[KATARIBE 19996] [HA06] 『猫と徳利』

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Date: Tue, 4 Jul 2000 16:51:16 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19996] [HA06] 『猫と徳利』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200007040751.QAA49645@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19996

2000年07月04日:16時51分16秒
Sub:[HA06]『猫と徳利』:
From:久志


 久志です。
わっはっはっは(^^;)

先日、いーさんとの話で出てきたネタです。
酒の席だとネタが湧く湧く(笑)

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『猫と徳利』
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登場人物 
-------- 
 佐古田真一(さこた・しんいち) : 
  ギターとサボテンをこよなく愛する謎の少年。
 瑞鶴の猫(ずいかくのねこ)   : 
  書店瑞鶴の猫。えらそげである。
 サボテン:ごくごく普通のサボテンらしい

夜歩く
------
 よい湿り具合である。
 昼間のお天道様のなごりで、すっかり暗くなった今でもほのかに暑さ
を感じさせる。
 当方、我が主の首のカゴの中にて、家主とともに夜の散歩におつきあ
いである。もっとも、それは家主の行動で同行されているのであって当
方に選択の余地はなしではあるが。
 今宵は珍しく家主愛用のギターを置いて、古風な徳利を肩から下げて
の外出である。聞き及ぶところ我が家主はまだ未成年であり法律上では
アルコール摂取は禁じられているのであるが、当方知る限りでは我が家
主は週に二三度アルコールを定期的に摂取しているようである。その慣
れた飲みっぷりといい、相当酒歴は長いものと推測される。


  一人酒、寝れぬ夜には、よき友よ。
    つられ共する、一サボテンかな。

 イマイチである。


 無人の商店街を抜け、一件の建物の前で主が立ち止まった。今は閉ざ
された店の前に一匹の猫が陣取っている。

「なう」

 でんと構えたままで一声鳴いた。そっと帽子を傾け、家主も挨拶を交
わす。愛想のあるほうとは言えない我が家主がこうして礼をする相手は
あまり多くない。愛想が無い同志で案外仲は良いのかもしれない。

 家主はそのままシャッターの前に陣取った猫の隣に越しかけ、小さな
猪口を取り出した。隣の猫を見、小さく首を傾ける。

「………」
「……なう」

 会話は成立したらしい。
 もう一つ出した猪口を猫の前に置き、そろそろと徳利を傾ける。

 ぺろり、と。一口舐める。
 くいっ、と。一口含む。

「…………」
「…………」

 声も無く。
 静かに杯を空ける。

 無音な時間が過ぎていく。
 いつのまにやら、薄曇りの空から月が顔を出している。


 家主が徳利を片手に立ち上がった頃には、猫は満足げに前足をぺろり
と舐めていた。細めた目では酔っているかいないかは知りようも無い。

「……なう」

 ご馳走さん、とでも訳そうか。

「…………」

 軽く帽子のつばを傾け、家主は店を後にした。


 今宵、よい月である。


解説
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 瑞鶴猫と一杯やる佐古田の話
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いじょ

いあ、まーノリで(笑)



    

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