[KATARIBE 20632] [HA06NJ] 「秋空一閃」

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Date: Mon, 18 Sep 2000 23:27:39 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20632] [HA06NJ] 「秋空一閃」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200009181427.XAA29117@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20632

2000年09月18日:23時27分39秒
Sub:[HA06NJ]「秋空一閃」:
From:E.R


こーんにちは、E.R@いんさつーーです。
みなさまこんにちはー

ちょっといんちきというかなんというか。
この前、へろへろ歩いていて思いついた某風景。
丁度時間があるので、文章にしてみました。
06にして06にあらず。
でも、お久しぶりのこの二名です。

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秋空一閃
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 たとえば。
 綺麗だなあ、と、感嘆する声が火を放ってしまうこと。

「昔、それが悔しくって、空めがけて綺麗綺麗って連発したことがあるんです」
「……へえ」
 言った内容よりも、よほどほわんとした口調に思わずそちらを見ると、自分
より二十歳近く年下の少女は、どこか悔しげに口元をゆがめた。
「そしたら、その夜、何か流星群が来たみたいに空が光って」
「…………」
「えっらい怒られました」
「……そうだろうなあ……」

 長々と……よく考えてみたら、生まれてからこれだけ一箇所に留まったこと
はない……住んだ街から出て、既に半年が経つ。
 従弟と、その友人たちと、妹と。
 何よりも、逆らいがたい面々と。
 
 全ての脈を繋ぎ、全ての流れを息吹き返せ、と。
 その後に何がくるのかは……正直なところ、未だにわかってはいないのだが。

「でも、悔しいです」
 買出しの白いビニール袋を持ち替えながら、少女……火夜はぽつんと言う。
「こんなに世界は、綺麗なのに」
 夏の終わりにぐずぐずとした天気が暫く続いたが、今はすっかり秋晴れの空
が頭上に広がっている。
「こんなに綺麗なのに」
 何とはなしに、口調のどこやらに不穏なものが見え隠れするのは……気のせ
いだろうか。
「言おうかな、言いたいな、うわあき」
「こらまてっ」
 口から出る寸前の空気を固体化し、その波を止める。咄嗟にやってから、こ
れは思いっきりすねることだろうと覚悟したが。
「……すみません」
 存外あっさりと、火夜は謝った。
「いや、いいけれども」
「でも、時々、ああ悔しいなー、って思うんです」
 ふわん、と、空を見ながら。
「瞭なんていくら言っても、大丈夫なのに。私は感動しても、言葉を止めない
といけない」
 すう、と、溶けるように。
「感動なんて、空見るだけで充分なのに」


 火夜。
 妹同様、四大の加護の元に居る者。
 感動を言葉にする度に、その対象に向けて発火能力を振るってしまう者。
 非常に……ある意味、厄介な……


「そういう話してたの?」
「うん」
 夕食の後、コーヒーを持って妹が部屋にくる。翌日のことを話しながら、ふ
と先程のことを言うと、妹は首を傾げた。
「にーさん」
「え?」
「それで、火夜ちゃんに何て言った?」
「……いや別に」
「気が効かないなあ……」
「お前に言われると、悲しみが増すな」
 だって、と、ラム酒入りのコーヒーを片手に、妹は肩を竦める。
「そういうときは、火夜ちゃんの感動が、世界を動かすくらい大きいんだ、っ
て言ってあげれば良いのに」
「……そういう見方もあるか」
「そう」

 世界を。
 世界を、動かす。
 世界に対して、作用を及ぼす。

 その中で、自分を保ちながら、けれども打って出るのには、本当に力が要る。
 己を律するだけならば良い。けれどもそれ以上、今までの枠以上に動く積り
でいるならば。
 ……力が、要る。

「……花澄」
「ん?」
「お前が思いついたんだから、お前が言うのが筋だろ」
「……そーかもしれないけど」
 タイミングが合わないのよ、と、小さく呟いて。

 自分を律するのに、ひとつ。
 世界に向かって、動くのに、ひとつ。

「感動二倍必要だよね」
「…そう言われればそうだろうな」
「そう思うと、火夜ちゃん凄いわ……」
「……確かに」

 たとえ、それが。
 感動した相手に火を放ってしまう力であっても。
 
 火を放たねば留まらないほどの感動が、彼女の中にあるのならば…………

「護って、あげなきゃね」
「……うん」
「頑張ろう」

 まだカップに半分残っているコーヒーに、ラム酒をこぽんと継ぎ足して。
 妹はうっすらと笑った。


***********************************

 いじょ。

 うん、いっくら強くても、ひとつじゃ足りない。
 ふたっつ、欲しい。

 今実感してます、実は(苦笑)

 ……うう、めしくってくって、たいへんだねえ(おおなぞ

 であであ。


    

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