[KATARIBE 20633] [HA06P]: エピソード『穴場の店』 ( 完成版)

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Date: Mon, 18 Sep 2000 23:51:55 +0900 (JST)
From: 灰枝真言  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20633] [HA06P]: エピソード『穴場の店』 ( 完成版) 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200009181451.XAA30590@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20633

2000年09月18日:23時51分54秒
Sub:[HA06P]:エピソード『穴場の店』(完成版):
From:灰枝真言



 では。完成版も投げよう。

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エピソード:『穴場の店』
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登場人物
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 燕彩花(ヤン・ツァイファ):
   :空きっ腹女子大生。ときおり行動がケダモノなみ。
 末夜雅俊(まつや・まさとし):
   :彩花の兄弟子。今回は足代わり。

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なんだかうまそうな店
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 美味そうな店が、あるという。
 繁華街から外れた、少し判りにくい場所だという。
 本格的な、インドカリーの店だという。

 彩花    :「晩ゴハン」
 末夜    :「うむ」

 出した右手の中にサイコロが握られていた。高い目を出せば勝ちであり、
負けたものが晩飯を作る。以前はじゃんけんで決めていたのだが、たぬき
がチョキを出せないことが発覚して後、現在の方式となった。
 だが今晩、彩花はサイコロを(何故か12面だ)傍らに置いた。
 そしてきっぱりと言う。

 彩花    :「外でゴハン」
 末夜    :「ふむ?」
 彩花    :「おいしいカレーが食べたいヨ」

 美味そうな店があるという。
 街に出るたびに、そっちから気になる匂いがするのだという。
 スパイスの香りが、堪らないのだという。

 末夜    :「で、場所は?」
 彩花    :「わかるネ」
 末夜    :「ふむ。行くか」

 そういうことに、今晩はなった。
 たぬは自炊だ。


なんだか一味ちがう店
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 末夜    :「それは……何か変でないか?」
 彩花    :「でも、ヤキソバ屋さんも同じ所にあるネ」

 峠道を下る車の中で、彩花がそんなことを言い出した。

 末夜    :「ヤキソバくらい、普通につくるだろうが」
 彩花    :「一月もヤキソバ食べつづける人、いないヨ」
 末夜    :「ふむ」
 彩花    :「きっとヤキソバもやってるネ。そっちも食べるネ」
 末夜    :「おい」

 やがて街へ。道を尋ねる末夜に、彩花、車の窓から顔を突き出す。

 彩花    :(くんくん)
 末夜    :「おい」
 彩花    :(くんかくんか)
 末夜    :「何してる」
 彩花    :「こっちにまっすぐネ!」(ビシッ)
 末夜    :「……民家は突っ切れん」

 末夜、だまって車を路駐にかかる。
 予想しておくべきだったと、腹の中で思いつつ。

 匂いをたどり、迷うこと二十数分。目的の店に辿り着いた。
 二階の窓からスパイスの効いた、インドカリーの匂いがしていた。
 そして一階からはヤキソバの香り。
 壁に蔦の絡まった、重厚な見かけの店だった。
 表に小さく、表札があった。

 一階、『日本聖書協会吹利支部』(不確定名:ヤキソバ屋)。
 二階、『比企鐘継探偵事務所』(不確定名:インドカリー屋)。

 末夜    :「おい」
 彩花    :「……アレ?」

 首をかしげる彩花。

 末夜    :「店とちがうようだな」
 彩花    :「こういう名前のレストラン……」
 末夜    :「んな訳あるか」
 彩花    :「……だってどっちもイイ匂い(うるうる)」

 彩花が切なそうに、窓に大きな瞳を向けた。
 涼しい夜風に乗って、美味そうな香りが流れていく。

時系列
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 2000年6月ごろ。ある涼しい夜のこと。

解説
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 なんだか食い意地の張った日常です。

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 それでは〜。

 灰枝でした。







    

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