[KATARIBE 20066] Re: [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆』編集版 1

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 9 Jul 2000 22:28:36 +0900 (JST)
From: 銀佳  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 20066] Re: [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆』編集版 1
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200007091328.WAA17451@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <200007091321.WAA17186@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200007091321.WAA17186@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 20066

2000年07月09日:22時28分35秒
Sub:Re:  [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆』編集版 1:
From:銀佳


 銀佳@これで最後っ です。
 残りの部分を流します。
 悠視点の部分を、大幅に書き換えました。

**********************************************************************

ボロ布とチーズで作れます
------------------------
 2時半、会場裏楽屋。

 璃慧     :「ふうっ」

 璃慧は、軽く練習をしたあと、しばし小休止を取っていた。
 直前と言うこともあり、皆思い思いの行動をとっている。

 楽譜を見て頭を抱えたり、璃慧のように直前に練習をしたり、
 周りの者と雑談をしたり、楽器を磨いていたり、
 椅子に座って休んでいたり、こちらに向かって手を振ったり……あれ?

 璃慧     :「……え?」

 璃慧は目を凝らした。
 オケラ部員の中に混じって、こちらに手を振っている人影が居るのだ。
 壁によりかかり、休んでいるようだ。
 トレーナーとジーンズ、肩からかけたスポーツバッグ。
 真ん中で軽く分けた黒髪、何となくこちらを小馬鹿にしたような目つき……。

 璃慧     :「………………」

 璃慧は黙って立ち上がると、その人影の所につかつかと歩み寄った。
 全く、何でこんな所に……

 璃慧     :「兼澤くんっ!」
 圭人     :「おお、気づいた気づいた」
 璃慧     :「何が、気づいた気づいた、だよっ。
        :なんでこんなところにいるのっ!」
 圭人     :「いや、何となく近くまで来たから、
        :冷やかしに来てやっただけだが」
 璃慧     :「……(じとーっ)」
 圭人     :「どした?」
 璃慧     :「……お前って、ボロ布とチーズを瓶に詰めたら、
        :生まれてくるのか?」
 圭人     :「………俺はネズミか?
        :だいたい、自然発生説はずいぶん前につぶれたろうが」

 悪態に馬鹿正直に受け答えするない(笑)

 璃慧     :「ったく……。
        :ほら、さっさと出た出た」(入り口の方に追い立てる)
 圭人     :「つれねえなあ。ま、後でまた来てやるけど」
 璃慧     :「……チケット持ってない人は
        :入れないんだけどなあ(邪笑)」
 圭人     :(黙って半券を見せる)
 璃慧     :「……」
 圭人     :「他にも何人か来てっから、後で紹介してやるよ」
 璃慧     :「……誰をよ」
 圭人     :「俺ら以外の能力者」
 璃慧     :「……!!」
 圭人     :「ま、うちのがっこの奴と、弟だけどな。それじゃ」
 璃慧     :「…………」
 圭人     :「(振り返る)あ、そうそう」
 璃慧     :「……何?」
 圭人     :「気持ちよく寝れるような曲にしてくれよ」
 璃慧     :「うるさいっ!(げしっ)」

 黒のロングスカートがひらひらと揺れて。
 正装だろうがお構いなしに反射的に動く足。
 何もこんなところでまで漫才をおっぱじめなくてもいいと思うのだが(苦笑)

 璃慧     :「(あははっ)」

 でも。ちょっとだけ、緊張がほぐれた……かもしれない。

 璃慧     :「いいからさっさと出てくっ!」

 圭人は、脱兎のごとく逃げ出した。


葉月の面々、揃いも揃う
----------------------
 楽屋の方から、圭人と、もう一人の少年が歩いてくる。
 圭人の相棒、滝川健一である。

 圭人     :「(ぶつぶつ)ったく……、蹴らなくてもいいじゃねえか」
 健一     :「修羅場に入るおまえが悪いと思うがなあ。
        :しかし、あの子たちが……」
 圭人     :「…………」
 健一     :「おまえの命の恩人ってわけか」
 圭人     :「……うるさい(汗)」
 健一     :「後できちんと紹介してくれよ」
 圭人     :「(ぼそっ)下心が見え見えだぞ……」

 ………………

 健一     :「さあ、さっさと席に戻るぞ。
        :岩崎さんに席をキープして貰っているんだから」
 圭人     :「……ごまかしやがったな(苦笑)
        :しっかし意外だよなあ、あいつにクラシック聞く趣味があ
        :るなんてなあ」
 健一     :「……その言葉、後で伝えといてあげるよ……」
 圭人     :「……まて。それは俺に死ねと言ってるのか(汗)」
 健一     :「貸し一な(にやり)……とまあ、冗談はそれくらいに
        :しておいてと」

 ……とてもそう聞こえなかったのは……きっと気のせいだろう(苦笑)

 健一     :「ほらほらもうすぐ始まるぞ。
        :聞き逃したくないから早く行くぞ」
 圭人     :「……気の早いやつ(苦笑)」

 と、軽口を叩きつつも、彼らは席まで戻ってきた。
 そこには、すでに圭人の弟、京が鎮座している。

 京      :「………お帰り(にやにや)」
 圭人     :「………見てたな、お前(汗)」
 京      :「当然(邪笑)」

 ……兄が兄なら弟も弟である。

 圭人     :「……ところで、岩崎の奴は?」
 京      :「トイレだって。そろそろ来るんじゃないの?」
 圭人     :「まあ、居ない方がくつろげるってもんか……」
 岩崎     :「……聞こえてるわよ」
 圭人     :「…………(滝汗)」

 圭人君、口は災いの元って知ってるかい?(笑)


開演前の一幕
------------
 公演がはじまる少し前。人でそこそこ込み合っている中で、見覚えの
ある顔を見つけた。

 本宮     :「あ、刹那くん」
 刹那     :「あ、こんにちわぁ」

 ゲーム仲間……というかなんというか。よくゲームセンターで二人で
遊んでいる。

 本宮     :「刹那くんもきてたのか」
 刹那     :「知り合いがでてるんでひやかしに(笑)」
 本宮     :「あはは(^^;)」

 笑っていると、いきなり背後から小さい何かがぶつかってきた。

 由摩     :「わーい♪(だきっ)」
 本宮     :「おっと、由摩ちゃんもきてたのか(なでなで)」

 公演のチケットが瑞鶴においてあったせいか、結構常連の知り合いの
顔がちらほら見える。

 本宮     :「そういえば、刹那くんも吹利学校っていってたね」
 刹那     :「うん。そうだよ」
 由摩     :「あたしもっ(^^)」
 鏡介     :「もう行かないとお兄さんが心配するよ……」
 由摩     :「はーいっ☆」
 フラナ    :「じゃねー由摩ちゃん(^^)」
 刹那     :「あ、まったね〜」
 由摩     :「まったね〜☆」
 鏡介     :「バイバイ(フフフフフフ)」

 ゆらゆらと去っていく由摩と鏡介。

 フラナ    :「って(もとみーの袖くいくい)知り合い?」
 本宮     :「ああ、ゲーセンでよくセッションやってる刹那くん」
 フラナ    :「よろしくー僕フラナ(^^)」
 刹那     :「よろしくお願いしま〜す」
 フラナ    :「うん、せっちゃんだね(^^)」

 いきなしせっちゃん呼ばわりか(笑)

 刹那     :「あははは(^^;」

 ジリリリリリリリリリ

 刹那     :「あ、開演だ」
 本宮     :「ああ、それじゃまたね」
 刹那     :「はーい」
 フラナ    :「じゃねー(ぶんぶん)」
 佐古田    :「……(ぺこ)」

 それぞれ、足取りを早めて席へと戻っていった。


開演前から小曲まで〜悠の視点
----------------------------
 開演、10分前。
 誰かがそのことを告げると、途端にみんなお喋りを止めた。
 ちらりと見ると、璃慧は壁に寄りかかり、さっきまで楽屋で騒いでいたのが
嘘のように真剣な面持ちで、楽譜をめくっていて。望くんは、OBさんの間にち
らりと見え隠れする程度。唯音さんは楽譜を傍らに置いて、息を吹きこんで楽
器を暖めている。幕間からこっそり客席を覗き見ている人もいる。
 何とはなしにまた璃慧のほうを見ると、ふと目が合った。璃慧は、こくんと
首を傾げて。それから、にこっと笑ってくれた。

 時間とともに、人が動く。動いて、列に並ぶ。
 前に金管。後ろに高弦。その間に木管と低弦。
 舞台の配置の後ろの方から、並ぶ。

 開演時刻。コンミスがマイクを持つ。放送室のひとがOKサインを送る。
「ただいまより、吹利学校高等部管弦学部の演奏をはじめます」
 コンミスの声が、マイクを通して、電波に乗って、客席に流れていく。
 客席の明かりが落ち、急に静まりかえったのが楽屋からも判った。
 その静けさの中に、上手と下手から一人ずつ、歩み出ていく。
 最初はトランペットとトロンボーン。その次がホルン。
 そして、ファゴットとクラリネット。
 フルートと、オーボエ。

 一歩、幕の向こうに踏み出して。まず視界に入ったのは、予想を遥かに越え
る数の観客。
 自分の親や、先輩の親などが主だけど。そのほかにも、神酒さんや椎那。
 それに、兼澤くん……だっけ、このまえ知り合った人に。……何でだろう。
 なるべく意識しないようにして、急いで歩いて、自分の席に座った。
 左には、オーボエのファースト。右には、フルートのセカンドのOBさん。
 前には、続々とヴァイオリンの人たちがすべりこんでくる。
 ちょうど前は、望くん。なんとなく、それだけで力づけられる。

 全員が座ったところで。コンミスが立つ。
 寂しげなAの音が、ぴぃんと張り詰めた空気の中に、響く。
 442Hzの、若干低めの、A。
 それに合わせて、弦楽器が重なり。次に、管楽器が重なる。
 綺麗に重なったところで、音が止む。
 空気中に、ふわりと柔らかく余韻が漂った。


 指揮者が入場してきて。会場は拍手に包まれた。
 合図に合わせて立って、指揮者がお辞儀したあとの合図で、座る。
 G.P.のとき、指揮者と一緒にお辞儀しちゃった人がいっぱいいたことも。
 そして、自分がその中の一人であったことも、今はなつかしい。

 指揮者の手がすっと持ちあがって、タクトが構えられる。
 『指揮者の楽器』が構えられたのに合わせて、みなそれぞれ楽器を構える。
 一拍置いてタクトが振り下ろされて。ヴァイオリンが、優しい穏やかな刻み
で、まだ生まれたばかりのドナウ川の源流を、奏でる。
 ホルンが紡ぐ旋律と木管がいれる合いの手は、寄せては返す、ドナウ川のさ
ざなみ。
 イントロダクション、第1ワルツ、第2ワルツ……と、ドナウ川は流れて。
 とあるところでは広くなり、また狭くなり。いろいろな楽器の音色が重なり
合い、響き合い、高らかに歌い上げていく。

 第3ワルツが終わって、第4ワルツに。最初の数小節を吹いたあと、楽譜に
は珍しく休符が踊ってて。短い休み、ふと客席を見ると……
「…………(こっくりこっくり)」
 うつむいて船を漕いでる、見なれたバンダナを巻いた頭。
 璃慧に見つかったら、間違いなく蹴られるんじゃ……どうやら椎那は、璃慧
に蹴られやすいみたいだし。

 つつがなく流れた第5ワルツ。そしてコーダ。
 コーダの構成は、今までの回想。いくつかの主題が顔を覗かせ、絡み合い、
そして……ドナウ川は、その源に還る。
 唯音さんと何度も合わせて練習した最後。お互いの音色をしっかりととらえ
て、それを返す。響き合って、流れる。
 音階を駆け下りてくるヴァイオリン。頭を打つ管楽器。最後の和音が、しっ
かりと響いた。

 曲が終わって、一瞬の間。そして、拍手。
 少しだけ、ほっとする。


 拍手が軽くなったところで、指揮者はまたタクトを振り上げた。ドナウも、
ファランドールも、同じ彼が指揮をする。
 軽く、2回振って。高々と振り上げられた3拍目に合わせ、全部の楽器が重
なった和音が響く。ファランドールの第一主題……プロヴァンス地方の民謡
『王の行列』が、荘厳に始まった。
 このあとに続くのは、この曲の表題にもなっているファランドール。ファラ
ンドールというのは、同じプロヴァンス地方に伝わっている、舞曲のこと。
 ファランドールの舞曲で踊るときって、どんな様子なんだろう。
『王の行列』最後のDの音の余韻が響く中、小さくリズムを取るタンブーラン。
 このリズムと同じように軽やかな踊りなのかな。

 音階を少し変形させただけのものが、ファランドールの主題。
 こう表現すれば、簡単そうだけど。実は、だんだん暴走が入ってくるから、
そうも言ってられなかったりする。
 早すぎても、遅すぎてもだめ。……そういう危険をはらんだ楽器の伴奏に合
わせて踊るのって本当に大変だろうなあ。

 1回目、2回目、3回目、最初はフルートとクラリネット一本ずつから始ま
ったファランドールは、どんどんと勢いをまして賑やかに、激しくなっていく。
 そして最高潮に達して。調の変わった『王の行列』へと、つながっていく。
 この最初のニ音は、けっこう強めにしっかりと弾く必要があるらしくて。
 弦楽器奏者は、みんな一音目と二音目の間で、弓を思いっきり引いて戻す。
 望くんも、間に弓を戻して……がっ、と弓をわたしの楽譜立てに引っ掛けた。
 何事もなかったかのように続けてたけど……だいじょうぶだったのかなあ。

 そのあとに交互に出てくる、ファランドールと『王の行列』。
 フルートとピッコロ、オーボエとクラリネットなど、楽器が次々と重なって
いくさまは、作曲者のオーケストレーションの巧みさを、窺わせる。

 最後に、ファランドールと『王の行列』が重なるところ。金管組は、ここぞ
とばかりに爆裂してる……しかも、なんとなく、速度をあおってるような気が
するけど。
 唯音さんなら、曲を楽しくするために周りと謀って暴走したりすること、あ
るかも……否定しきれないから怖い。
 とにかく、最後まで、崩壊せずに続きますように。今願うのはそれだけ。

 全部の楽器の音が混ざり合い、渦巻いて。駆け上がるOBさんのピッコロに導
かれた最後の和音が、誇らしげな響きとともに決まった。
 2回目の拍手が、酷使した神経に、温かく染み透る。

 客席から歩み出てきたOBさんたち。指揮者とコンミスに、花束を渡してる。
 指揮者も、コンミスも、OBさんたちも。満面の笑顔。

 そのまま指揮者は楽屋に引っ込んで。そのあとみんなで立ちあがって、入っ
てきたのとは逆の順番で楽屋に向かう。
 楽屋に早足で去って行ったコンミスの声が、スピーカーから場内に流れる。
「これで、第一部を終わります。休憩は10分です」

 しん、と静まりかえっていた客席に、一時的に日常が帰ってきた。


楽器と人と〜瑞鶴店長の視点より
------------------------------
 舞台から数列離れた席に座ってから、あたりを見まわした。
 結構、人が入っている。そのうちのある程度は演奏者達の家族が占めている
のだろうが。
 すうっと、彼の斜め前を横切った人影があった。
 あれは……うちの常連の一人だ。
「あ、こんにちは」
 座ろうとして向こうも気がついたらしい。
「こんにちは」
 成程、と納得する。フラナがまとめて数枚持っていった後、数日経つといつ
のまにか券が消えていたのだが、多分その一枚はこの常連さんが持って行った
のだろう。
 案外……聞きに来る人がいるんだな、と。
 納得してから、苦笑する。
 案外などと言ったら、演奏する面々はさぞ怒ることだろう。

 入り口で手渡されたプログラムを開いて、眺める。
『1:美しく青きドナウ:J.シュトラウス』
『2:ファランドール(「アルルの女(第二組曲)」)ビゼー』
『3:交響曲第36番:リンツ:モーツァルト』

 ちょっと、考える。
 1と2は、これはもうかなり有名な曲なのだが……
3は……どんな曲だったろうか。

 プログラムを開く音。人を探しているらしい声。すみません、と、小さな声。
 その全部が合わさってざわめきになる。世界一流のオーケストラの演奏会で
も、高校の演奏会でも、それはやはり同じようなざわめきだ、と思う。
 日常から、数時間の非日常に移り変わる為の、準備の数分かもしれない。

 ブザーが鳴る。
 幕の後ろから現れる……演奏者達。きゅっと、緊張し切った顔をして。
 タクトが揺れる。
 曲が始まる。
 なかなか……上手い。

 高校くらいの管弦楽の演奏では、時折、管楽器と弦楽器の間に差がある。
 管楽器というのは、大概の場合二桁の年齢になってから習い始める場合が多
いという。これは管楽器を演奏するのには、それくらいの体格が必要だから、
ということらしい。
 それに対して、弦楽器のうちでもヴァイオリンなどは、幼稚園に入る前から
練習を始める人々もいるわけで。
 そういう人が一人いるとこれはかなり目立つ。
 とすると、ヴァイオリンを弾いている彼女も、その類なのだろう。
 背の高い、女生徒。瑞鶴にポスターをはりに来た顔なので覚えがあるのだが、
それ以上に、演奏する姿が目立つ。
 ヴァイオリンが、軽い。
 軽い、というのは変かもしれない。が、弾いている姿が楽器を負担としてい
ない、という印象を受ける。楽器に振りまわされるのではなく、楽器を弾いて
いる、という……

 斜め前の席の頭が、ぴょこん、と起きあがった。
 起きあがるまでは気がつかなかったのだが、どうやら今まで眠っていたらし
い。
 ドナウ……眠くなる曲にも聞こえないのだが。
 中学生か、高校生か……つまりは夜更かし組なのだろう。多分友達が演奏し
ているのだろうが……
 見つかっていたら、あとで怒られるだろうに。
 曲のほうは終盤。フルートの少女がひどく真剣な目をして指揮者を見ていた。
金管楽器が並んでいる後列で、ちょっと身体を動かしたらしい奏者の楽器が、
ライトをあびて黄金色の光を放った。……あれは、トランペットか。


 そして、ファランドール。
 乗りの良い曲だけに、演奏している面々もその勢いに乗っかっているのがわ
かる。金管楽器の面々が特に。
 しかし、やはり目の前に演奏者を見つつ聞くと、曲の難易度……というか、
難しい部分が良く分かる。金管が高らかに音を響かせる合間の、細かい刻みの
繰り返し部分は……これは、多分、演奏している木管楽器の面々にとっては厄
介な部分だろう。テンポが速い上に休みが無い。
 クラリネットを吹いていた小柄な女生徒が、パートの切れ目に、ちょっと顔
をしかめて右手に視線を流し、素早い動きで結んで開いた。
 よほど手が凝ったのかもしれない。

 そして、トリの部分の、全楽器の渦巻くような音。そして最後の三音。
 ぱん、と歯切れ良く最後の音が決まって。

 一瞬沈黙。そして拍手。
 必死だった顔が、ふうっとほころんで。

「これで、第一部を終わります。休憩は10分です」

 アナウンスが流れた。


休憩時間:店長の視点的に
------------------------
 休憩時間、というと、別に何にも無くても、立ちあがりたくなるもので。
 よいしょ、と立ち上がって伸びをしか……けた途端。

 フラナ    :「あー、店長さんだっ」
 店長     :「あ、こんにちは……三人とも(笑)」

 振り返る。
 予想通り……
 フラナ、本宮、佐古田、と、いつもの面々が顔を揃えている。

 店長     :「佐古田君……は、ギター持ってないのか(笑)」
 佐古田    :「…………(憮然)」
 フラナ    :「だって佐古田って、持ってると弾いちゃうから」
 本宮     :「部屋に置いてこさせました(汗)」

 確かに……休憩時間とはいえ、ギターを鳴らされては、舞台の上の演奏者も
戸惑うことだろう。
 と、あと一人、三人の後ろに所在なげに立っているのに店長は気がついた。

 店長     :「っと、こちらは……」
 フラナ    :「あ、八神さん。おんなじアパートに住んでるんだよ」
 店長     :「って……ああ、もしかしたら永久カレーの」
 八神     :「…………何で知ってるんですか(汗)」

 フラナ〜花澄〜店長、の、情報漏洩の図が成り立っているわけである(笑)

 店長     :「いや、失礼。はじめまして。平塚と申します」
 八神     :「はじめまして」

 と……

 ??     :「どーしてっ?!」

 はっきりとした声が背後……この場合、舞台に近い側で聞こえた。
 答える内容は、ざわざわに消されてよくわからないものの、声自体は聞こえ
る。どうやら常連さんの声。
 振り返ると先刻まで舞台にいた小柄な少女がいる。
 何だか勢い良く問い詰められている……そんな印象。

 店長     :「……(ああ、だから来てたんだ)」

 納得する。

 本宮     :「っと…じゃ、これで。あ、券ありがとうございました」
 店長     :「いえ(苦笑)」

 どうやら義理堅いことに、この一言を言いに来たらしい。
 四人がばらばらっと目礼して、後ろのほうの席に戻ってゆく。それを何とな
く目で追って……

 店長     :「………………」

 ふ、と、目につく。
 灰色の人民服に、黒い丸眼鏡……何となくサングラス、という表現よりも時
代がかって見えるのだ……にハンチング。
 派手ではない。が、ちょっと普通でもない服装……のような気がする。

 店長     :「………(まあ……いろんな人が聞きに来るんだな)」

 ざわめきが、ゆっくりと下火になってゆく。
 そして、ブザー。

 アナウンス  :「只今より二部の演奏を始めます」

**********************************************************************

 流れ的に、このあとは『リンツ』ですね。
 はてさて止まらないうちに(滅)
 ではでは。


------------
銀佳
ginka@mutt.freemail.ne.jp


    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage