[KATARIBE 20280] [KMN] 『子安人形』

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Date: Wed, 26 Jul 2000 15:07:52 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20280] [KMN] 『子安人形』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200007260607.PAA95540@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20280

2000年07月26日:15時07分52秒
Sub:[KMN]『子安人形』:
From:久志


 久志です。
さくっとKMな話を書いてみる(即興)

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『子安人形』
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登場人物 
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 蓮(れん):子安人形の妖怪。約束により、妹の娘梨衣を守護する。
 三浦梨衣(みうら・りい):蓮の守護者、牧子(故人)の子供。元気娘
 佐藤勇雄(さとう・いさお):牧子の父、同居している。

本文 
---- 

 良い子を授かりますように。
 義姉妹としてこの子をお護りくださるように。


「梨衣ちゃーん、あーさでーすよぉ」

 カーテンを開けると外はもうすっかり明るい。今日は快晴、ここのお
家は東向きのお部屋なので、朝一番にお布団を干さないとすぐ日が遠く
なってしまう。

「ふにゃぁ……」
「お布団干しちゃうから、起きてね。朝ご飯もさめちゃうよ」
「にゃあ、蓮ちゃんおはよー」
「おはよ、ほらお顔洗っておいで、アイスココア作ってあげるから」
「はーいっ」

 とてとてとまだ眠そうな顔をこすりながら洗面所へと歩いてく。ぱぱっ
とシーツを外して、外の物干しにお布団をかけて。
 梨衣ちゃんが台所に来るまでにアイスココアを作ってあげなきゃ。照く
んは先に昨夜の残りのご飯と肉じゃがを食べてでかけちゃったから、あと
寝ているのはお義父さまだけ、でも今日は館長をしている美術館は休館の
日だからゆっくり寝かせておいてあげよう。

「おはよう、蓮」
「あ、おはようございますお義父さま。今日はお休みだからもっとゆっく
り寝ていればよかったのに」
「いあ、眠りが浅くてね、梨衣ちゃんはもう起きたかい?」
「梨衣ちゃんは今お顔洗って来てます。お義父さまの朝ご飯も準備してき
ますねっ」
「ありがとう、いつも……」

 弱った右足を少し引きずるようにして、歩いていくお義父さま、すっか
り白くなってしまった髪に、すっかりやせ細くなってしまった手。心なし
か笑った顔もどこか遠くを見ているようだった。


 昔、中国の地方であった子宝祈願の言い伝え。
 奉納殿に奉られた子安人形。子供を望む夫婦は赤い紐をつけて縁結びと
し一つ人形をもらい受ける。首尾よく子供に恵まれたあかつきには、御礼
として新な人形を奉納し、もらい受けた人形は、着物と靴を与え。毎日、
お茶と食事を供え、家族の一員として実の子のごとく遇する。その人形は
生まれた子供の守護者であり、兄、姉としてその子が結婚するまで護ると
いう。

 私が牧ちゃんの姉になった頃のお義父さまの姿は今でもちゃんと覚えて
いる。肩車が大好きだった牧ちゃんを抱き上げて、疲れた様子も見せずに
遊んであげていた。
 小さな牧ちゃんは今の梨衣ちゃんにとっても似ていて、時々今も牧ちゃ
んと遊んでいた頃のことをふっと思い出す。でも、お義父さまはもう肩車
をしてあげることはできないんだな、と思う。


「いただきまーすっ」
「はい、召しあがれ」
 食卓には梨衣ちゃんと私とお義父さま。昨夜の残りで作ったほうれん草
のバター炒めとご飯、お味噌汁。なんでも好き嫌いしないのがお転婆梨衣
ちゃんの取り柄。
「あのねっ!蓮ちゃん、今度学校宿泊あるでしょ」
「こーら、食べてからしゃべらなきゃだめでしょ。再来週、学校でお泊り
してカレーを作るんだよね、プリントで見たよ」
「うんっ、それでねお泊りの時にみんなで校庭でお星様をみようって話し
てたの」
「そう、校庭の真ん中あたりで見れば、よく見えるかもしれないね」
「うん、こないだおじーちゃんが買ってくれた本に星座いーっぱい載って
るから、みんなで見てみるのっ」
「ああ、全部読んでくれたのかい。今は織女星と牽牛星が良く見えるから、
そうだね、星座早見盤でもあればいいんだけど」
「おじーちゃん、せいざはやみばんってなぁに?」
「星座早見盤はね、何月何日の何時頃にどの方向に星座がどんな風に見え
るかというのがわかる道具なんだよ」
「いいなっ星座早見盤欲しいっ、お星さま見るの」


 梨衣ちゃんが星を見るのが好きになったのは、牧ちゃんが死んですぐの
頃の事だった。まだ幼稚園の年少さんの時、泣いている夜に梨衣ちゃんを
おぶって、梨衣ちゃんが泣きやんで眠るまで、ずーっと一緒に星を見なが
ら外を歩いた。
 梨衣ちゃんが大きくなってからも、時々夜に一緒に星を見る。


「お義父さま、星座早見盤どっかで売ってたかな?」
「さあなあ、どこで聞けばいいのか、ちょっとわかりづらいかもしれない」
「文房具……じゃないよね、本屋さんもちょっと違う気がするけど、今日
ちょっと探してみようか?」
「うんっ、学校終わったらすぐ帰ってくるね!」
「それじゃあ一緒にお買物ついでに探しにいこうね。そろそろ歯磨いてお
出かけしないと学校に遅れちゃうよ」
「はぁい」


『蓮ちゃん、あの子を……お願い』

 牧ちゃんとの約束。

 ぱたぱたと、牧ちゃん譲りの少し色の茶色がかった長い髪を揺らしてラ
ンドセルを抱えてくる梨衣ちゃん。

 いつか、梨衣ちゃんがお嫁にいく日まで。

「蓮ちゃん、おじーちゃん、いってきまーす」
「ああ、気をつけてね」
「いってらっしゃい、あんまり走って転ばないようにね」
「はーいっ!」

『梨衣を護って、約束よ』

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いじょ

 即書きよくないねー
よみかえせよ、書きながら(^^;)

 で、いーさん。本屋さんに星座早見盤ってありますかー?(おーい)


    

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