Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Fri, 22 Sep 2000 17:46:24 +0900 (JST)
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20665] [WP01P] エピソード『出会い』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200009220846.RAA99703@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20665
2000年09月22日:17時46分23秒
Sub:[WP01P]エピソード『出会い』:
From:ソード
こんにちは、ソードです。
過去のネタをEPにしようと思い、まずは睦美さん。
久志さん、睦美さんと神の子を借りております。
***************************
エピソード『出会い』
====================
登場人物
浅生睦美(あそう・むつみ):
: 狩人を胎の中に宿す女性。
まつろわぬ神の子:
: 睦美のまだ生まれていない胎児。終末の狩人。
月島直人(つきしま・なおと)
: 喫茶「月影」の店主。終末の住人。
逃亡
----
ある日の午後。まだ日は高く、雲一つ無い青空は普段よりも高くあるようにす
ら見える。
睦美 :「はぁ……はぁ……はぁ……」
睦美は息を切らせて走っていた。3ヶ月の胎児を宿す母体としては、好ましい
状況とはいえない。
睦美 :(ど……どうして……)
後ろも振り向くと、ヤツの姿は見えない。あの角を曲がれば、逃げ切れる……。
睦美 :「っ!」
角を曲がる直前に、睦美は立ち止まった。建物の角から、人影が現れる。
服は薄汚れてところどころ破れ、顔の半分は腐り落ちて白骨が覗いている。
睦美 :「……」(ふら……)
そこで、睦美の意識は途切れた。ひざが力を失い、地面に倒れ伏す。
キンッ
軽い金属音。睦美を狙っていた人影の前から、睦美の姿が消える。
消えた睦美は、ゆっくりと何かに支えられるかのように、誰もいない街角に倒
れ込んだ。
結界……と、この現象を知る者はそう呼ぶ。現在の空間のわずかに過去を繋ぎ
止めた別の世界。そこには、同じ能力を持つもの以外は入り込むことは出来ない。
− ここならば…… −
安堵の意志。睦美の身を守る意志をその胎内から感じることが出来る。
人影 :「グ……」
現実世界から、腐りかけた人影の姿が消えた。
− ! −
横たわる睦美の目の前に、人影が現れる。
人影 :「クウ……」(睦美に手を伸ばす)
− させぬ…… −
ゴウッ
睦美の周囲に疾風(かぜ)の壁が巻き起こり、人影の伸ばした手をはじく。
睦美 :「う……」
苦痛に顔を歪める睦美。胎内からの力の行使は、一般の人としての素養しか持
たない母体には負担が大きすぎる。
疾風を弱めざる得ない神の子に、ゆっくりとではあるが確実に人影の手が伸び
る。
援軍
----
SE :カラカラン
人影 :「グ?」
突然、道に面した喫茶店の扉が開いた。結界の中には、作成者が呼ばない限り
それを作ったものと同種の能力を持つ者しか存在はしない。
− 新手か…… −
直人 :「この場合、見た目で判断してもよさそうですね」
扉から出てきたのは喫茶店の店主であろう服を着た20代半ばの男。かけていた
眼鏡を取ると同時に、その左の瞳が銀色に光り出す。
人影 :「カギ……ジュウニン」(直人の方に振り向く)
直人 :「そのような姿でも、堕とし子は堕とし子のようだな」(地
:面に手をつく)
人影 :「クウ……」
直人 :「堕ちろ!」
直人の左目の輝きが増した瞬間、人影の足下のコンクリートが深く抉れる。
バランスを崩して倒れる人影の上から、抉れたはずの地面が再構成され、人影
を飲み込んで行く。
人影 :「ク……グ……」
首以外を地面にからめとられ、身動きの取れない人影を見下ろし、そしてその
頭にゆっくりと手を添える直人。
直人 :「さよなら」
人影の頭ははじけとび、地面は元の姿を取り戻した。
対話
----
直人 :「結界は消えない……やはりこの人が……?」
倒れている睦美の方へ向かう直人。
その周囲を疾風が取り巻く。
直人 :「私は貴方に危害を加えようとは思いません。せめて日影に
:居た方が良い」
疾風は弱まり、直人は睦美を抱き上げた。
そのまま店に入り、長椅子に寝かせる。
睦美 :「んっ……」
ざわっ
睦美が起きた途端、彼らの周囲に新宿の雑踏が戻ってきた。
直人 :(結界が解けた? 無意識のみの結界か?)
睦美 :「あ……わたし……?」
直人 :「どうやら、日に当てられたようですね。店の前で倒れてら
:したので……」
睦美 :「あ、ごめんなさい……」(体を起こす)
直人 :「大丈夫ですか?」
睦美 :「はい。ここは?」
直人 :「喫茶・月影です。ただの喫茶店ですよ。コーヒーか紅茶は
:いかがです?」
睦美 :「じゃあ、紅茶を」
直人 :「はい。今日は、良いものが入ったばかりなんですよ」
そのまま、カウンターの奥に行く。
いつものように念を入れて紅茶を入れる。
睦美 :「いい感じのお店ですね。なんか……あったかくて」
直人 :「ありがとうございます。はい、どうぞ」
睦美 :「あ、どうも。(一口つけて)わぁ……おいしい……」
直人 :「それは良かった」
直人の疑問は胸のうちに隠したままで笑顔を見せる。
午後の日だまりの中、神の子は安心して眠りに就き、睦美は新たな店に出会っ
たのだった。
時系列
------
解説
----
直人と睦美が出会う話。睦美はこの時から月影の常連になる。
***************************
以上です。
何時ごろの話だったか忘れてますので、季節はぼやかせてあります。
何時ごろが良いでしょうか?
ではまた