変そうじゃない。
お店のほう、もうちょっと人手を増やそうかと思うのよね。
……で、そのついでなんだけど、ユラちゃんが始めた喫茶コーナー
ね、
結構好評だっていうし、もうちょっと整備して、カフェにしてみな
い?」
ユラ :「……あ、でも、あれは、ほんとにわたしが趣味で始めたようなもの
ですし」
オーナー :「だから、人手を増やしてもう少しだけ本格的に、ね。
どうせ生薬関係のほうは、あれ、薬店扱いだったかしら?とにかく
薬局じゃないんだから大丈夫よね」
そう云う問題ではないとも思ったのだが、ここのところ大学のほうでの責任がめっ
きり
重くなって、薬膳関係の仕事はさっぱり受けられなくなっている。
一方で、ちょこちょこと店に出しているハーブティーやハーブケーキは好評だし、
遊びに来てくれる人たちからはもうちょっとしっかりしたメニューも出せばいいのに
などと
云われているし…
雑貨部分を縮小して、生薬を扱う部分を二階か奥の部屋に移動し、自慢の業務用台
所に
別ドアをつけて居住部分と切り離せば、喫茶コーナーをミニカフェにすることは充分
可能だ。
そこまで考えて、ユラは苦笑した。
なんだ。
すっかり乗り気なんじゃない、わたし。
経費は奥方から出るからとりあえず問題なしとして……
あとは、美都さんの安全と、人手、か。
うん、と小さく頷くと、ユラは二階のほうに声をかけた。
ユラ :「美都さん、ちょっと相談があるんだけど……」
〜〜〜***〜〜〜
それから十日ばかりした日。
グリーングラスの物置と化していた店奥の部屋の、庭に向いた窓が掃出しに改築さ
れ、
小さなテラスが張り出している。
庭を通ってテラスに続く飛び石の道は、錆びた鉄階段の下を通って表通りへと続
く。
鉄階段の手すりには、「漢方相談承ります。階段下からどうぞ」の木札。
裏返すと、「漢方相談はこの時間お休みさせていただいております」の文字があ
る。
ユラが外出中の間は木札は裏返っており、そして階段下の人一人がやっと抜けられ
る
くらいの狭い通路はツタが通行止めにしているという按配。
これなら、出入り口がひとつ増えたところで美都の安全に問題は起きないだろう。
ユラ :「ええとね、その百味箪笥はそっちの風通しのいいほうに置いて。
その窓の下。そこなら直射日光あたんないから……」
そして、改築なった部屋では人影が忙しく立ち働いている。
白衣のユラ、エプロン姿の美都の後で、荷物を運ばされているのは一。
一 :「おまえなぁ、いい加減人使い荒いよ」
ユラ :「人使い?あたしゃ一を使ってるだけよ。
……って、いや冗談だって。バイト代はずむからさ、頼むわよ」
一 :「しかしまぁ、随分思い切った改造を」
美都 :「でも、皆さんきっと喜ぶと思うんです。今までちょっと不評でした
し。
……特にお薬買いに来てた人に」
あはは、とユラが引きつった声で笑う。
まぁ、確かに不評だった。扱っている生薬と、わざわざグリーングラスまでそれを
買いにくる客筋と、そして「ハーブショップ・グリーングラス」の雰囲気の相性の悪
さは
特筆ものだった。
ユラ :「ううう……まぁ、普通の風邪の漢方薬とかだったら、ここでなくて
も
買えるしねえ……」
この近辺ではここでしか扱っていないような代物を買いに来るのは、それなりの
客。
そんなもんと小奇麗な店を一緒に運営しようって方が間違ってるんだ、と一は思っ
たのだが、
口には出さずに薬棚を部屋の奥に移動する仕事に専念した。
バイト料に響くようなことは口から出すつもりはない。
畳を上げて板敷きに直し、奥三分の一に調剤室を設えた小部屋はいつのまにか
漢方薬店特有の空気の色合いに染まっている。
薄日と、少し冷たいくらいの風が通る。
ユラ :「……これなら、まぁ、入りにくいことないよねぇ?」
美都 :「入り口が見つけにくいんじゃないかと思うんですけど(苦笑)」
ユラ :「あ、大丈夫だいじょうぶ。ああいう入り口のほうが見つけやすいっ
て人が
どうもうちの客筋らしいから」
おかげで時々ぎょっとさせられることも多いけどね、とこれは口の中でだけ。
一が怪訝な顔をして首をかしげているのに、慌てて用事をいいつけて誤魔化した。
ユラ :「あ、そうだ、来週の日曜日の夜ねえ、改装オープンの報告兼ねて、
新しいスタッフと、あとグリーングラスの常連さんとで夕食会予定
してるの。
直紀さんにこないだ言い損ねちゃったから、伝えといてくれる?
もしよかったら、予定あけといてって」
一 :「夕食会?」
美都 :「一さんもいらっしゃるんですか?」
美都はにっこり笑ったのだが、
ユラ :「……グリーングラスの、常連さん、ね。いや、千客万来ってとこだ
から、
止めないけど」
ユラのいかにも意味深に笑うこと。
一 :「……う(汗)。……考えとく」
ユラ :「ま、お薬のほうでお世話になってる人には別口で考えてるから」
けたけた、と遠慮ない笑い声をあげられ、こいつほんとに感謝なんかしてやがんの
か、と
つい思ってしまう一であった。
というわけで、ハーブショップ・グリーングラスと裏の生薬屋、
少しばかり入りやすくなって新装開店となったのである。
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というわけで。
ちょっとお店のレイアウト変えてみました。
それにしても
…しばらくEP書いてなかったからなんだかぎこちないです(^^;;;;;;
美都さんと一氏、勝手にお借りしてしまいました。
口調修正などありましたらよろしくお願いいたします。
そんなところで、では。
isana <isana__@hotmail.com>
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