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Date: Mon, 13 Nov 2000 00:43:40 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20965] [HA06P] 『濃染月深閑』完成版
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200011121543.AAA44509@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20965
2000年11月13日:00時43分39秒
Sub:[HA06P]『濃染月深閑』完成版:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
というわけで、言われるまで気が付かなかった話です(おい
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エピソード『濃染月深閑』
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長かった夏が終わりを告げると同時に、紅い花が咲いた。
佐古田 :「…………」
瑞鶴猫 :「……なう(こんばんは)」
既に周りはとっぷりと暮れている。
ついこの前までまだ明るかった時刻なのだが。
逢魔ヶ刻は、人工の灯りの元で、故意にか偶然にかやたらに引き延ばされる。
佐古田 :「……(懐紙に包んだ煮干を出して、瑞鶴猫の前に置く)」
瑞鶴猫 :「なぁご(おや、ありがとうね)」
佐古田の首からぶら下がったサボテンが、丁度猫の頭の斜め上辺りで揺れて
いる。
瑞鶴猫 :「…………(ふと目を上げて、サボテンを見る)」
サボテン :「…………(汗)」
瑞鶴猫 :「……ふがぅ(まずそうだねえ……)」
佐古田 :「……(僅かに苦笑)」
サボテン :「…………(ちょっと安堵)」
とりあえず餌にならないと見切ったところで、瑞鶴猫は下を向き、また煮干
に集中する。
佐古田(とサボテン)は、その隣に座る。
まだ、人通りは多い。
と。
瑞鶴猫がふいと頭を上げた。
さあ、と、流れる風。
夕餉の時刻の様々な匂いを圧して、一瞬花の馨が鼻腔を突いた。
佐古田 :「……」
猫の視線の先に、見慣れた顔がある。
花澄 :「…………こんばんは」
佐古田 :「…………(目礼)」
長い髪が、風に沿うように揺れて。
花澄 :「餌、ありがとう」
佐古田 :「…………」
ふがぅ、と、猫が欠伸をする。
花澄 :「それじゃ」
佐古田 :「…………(ぺこり)」
微かに笑うと、そのまま歩み去っていく。その姿を何となく見送ってから、
佐古田は横の猫を見やった。
瑞鶴猫 :「……(もっかい大欠伸)」
すう、ともう一度風が吹く。
誘われるように見上げた空に、細い月が一つ、間の抜けた顔で浮いている。
濃染月もほぼ終わりに近づいた、ある宵の風景である。
時系列
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2000年9月末。
解説
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エピソード『拈華微笑』の対にあたる話です。
舞い降りるように過去に戻った者は、やはり舞い降りるように現在へと戻る
のかもしれません。
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であであ。