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Date: Mon, 13 Nov 2000 00:23:47 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20959] [HA06P] 『笹に願いを』完成版
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200011121523.AAA42938@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20959
2000年11月13日:00時23分46秒
Sub:[HA06P]『笹に願いを』完成版:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
そーらゆくぜっ
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エピソード『笹に願いを』
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登場人物
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富良名裕也(ふらな・ゆうや):いつも元気な少年……に見える大学生。
:瑞鶴の猫の餌係。
瑞鶴の猫(ずいかくのねこ):書店瑞鶴に陣取る猫。不必要に態度がでかい。
本文
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某日、某夜。
…というか……七夕の夜。
瑞鶴の猫 :「…………(ごろごろ)」
雨が上がって、日が照って。
夜は多少、それでも過ごしやすい。
寝るには丁度良い……とばかりに、前足に顎を乗っけたときに。
SE :とててててっ
瑞鶴の猫 :「…………(おや)」
くい、と頭をもたげて見やる。
元気良く駆け寄ってくるのは、すっかり餌係、のフラナである。
さわさわと、音を立てながら。
フラナ :「えへへ、もらってきちゃったー(^^)」
瑞鶴の猫 :「………(ふすん)」
瑞鶴の軒下に置いても、不便でない程度の長さの笹。
瑞鶴の猫 :「…………(そう言えばそういう時期だったかねえ)」
確か去年は、瑞鶴の店長が笹を用意したものだ。
その前の年も、そのもっと前の年も。
フラナの持ってきた笹には、既に短冊が数枚ゆれている。
フラナ :「ちゃんと、いつか帰ってきますようにって書いておいた
:よー」
瑞鶴の猫 :「…………」
誰が、の部分は見事に抜けている。
抜けていても通じる……のは、確かにこの一人と一匹だからでは、ある。
見ているうちにフラナは、瑞鶴のシャッターの横の排水のパイプに、くりく
りと笹をくくりつけた。
笹は、さわさわと揺れている。
一緒に短冊も、頼りなく揺れている。
フラナ :「(^^)♪」
瑞鶴の猫 :「…………(へちゃん)」
例えばそれは、幾つかの記憶。
『息災でねー、この駄猫』
こちらの気分を呑みこんでか、手を触れることも無かった相手が、最初で最
後、ぽん、と頭を叩いた古い記憶。
彼女は帰ってこなかった。
『……まー、お前ならちゃんと鼠も取れる、猫も取れる、餌も取れるな』
『…………猫取ってどうするの、お兄ちゃん』
他愛の無い掛け合いの最後に、じゃあ、と、やはりこちらの頭を軽く叩いて
いった兄妹。
傍若無人に生きている。
ちょっと寂しさが身に染みることもあるけれど。
瑞鶴の猫 :「…………(あーゆーのだからねえ、帰るかねえ……)」
それもまた、傍若無人であることの証拠であるから。
傍らでフラナが、口ずさんでいる。
七夕の歌。
フラナ :「……どーしたの?」
瑞鶴の猫 :「……なう(どーもせんよ)」
フラナ :「んーと……あ、今日はちくわだよっ(^^)」
瑞鶴の猫 :「…………なう(ああ、ありがとね)」
星は静かにほろほろとこぼれる。
笹の葉が風に沿って微かな音をこぼす。
七夕の宵の風景である。
時系列
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2000年7月7日
解説
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瑞鶴が閉店して3ヶ月頃の風景です。
考えてみれば平塚兄妹って、七夕の願いくらい蹴飛ばしてどこかに
行きそうな、傍若無人な連中なんですなあ……
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であであ。