[KATARIBE 20109] [ICN] :「陽光……無限都市」(暫定)

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 11 Jul 2000 23:26:28 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20109] [ICN] :「陽光……無限都市」(暫定) 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200007111426.XAA20690@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20109

2000年07月11日:23時26分28秒
Sub:[ICN]:「陽光……無限都市」(暫定):
From:E.R


こんにちは、E.Rです。
ふっと浮かんだ、無限都市ネタ。

暫定状態、というわけで書いてみました。

**************************************
陽光……無限都市
================

 繰り返し、走ってゆく。
 繰り返し、繰り返し。
 高く嗤いながら、走ってゆく。

 走ってゆく。
 夕日の色の火の車に乗って。


 タワーの上で、あたしは夕方を迎えることにしている。そこが一番、空を見
上げるのに似合っているからでもあるし、何よりも沈みかける夕日とその及ば
ない領域との狭間から、走り来る火の車が良く見えるからでもある。
 タワーの上部を掠めるとき、火の車はほんのちょっとだけスピードを落とす。
 その隙に、あたしは車の戸口に手をかけて、乗りこむ。
 があ、と悲鳴を上げたいほどの熱さに、手を離せばその日は負け。どうせそ
のまま屋上に落ち、コンクリートの上で多分西瓜のように……あたしが見える
わけではないけれども……はじけるだけのこと。
 でも、それが上手く行った時には。
 あたしは、火の車の中に、転がり込む。

 ぽっぽーと。
 乗りこんだあたしに、火の車は挨拶する。
 ひどくのどかな声で。

 焼け焦げてゆく指で、あたしは火の車の中を探り、細い糸……いや、針金を
引っ張る。
 きいん、と、ちぎれるような……冷たさに似た熱。
 膝は、すぐに砕けてしまう。

 ぽっぽーと。
 挨拶のための汽笛が鳴る。


 窓の外に顔を出してみる。
 あたしの髪は、赤金色に色を変えながら、ざらりと外の風に揺れる。
 火花のように見えるかと思うと、あたしは何となく満足する。

 ぽっぽー。

 髪をかきあげようとした、その指が、焼け焦げ崩れて動かない。

 ぽっぽー。

 陽光はどんどんと滅し、そのまま闇へと堕ちてゆく。

 ぽっぽー。

 そらのこちらには、赤錆色の月。


 おかしくって、あたしは笑う。
 もう、腹の底から身を震わせて笑う。
 笑える唇が残る間に。

 ぽっぽー。

 多分それは、火の車の笑い声。のどかで、太くて、少しかすれるようで。
 太陽の、その光の名残のように。
 
 ぽっぽー。

 笑いながら、落ちてゆく。
 落ちてゆく。暗闇の中へ。
 落ちてゆく。繰り返し繰り返し。
 
 …………尽きることの無い、無間の闇の中へ。


 ここは無限都市。
 繰り返し、あたしたちは生きかえる。

 ここは無限都市。
 嗤いながら、あたしは今日も火の車に乗る。


 ぽっぽー。


*******************************************

 というわけで。
 書いてみました。
 ……すさまじく陰惨な気がする(滅)
 
 イメージは、「恋は桃色」という歌の中の、一節です。

 であであ。



    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage