[KATARIBE 20629] [KMN] 「世の中の流れなんて」

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Date: Mon, 18 Sep 2000 22:40:17 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20629] [KMN] 「世の中の流れなんて」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200009181340.WAA26952@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20629

2000年09月18日:22時40分17秒
Sub:[KMN]「世の中の流れなんて」:
From:E.R


こんにちは、E.R@もーへろへろです。

ふっと時事ねた。
ぷりんたーまちの間にさーかくぜっ(おい

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「世の中の流れなんて」
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 会社の食堂で、昼の定食を頼みながら。
 ふっと、気がつくこと。

「……あれ?」
「ん?」
 諸橋さんが首をかしげる。
「どうしたの?」
「…………そういえばオリンピックでしたっけ?」
「……」
 がっくりと、諸橋さんは前にこけてみせる。
「そーですよー」
「…全然、気がついてませんでした」

 テレビがない。
 今流行りのインターネットも、職場ではそれなりに使うけれども、自宅にはな
い。
 新聞も、昔は取ってみたけれども、一月三千円は……今の生活では結構厳しい。

「……ほかの国ならわかるけどさー」
 お盆を手に持ちながら、ぶちぶちと諸橋さんはつぶやく。
「この、お祭り大好きの国にいて、よく知らないでいられるよね」
「……そうでしょうか?」
 
 オリンピックを知らなくっても、知り合いが騒ぎに巻き込まれないってわかっ
てるし。
 それよりは、ここ数日の雨のほうが、私には心配だ。

 ……橋を護る姫達は、無事だろうか……

 世界は、どんどん変化する。
 それでいて……新聞やテレビが四六時中必要なくらいに、変化が激しいわけで
もないから。

「テレビも新聞もないなら、確かに知らないかもしれないね、そらあ」
「諸橋さんは、テレビ見てるんですか?」
「うち?無いわよ。あ、ただ開会式のときは、丁度実家に戻ってたから見たけど
ね」
「ご実家に?」
「丁度、敬老の日だったし」

 ああそうか、と、ちょっと納得した。

「……でも、そういうのもいいよね」
「え?」
「ほら、世の中の流れに逆らうんだ、って握り拳やるのもいいけどさ」
 くふ、と、小さく笑う声。
 ……自嘲?

「自然に歩いてたら、世の中と食い違ってるのって、なんかいいな」
「……そう、なのかな」

 そうなのかな。
 そういうものなのかな。

「……時々、怖いけどね」

 二十世紀最後の祭典、と、テレビはことさらめかしてオリンピックを飾る。
 
「……しーかし」
「え?」
「ふっと気がついたんだけど」
 最後のお味噌汁を飲み干して、諸橋さんが小首をかしげる。
「オリンピックっていつまでやってるのかね」
「…………さあ……」
「……締め切り前に、終わりそうな気がするんだよねえ……」
「う」

 隣の席のやはりバイトの女性が、聴きつけて首をひょっと竦める。

「もーろはしさん、それいいっこなしにしてー」
「あははっ」

 世界は流れる。
 世界は停滞する。
 世界は変わる。
 世界は変わらない。

 ……ああなんてわかりにくくて、複雑な世界なのだろうここは。
 何年、何百年と生きてきても。

「さてご馳走様でした」
 そう言って、諸橋さんはひとつ手を合わせた。

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 というわけです。
 ……実話かなりかなり。
 
 というわけで、半時間足らず話です。
 であであ〜(ううしんどいのう)


    

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