[KATARIBE 20966] [HA06P] 『そもまたおもしろく』完成版

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Date: Mon, 13 Nov 2000 00:47:21 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20966] [HA06P] 『そもまたおもしろく』完成版 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200011121547.AAA44714@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20966

2000年11月13日:00時47分21秒
Sub:[HA06P]『そもまたおもしろく』完成版:
From:E.R


こんにちは、E.Rです。
あと、これを合わせて二つです。

あ、それと、『飛べない翼に意味はある?』については、
現在流れているものを、完成版とします。

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エピソード『そもまたおもしろく』
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登場人物
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 瑞鶴の猫:傲岸不遜。名前は無い。
 白雲  :仙犬。犬格すこぶる佳し。

本文
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 某日。
 神無月の初め。

 煙るように雨が降る。

 瑞鶴猫    :「…………(大欠伸)」
 白雲     :「…………(ふすん)」

 長の閉店の割に、瑞鶴の前には、あまり埃が溜まっていない。
 この連中がたむろす為なのか、それとも四大のせいなのか。

 瑞鶴猫    :「…………なう(よく降るねえ)」
 白雲     :「おふん(本当に)」

 毛が、細かい雨を含んで重く湿っている。

 瑞鶴猫    :『夏じゃなくて幸いだね』
 白雲     :『……全く(苦笑)』

 雨を見る。
 あたりを薄墨に染める、雨を見る。

 瑞鶴猫    :「…………」

 うっとおしいねえ、と呟きかけて、猫は黙る。

『こんな日も良いね』
『こんな、長雨の日も……こんな季節なら良いね』

 瑞鶴猫    :『…………誰だったかね』
 白雲     :『?』

『ただ、本が濡れるのがねー』
『困りもんよ、この商売』

 そう、笑いを含んで言った声…………

 瑞鶴猫    :『……ああ、先代だ』
 
 客の居ない時に、そっと戸口に凭れて。
 外を見ていた……

 あれはもう、遥かに昔のこと。

 ひとよりも。
 ここを通るひとよりも。
 長く、長く生きようとは……正直思いもしなかったのだが。

『さみしさもまたおかし、だね』
『おもしろきことも無き世もまたおかし』
『さみしと思う我もまた、いとおかし、かねえ……』

 あの時。
 ひともまた、さみしかったのだろうか。

 そっと、喉を震わせて笑う。
 あの日のひとに向って。
 今日の自分に向って。

 瑞鶴猫    :『……互いに、長生きしたかね』
 白雲     :『どうした、急に』
 瑞鶴猫    :『ひとを思うて、なあんとなくさみしいよ』
 白雲     :『ふむ……』

 ぱたり、と。大きな尻尾を一つ振って。

 白雲     :『それもまたおもしろかろう』
 瑞鶴猫    :『…………そうだねえ……』

 虹彩の細く尖った目を、薄く閉じる。
 静かに降る雨の。
 その静けさに。
 そのたおやかさに。

 瑞鶴猫    :「…………(ごろごろと喉を鳴らす)」
 白雲     :「…………(ふすん)」


 ある、雨の午後のことである。


時系列
------
2000年10月初めの週

解説
----
猫又街道一直線の瑞鶴猫と、仙犬の会話。
……なんか、そういう風景です。
BGMは、Mandrin rain(B.Hornsby and the Range) 指定。

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 であであ。


    

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