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Date: Mon, 13 Nov 2000 00:20:52 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20958] [HA06P] 『破れ傘』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200011121520.AAA42764@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20958
2000年11月13日:00時20分51秒
Sub:[HA06P]『破れ傘』:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
作業は一気にやるべし(なぞ)
というわけで。
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エピソード『破れ傘』
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登場人物
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富良名裕也(ふらな・ゆうや):大学生に見えない大学生。瑞鶴の猫の餌係。
風見アパート在住。
八神 敦(やつかみ・あつし):食欲魔人な錬金術師の大学生。風見アパート在住。
瑞鶴の猫(ずいかくのねこ) :瑞鶴軒下に住む猫。傍若無人。名前は無い。
本文
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某日。
霧雨である。
この雨の尽きた後には、夏が来る。
瑞鶴の猫 :「…………(大欠伸)」
SE :……がたん
じとりと、肌にまつわるような雨が降る。
時折、湿った風が吹きつける。
瑞鶴の猫 :「…………(不機嫌)」
SE :ぼふっ
それでも、軒の下、一番濡れないところに陣取ってはいるのだが。
不機嫌のネタは、もう一つある。
SE :ばさっ
破れ傘である。
昨晩、どこぞの酔っ払いが軒下に蹴込んでいった、骨の折れた傘。それが、
風の吹きつける度に閉じられたシャッターにぶつかっている。
瑞鶴の猫 :(…耳障りだねえ)
かといって、傘を排斥する気にもならない。
瑞鶴の猫 :(あの、小さいの来ないかねえ……来たら片付けさせるん
:だけどねえ)
ちなみに、『ちいさいの=フラナ』である(おいおい)。
SE :ぼふっ
瑞鶴の猫 :「………(首を上げて、睨んでいる)」
そこまで気になるならば、引っかかっている店の角から、傘の骨を一本抜い
てやれば良いのだし、それが出来ない猫でもない……のだろうが。
そういう作業は人にやらせるもの、と、達観している節がある。
と。
フラナ :「こんにちはっ」
瑞鶴の猫 :「なう(おや来たかい)」
フラナ :「せんぱーい、こっち、この猫」
八神 :「ふうん」
あまり見なれない、小さいのよりは大きい人間。
フラナ :「ほら、薩摩揚げだよ」
瑞鶴の猫 :「………(ふすん)」
如何にも当然、という顔で食べ出すあたり、見事に愛想が無い。
SE :ばさっ
フラナ :「?」
八神 :「傘やな」
……沈黙。
瑞鶴の猫 :「なうっ(ええい気の効かないったら)」
フラナ :「ん?どうしたの?」
瑞鶴の猫 :「なおうっ(頭をぶんと、傘のほうに振る)」
八神 :「………傘?」
フラナ :「え、どうするの?」
瑞鶴の猫 :「…………(ええいっ)」
すっくと立ちあがり、そのまますたすたと傘に近づく。引っかかっていた骨
を前足でちょいと引っかくと傘は外れ、折からの風に吹き飛ばされていった。
瑞鶴の猫 :「………(ふすんっ)」
でん、と薩摩揚げの前に陣取りなおす。
フラナ :「もしかして、僕らに取って欲しかった、あの傘?」
瑞鶴の猫 :「なうっ(当たり前じゃないかいっ)」
八神 :「……この猫わ……」
当然、という顔のまま、猫は薩摩揚げにとっくんでいる。
2名揃って何となく、シャッターへと視線を移す。
先刻まで引っかかっていた破れ傘が、道の端で力尽きてへたりと崩れている。
シャッターには、すっかり埃が溜まっている。
瑞鶴の猫 :「なう(ごちそうさん)」
いつの間にやら薩摩揚げを食べ終えて、猫が丸くなっている。
フラナ :「この顔してるときには、機嫌が良いんだよね?」
八神 :「ん?」
フラナ :「ほら、目が三日月になってる」
瑞鶴の猫 :「………(大欠伸)」
季節はどんどんと変わってゆく。
夏が、手の届くところまで近づいている。
時系列
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2000年6月終わりから7月初めにかけて
解説
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瑞鶴の軒先の一風景。
しかし……邪魔くさいものを人に取らせようとするあたりが瑞鶴の猫である。
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というわけです。
であであ。