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Date: Sun, 10 Dec 2000 00:15:23 +0900
From: Kakeru Aozora <kakeru@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 21075] [HA06P] ぬいのクリスマスプレゼント
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <3A324C8B26C.EED8KAKERU@mail.trpg.net>
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かけるんです。
いーちゃん発案でEPです。(代理流しじゃぶじゃぶ)
[HA06P]ぬいのクリスマスプレゼント
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注釈
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本文および本文中のつっこみはERさんです。
※付き注は軍光一さんです。
題名と注釈と解説はかけるんです。
登場人物
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蒼月かける(あおつき・かける):光使いな占い師。変わり者。
来栖せら(くるす・せら) :天使らしい。影響されやすい。
軽部真帆(かるべ・まほ) :某社会人。平塚花澄の友人。ぬいぐるみ作
:りが趣味。
本文
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某日晴天也……いやもとい、某日の午後。
喫茶店、メープルガーデンで。
かける :「クリスマスですなぁ」
それはひどく平和な風景。
来栖 :「クリスマスだね」
言葉に、一つの裏も無いような。
来栖 :「かけるんは徹夜でミサをするの?」
かける :「しない」
一般的な日本人なら、斯くの如く答えるだろう、という返事をしてから、か
けるは首を傾げる。
かける :「キリスト教徒は徹夜でみんなミサをするのか?」
来栖 :「うん。キリストが夜に生まれたという話だから、徹夜で
:ミサをするのよ」
…………ほんとかよー(影の声)
※徹夜は大げさな表現ですが、夜にミサはします。(苦笑)
かける :「日本時間だと昼になるんじゃないのか?」
来栖 :「気持の問題よ」
かける :「じゃぁ昼でもいいじゃん」
来栖 :「夜のほうが都合がつく人が多いんだもの」
かける :「徹夜だと次の日大変だぞ」
来栖 :「気持の問題よ」
あっさり。
かける :「……まぁ、かけるんはキリスト教徒じゃないのでかんけ
:いないが」
すこし冷めた紅茶を一口。
かける :「がんばれよ来栖」
来栖 :「年末はそのあと年末年始のお参りと、初詣があるから大
:変なのよ」
……はい?
かける :「……天使のくせにお参りや初詣に行くのか?」
来栖 :「慣習なの」
かける :「何年前から?」
来栖 :「日本にキリスト教が伝来してから」
かける :(江戸時代に初詣ってあったっけ?)
キリスト教の伝来は、1549年だと……(安土桃山である)<影の声
かける :「葬式はやっぱり仏教式か?」
来栖 :「ちがうわよう」
かける :「貴様それでも日本人か?」
天使である。
来栖 :「慣習と狭義は違うもの」
かける :「なんか詭弁くさいぞ」
来栖がちょっとむっとする。それに構わず。
かける :「来栖もじつは『オレ教義』とか『オレ神の言葉』とかもっ
:ているんじゃないか」
来栖 :「そんなのもってないわよ」
かける :「そういうことにしておこう」
つか、普通は持ってない(断言)。
かける :「ところで、クリスマスと言えばクリスマスプレゼントだな」
いかにも、話がそちらに転んだような口調で。
かける :「キリスト教の伝統的プレゼントと言うものはあるのか?」
来栖 :「なんかあげるの?」
かける :「うん。まぁ、そんなところだ」
多少繋がりの無いやり取りなのだが、これできっちりと意思疎通する辺りは、
確かに友人同志……もしくは知人同志、というところだろう。
来栖 :「自分が贈って嬉しくて、相手が喜ぶものを贈るのが基本じ
:ゃない?」
アップルパイの、最後の欠片をフォークで突ついて。
来栖 :「隣人愛の実践」
かける :「なるほど」
くぴ、と、紅茶を飲み干して。
かける :「博愛だね」
来栖 :「うん」
取り合えず、最後の結論は一致したらしく、来栖はこっくりと頷いて、ほろ
ほろと崩れるパイの皮を丁寧にフォークの背で押さえて口に運んだ。
来栖 :「じゃね」
かける :「うん」
二枚あった請求書のうち、一枚をひょいとつまんで、長い黒髪の少女が立ち
あがる。
単純な挨拶。
と。
真帆 :「…………」
ふと、隣のテーブルからの視線を感じる。
かける :「?」
結構真剣な……というのも何か変だが……視線にそちらを見ると、かけるよ
りは年上と見える女性が一名、じっとこちらを見ている。
目が合うと、相手は一瞬……ひどく困ったような顔になった。
真帆 :「あーっと……」
かける :「は? なにか?」
沈黙。
真帆 :(ううむどうしよっかな、変な人かな……)
改めて考えずとも、既に変な人であるというのは思考範疇にないらしい。
真帆 :「ええっと……いや、あの、すいませんが」
かける :「はい」
真帆 :「プレゼント、捜してらっしゃる最中ですか?」
かける :「ええ、そうですが」
またもや、沈黙。
真帆 :「(しばし考え込む)……あのー、変な話なんですけど…
:ぬいぐるみ、いりません?(汗)」
かける :「は?」
まあ、妥当な反応である。
相手は尚更に困ったように、曲げた指の関節で、額を横に数度こすった。
真帆 :「いやあの、ちょっと作りすぎまして(汗)」
クリスマスプレゼントを目当ての、テディベア専門店のバーゲンに引っかかっ
た挙句、友人に呆れ果てられるほどのぬいぐるみを作成したのは秘密である。
真帆 :「部屋を片付けるのに、限界というか…………」
かける :「はぁ(どっかで聞いた話だな)」
はあ、と、溜息のように女性が頷く。
かける :「それでこーぬいを引き取ってくれる人を募集中、ですか
:な?」
真帆 :「はい(汗)」
首肯。
真帆 :(ああう、変なおばさんじゃないかよーっ)
事実そのままの認識では、ある。
真帆 :(うう……幾つ持ってきても良いって言ったくせに………
:真沙緒の莫迦野郎っ)
七つ持っていって、そのうちの三つを受け取って貰ったことは、綺麗に忘れ
ているらしい。
かける :「じゃぁ、せっかくなのでいただきます」
真帆 :「あ、ありがとうございますっ(礼)」
ぺこりと一礼。
真帆 :「……すみませんね(^^;;」
かける :「……あの……」
真帆 :「はい?」
かける :「……もしかしてかってに動いたりはしませんよね……」
足元の紙袋から、なにやら取り出そうとした女性の手が止まった。
真帆 :「…………え?(汗)」
沈黙。
かける :「いいえなんでもありません……」
真帆 :(……花澄じゃあるまいし……)
世の中、常識は大切である(なんかちがうっ)。
真帆 :「で、いかほど引きとって頂けます?(汗)」
かける :「いくつあるんですか?」
真帆 :「これなんですが……」
足元の紙袋を持ち上げ、中身をテーブルの上にゆすぶり落とす。
ざららっとぬいが4体(^^;;)
うさぎ、ねこ、くま、ふくろう。
ふわふわのぬいぐるみは、揃ってテーブルの上に並んだ。
かける :「かわいいですねぇ(さわさわ)」
出来は、決して悪くない。
かける :「じゃぁ、全部いただきます」
真帆 :「うわ、ありがとうございます」
かける :「あ、ありがとうございます(ふかぶか返し)」
……何となく、妙な風景では、ある。
真帆 :「ああでも、助かりました……」
紙袋に、もう一度四体のぬいぐるみを入れて、渡す。
そして彼女は、最後に残っていた紅茶を飲み干した。
真帆 :「じゃ、ありがとうございました(礼)」
もう一度、念を入れるように、深深と頭を下げてから、レシートをつまみあ
げて去ってゆく。
かける :「いっちゃった…なんか花澄さんみたいなひとだったのぅ」
その言葉が存外正しいものであるのを知らぬまま、かけるは受け取った紙袋
を確認しながら、そう呟いた。
解説
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クリスマス直前の喫茶店、メープルガーデンでの一幕。
あなたの隣にいるひとも友人の友人かもしれない。世界は狭い。
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蒼空かける kakeru@trpg.net
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