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Date: Fri, 17 Nov 2000 14:25:27 +0900
From: DSSW Miyachi <dssw_miyachi@yasu.screen.co.jp>
Subject: [KATARIBE 21009] [HA06P] エピソード『美味い不味いの問題ではないのだ』
To: kataribeML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <3A14C14799.1264DSSW_MIYACHI@sapphire.screen.co.jp>
X-Mail-Count: 21009
ど〜も。
総統です。
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エピソード:『美味い不味いの問題ではないのだ』
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登場人物
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平田阿戸(ひらた・あど) : 吸血鬼ハンター。嫌なことは極力避けて通りたいらしい。不健康。
本編
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吹利市内某所の診療所。
受付 :「受付表に名前を書かれたら、そちらに掛けてお待ちくだ
:さい。」
平田 :「……」(カリカリ)
病院にいるからといって、斬られたのだろうとか、撃たれたのだろうとか心
配する必要は無い。
いわゆる定期検診というやつだ。ハンターが健康診断などナンセンスだとい
う向きもあるが、これは就業規則にも書いてある大事な行事なのである。
受付 :「ヒラタさーん。ヒラタアドさ〜ん」
平田 :「はい」
受付 :「じゃあ、これを6番窓口に出してください」
平田 :「……」(コクリ)
吸血鬼ハンターという仕事であるからして、狩りにいって逆に噛まれたとい
う事態も起こらなくもない。
すると普段、情け容赦なく狩っている立場の人間としては、隠したり、開き
直って同僚の皆殺しなどを画策しがちだ。
そんなことを避けるために、年に数回の厳正な定期検診が義務付けられて…
………まあ、いるわけだ。表向きは。
医者 :「ヒラタさーん」
平田 :「はい」
医者 :「レントゲンを撮りますのでこちらへ」
とはいえ、規則を形骸化する事に関しては、比類のない力を発揮する日本で
のこと。当初、評議会直属の専用施設による厳密な検診を毎月行なっていたも
のが、担当地区を空ける危険性云々とゴネて(面倒だからだったに違いない)
協会の息のかかった病院での検査でいいことになり、そのうち回数も年に1、
2回になったり、時間が無いときは最寄りの病院で普通に健康診断をうければ
いいことになった。いいかげんなものだ。
念のために言うがゴネたのは私ではないぞ。
医者 :「では、まずこの炭酸の顆粒を口に含んでいただいて、水
:で流し込んでください。ゲップしたら駄目ですよ」
平田 :「はい」(ごくごく)
しかし、吸血鬼というのもよくわからない生き物である。教会のジジイども
の見解では、『肉体は死んでいるのに魂が生きている状態』だという。実際、噛
まれた連中がなるのは大概それで、死斑が出たり、瞳孔が開いていたり、身体的
には死人の特徴を示す。
それにしたって、腐敗は起きないし、死後硬直がはじまるわけでもない。理
屈にあわないではないか。
医者 :「じゃあ、次はバリウムを、一気にぐぐっと」
平田 :(ごくごくご……)
:「ゲホッゲホゲホゲホッ」(ぼたぼた)
(しばらくおまちください)
医者 :「だ、大丈夫ですか?」
平田 :「……ゲップと同時にキた」
半端に固形だから余計にクるのだ。いや、そうではない。吸血鬼だ。
理屈にあわないといえば、誰にも噛まれてないのに吸血鬼な連中である。連
中は少々青白かったりするが死体の特徴は示さない上に、独自の文化みたいな
ものを持っている。
もはやそういう生き物だと思うほか無い。
医者 :「とりあえず、もう一回飲んでください」
平田 :「うむ」(ごくごくごく)
医者 :「では、その台に仰向けになっていただいて、ぐるっとま
:わって、仰向けに戻ってください。」
台の方を回せるタイプに変えろ。貧乏診療所め。
……悪態をついている場合ではない。
そこで疑問が浮かぶのだが、噛まれた奴は健康診断をうけて、到底健康と診
断される事はないだろうが、もともと吸血鬼な奴はどうなのか?
そういえば、件の屋敷には人間とのハーフと、その姉(と呼んでいたがよく
わからん)がいたが、そいつらは全く死体っぽくない。むしろ、私が2階を貸
している奴の妹の方が死体っぽい。
医者 :「はーい。撮りますよー。息を止めてくださいー」
平田 :「……」
医者 :「……はい、終わりました。ゲップしてかまいませんよ。
:これ受付に出してくださいね」
平田 :「(げふっ)……はい」
ひょっとしたら、健康体と診断されてしまうかもしれないではないか。とい
うことは、健康診断なんぞ無駄ではないか。やるだけ損だ。金返せ!(自分の
金じゃないけど)
受付 :「じゃあ、1週間で結果が出ますので診察受けに来てくだ
:さいね」(カリカリ)
平田 :「はい」
受付 :「それでは、お気をつけて〜」
そしたらバリウム飲まなくていいじゃないか。
あんなもの飲み物じゃない!(そりゃそうだ)
あれを平気で飲める奴なんかどうかしているにちがいないのだ。口のまわり
白くなるし、変にぬるい。
………別にバリウム飲みたくないばかりに、変な理屈をこねまわしていたわ
けではないぞ。
時系列
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2000年11月中旬。
解説
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あれだけは苦手です。
あれは飲み物でも食い物でもないと思います。
最近、飲みやすいように甘い味などがついたりしてますが、そんなものはまや
かしです。
……ああ、思い出したくも無い。
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