[KATARIBE 20911] [HA06N] 小説『目を開けて思い出すこと』

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Date: Sun, 5 Nov 2000 06:34:05 +0900 (JST)
From: gallows <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20911] [HA06N] 小説『目を開けて思い出すこと』 
To: kataribe-ml@trpg.net
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2000年11月05日:06時34分05秒
Sub:[HA06N]小説『目を開けて思い出すこと』:
From:gallows


久しぶりに書いてみます。

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小説『目を開けて思い出すこと』
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登場人物
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坂本麻依子(さかもと・まいこ)
    :歌を唄うことが好きな大学生。事件当時19歳であった。

里見鏡介(さとみ・きょうすけ)
    :死人使いの青年。その行動基準は不可解なことが多い。

本編
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「目を開けてごらん」

 最初に見えたのは蝋燭の火。記憶が曖昧だ、私は誰だったか。
 ……まいこ……そうだ麻依子だった。顔も見たことのないパパがくれた名前
だ。他にも何か思い出せないものかな。記憶がないのは自分がどこに立ってい
るのかもわからないようなものだ。あるいは落下しつづけているのかもしれな
い。いずれにしろ気分が悪い。
 そういえばさっきの声は誰の声だっけ? 蝋燭の火以外になにか見えないか
と周囲を観察する。最初ぼやけていた視界は徐々に収束し、蝋燭を持っていた
のが赤茶けた髪の貧相な男だったことがわかる。ああ、好みじゃないなぁ。
 そんな私の感想など知る由もなく、男は話し続けた。男は慎重に言葉を選び
つつゆっくりと話している様子だ。だが、その間にも徐々に徐々に様々なこと
を思い出してきた。真っ黒な液体の中からぷかぷかとゴミが浮かび上がってく
るような様相だ。浮かんできた雑多なものたち。家族の事。愛すべき歌。自分
だけのどぶ川。めんどうな事。死ぬ時の感触。

「……というわけで、君に第二の人生を歩んでもらおうと思う。僕達はちょっ
とした手助けをさせていただくだけだ。君の自由意志は保証しよう」

「私、結局殺されましたか。まったく御苦労な話で」

 やや吐き捨てるように言ってみた。八つ当たりの一つくらいさせてくれても
罰はあたるまい? そして私はすっかり思い出す、ここは本当にけったいな世
の中でしたっけね。

解説
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 坂本麻依子復活の日。そして里見鏡介との出合いの日。
 里見の家の狙いは不明なままである。

時系列
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 秋もそろそろ終わりを迎えそうなある日。

$$



    

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