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Date: Sat, 24 Jun 2000 02:40:02 +0900
From: 不観樹露生 <fukanju@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 19802] Re: [WP01P] エピソード『昔々の物語』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <3953A0F20.E0BAFUKANJU@sv.trpg.net>
In-Reply-To: <200006231640.BAA11442@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200006231640.BAA11442@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19802
ども不観樹露生@気分はぶらっく珈琲砂糖抜きな寝起き です。はい。
ERさん、どもですー。
On Sat, 24 Jun 2000 01:40:54 +0900 (JST)
"E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp> wrote:
> こんにちは、E.R@骸骨です。
>
> ……ええと、IRCで出てきてた話から。
> こやって、書いてみましたけど。
> ……………滅入ってきた、ひさびさに(滅)
>
> とりあえず、流します。
朱理の台詞まわりの修正だけ少々。
> *************************************
> エピソード『昔々の物語』
> =======================
>
> 某日、喫茶月影。
> 初夏のじっとりとした暑さを避けるように、譲はその扉を開ける。
>
> 珠希 :「なにそれ?」
> 直人 :「ええと…あ」
> 譲 :「こんにちは」
> 直人 :「いらっしゃい」
> 朱理 :「……(ぺこり)」
朱理 :「………………(ぺこり)」
>
> カウンターの前には、突っ伏して眠っている男性が一名。その隣、椅子を一
> つ置いて座っている女子学生一人。
> 二人のウェイトレスの片方はカウンターの奥で皿を洗っているらしい。もう
> 一人のほうは、手に台拭きを持ってはいるものの……いまいち機能していない。
>
> 譲 :「何か、話し合いの最中だったんですか?」
> 直人 :「いえ……(何となく妙な顔)」
>
> 戸惑い。迷い。
> …但し……何と言うか、その感情に暗さが無い。
>
> 直人 :「……譲さんには、お話しましたっけ。災厄は百年に一度
> :起こるものであり…」
> 譲 :「当然、百年前にも、僕らのような狩人や住民がいた、と」
> 直人 :「そうなるんですが……」
> 珠希 :「生き残ってるって言うのよ」
> 譲 :「……へ?」
> 朱理 :「………」
朱理 :「………………」
> 珠樹 :「その頃の、住民だか狩人だか」
#ここ、珠希さんですね(^^;
> 譲 :「…………………へ?」
> 直人 :「以前、聞いた話なんですが」
> 珠希 :「それを聞きかけてたの」
(ちょきちょき)
> 視線がまず、カウンターで安らかに寝ている男に向う。
>
> 直人 :「まさか、そうとも限りませんが(苦笑)…まあ、結界を
> :安眠の為に使ってたあたりは、似ているかもしれません」
> 珠希 :「…似たような発想するのが、百年前にもいた訳ね……
> :(げーんなりっ)」
> 朱理 :「…………(汗)」
朱理 :「…………………………(微苦笑)」
> 譲 :「(苦笑)」
> 鉱亮 :「……………(ぐーー)」
>
> やり取りを見て笑っていた譲が、ふとその表情を改める。
(ちょきちょき)
> 直人 :「元々、彼女の能力は、眠ることで蓄えられる力を放出す
> :ることだったみたいです。眠る間、ほぼ仮死に近い状態に
> :なり、その間消費される筈だったエネルギーを蓄える。そ
> :してそれを、放出する」
>
> 一旦、言葉を切って。
>
> 直人 :「主に、寝起きの時に」
> 朱理 :「……それは」
朱理 :「………………それは…………」
> 珠希 :「恐いわね(汗)」
> 直人 :「眠る時間の長さに比例して、蓄えられる力も増大する。
> :だから本当は、度々起きたほうが良かったんでしょうが」
> 譲 :「眠ることが、大好きな人だったんですね(汗)」
> 直人 :「そのようです」
> 譲 :「…………」
> 鉱亮 :「………(ぐーー)」
>
> なんかこー……どっと何か疲れる話である。
>
> 珠希 :「…でもまー、対の住人にしたら、楽よね。寝っぱなしの
> :お姫様なら安全だし」
> 直人 :「……その、筈、だったんですが」
>
> 何とも…言いづらそうな、妙な顔になって。
>
> 朱理 :「……が?」
朱理 :「…………が?」
> 直人 :「…まずいことに、眠り姫は、眠っていると、本当に天女
> :のようだったそうで」
> 珠希 :「(先を聞きたく無くなっている)」
> 譲 :「(先を読みたく無くなっている)」
> 直人 :「…一目惚れしたらしいですね、住人のほうが」
> 珠希 :「…………知りたくなかったわ(ぼそっ)」
> 直人 :「どうしても起こしたかった…らしいです」
> 譲 :「………」
>
> その言葉は、素直には聞くことができなかった。
>
> 狩人の持つ殺意が、望んでのものではないことは…譲にすればよくわかるこ
> とである。近づけば何をするか自分でもわからないからこそ、対である風音の
> 居る所には近寄らないように気をつける。それが可能である能力を自分が持っ
> ていることは、存外の幸運である、と、自覚もしている。
>
> だのに。
>
> 譲 :「……むごいですね」
> 直人 :「え?」
> 譲 :「対の、住人の人……むごいことをされる」
> 直人 :「…起こすことがですか?」
> 譲 :「殺してしまう口実を、相手に与えることが」
>
> ほんの少し、沈黙。
> かける言葉に直人が迷う間に、カウンター席の朱理が、身じろぎした。
>
> 朱理 :「……それでも会いたい人かもしれない」
>
> ぽつんと。
> 凪いだ水面に石を投げ込むように。
>
> 譲 :「……そんなもんなんだろうか」
> 直人 :「そんなものかもしれません」
> 珠希 :「深いわね」
>
> 細波は、ゆっくりと笑いになって。
>
> 譲 :「すみません(苦笑)」
> 直人 :「いえ」
> 珠希 :「で、その眠り姫、起きたの?」
> 直人 :「…起こすたんびに」
>
> 握った手を、指を上向けて、ぱっと開く。
>
> 直人 :「………と」
> 珠希 :「不毛だわね(きっぱり)」
> 朱理 :「かもしれない(ぼそっ)」
朱理 :「…………かもしれない…………(でも)」
> 譲 :「…………(苦笑)」
>
> それでも、起こしてみたかったのかも…しれない。
>
> 珠希 :「それで、その二人どーしたの、最終的に」
> 直人 :「結局…眠り姫は、眠りについたそうです。災厄の終わる
> :前に、結界の中で」
> 譲 :「そして、今に至るまで、眠りつづけてる……?(汗)」
> 直人 :「はい」
>
> う、と、他の三人が身を引く。
>
> 譲 :「…それはまた(汗)」
> 朱理 :「……爆弾(ぼそっ)」
朱理 :「…………………爆弾(ぼそっ)」
> 珠希 :(汗)
>
> ☆☆☆
>
> ふと、譲が顔を上げた。
>
> 譲 :「それで、月島さん」
> 直人 :「はい?」
> 譲 :「その姫君が、危険、なんですか?」
> 直人 :「………一応、今のままならば大丈夫なんですが」
> 譲 :「が?」
> 珠希 :「が、何?」
> 直人 :「……居る、と教えられまして」
> 朱理 :「?」
> 直人 :「月影の、地下に。その結界と…姫が」
>
> 全員、一瞬硬直した。
>
> 朱理 :「……危険物件(月影を見まわしつつ)」
朱理 :「………………危険な喫茶店……(月影を見まわしつつ)」
> 珠希 :「それって、爆弾の上にこの店が立ってるってこと?」
> 直人 :「爆弾って…そもそも結界内部に入れるのは、住人か狩人
> :だけでしょう。そうそう爆発はしません」
> 珠希 :「……」
> 直人 :「それに、要するに起こさなければいいんですし…」
> 鉱亮 :「それは、同感です」
>
> ごく唐突に、むくり、と今まで眠っていた男が起きあがる。
>
> 珠希 :「聞いてたの?(汗)」
> 鉱亮 :「折角ぐっすり眠っている人を起こすなんて。人道にもと
> :る話です。残酷です(大真面目)」
>
> ……誰に向けての台詞やら。
>
> 珠希 :「おいといて…で、眠り姫、いるの?」
> 直人 :「居ます」
> 譲 :「月島さんは、見たんですか?」
> 直人 :「はあ……一応は」
>
> 大概。
> ここまでくると。
>
> 珠希 :「それは見たいわね」
> 譲 :「…同感(苦笑)」
>
> 普通の好奇心の持ち主ならば、見たくなるのが道理である…かもしれない。
>
>
> 直人 :「結界の中にいるので、普通にしていれば起こすことはな
> :いと思いますが…気をつけてくださいよ」
> 珠希 :「大丈夫っ」
>
> 月影の、地下。何本ものパイプの通る部屋にまず降りる。そのパイプをかい
> くぐって、部屋の中央まで行くと、足元に引き上げの戸がある。
> 妙に時代がかった鍵をポケットから取り出すと、直人は扉を開けた。
>
> 直人 :「この人ですよ」
> 譲 :「………」
>
> 扉を開けたところに、青銀の色の膜が見える。
> 目をこらす。と、すっと膜が透き通る。硝子の向こうに眠っている……
>
> 譲 :「あの人ですか」
>
> 極上の人形のようだ、というのが、第一印象だった。
> 御所人形を思わせる…血の気の無い、白い肌。綺麗に切りそろえられた前髪、
> そして四方に流れる豊かな黒髪。
> 深紅の地に様々な絞りや刺繍を加えた振袖。重たげな絹の布の重なる中で、
> しかし『姫』はひどく安らかに眠っている。
>
> 一面を覆う、淡い紅の色。
>
> 朱理 :「綺麗」
朱理 :「あ…………(綺麗…………)」
> 桜の色に似た、微かな、紅の色。
> その中に……ほんの僅かに、掠めるように見える。
> 切なげな、僅かに黄味を帯びた朱の線。
>
> 譲 :「…………」
>
> 自分の感情の…考え方の敷衍であることは、重々承知した上で。
> ふと、思ってしまう。
>
> この人は。
> 百年眠ることを、選んだのではないか、と。
> 起きるたびに怒りに任せて全てを壊してゆく自分を知りつつ……
>
> 自分の無意識が、人を傷つけていることほど…辛いことは無い。
>
> 譲 :「仮に、起こしたら…どうなりますか?」
> 直人 :「…考えたくないですね」
>
> それでも。
> この中で、この眠り姫を目覚めさせられる存在がいることを、譲としては自
> 覚せざるを得ない。
> 次の年の瀬に、元に戻るのは…狩人の譲のみ。元狩人である眠り姫の攻撃で
> 命を落とすにしても…もし、次の年がまた1999年であるならば、譲はもう
> 一度、生き返ることになる。
> もしも。
> もしも、住人達を、被害の無い場所まで、送ってから彼女を起こせば。
> 月影の運命に、住人達が関与できないほど遠くまで見送ってから……
>
>
> 譲 :「……ええと、六条さん」
> 鉱亮 :「はい?」
>
> 『眠り姫を見ようツアー』に、何故か彼も加わっている。寝てなくていいの、
> との珠希の言葉に、先達の偉大なる姿を見たいのです、と、分けの判らない
> ことをえらく真剣に言ってのけた男性は、譲の方に視線を向けた。
>
> 譲 :「眠ることは、幸せですか?」
> 鉱亮 :「勿論じゃないですか(きっぱし)」
> 譲 :「……眠るしか、出来なくても?」
> 鉱亮 :「眠るしか出来ないなら、それこそ幸せです(断言)」
> 譲 :「それが、百年でも?」
> 鉱亮 :「それが、二百年でも」
>
> 眠り姫は、静かに眠っている。
> 眠り続けるだけ、己が内に、致死量の力を蓄えながら。
>
> それを、無残と見るか。
> それを、幸せと見るか。
>
> 多分、どちらも正しくて。
> 多分……どちらも、間違っているのだろう。
>
> 珠希 :「さっきから、気になってたんだけど」
> 直人 :「はい?」
> 珠希 :「この話、知ってた人って、誰?」
> 直人 :「…………」
> 珠希 :「まさか、この眠り姫の対?!」
> 直人 :「…どうなんでしょうか」
>
> 何ともおぼつかなげな声に…流石に珠希も、それ以上の追求を諦めざるを得
> なかった。
>
> 直人 :「…閉じますけど、いいですか?」
> 譲 :「はい」
>
> 重い、鉄の扉をゆっくりと下ろす。
> 透き通っていた結界の壁が、また青銀色に濁る。
>
> 譲 :「この人は、いつまで眠るんでしょうか」
> 直人 :「……さあ…(苦笑)」
>
> それが、たとえ幸福であるにしても。
> 彼女の選んだ、最善の方法であるにしても。
>
> それは、ひどく……
>
> 直人 :「……起こしてみますか?(苦笑)」
> 譲 :「…………遠慮しておきます(苦笑)」
>
> そうですか、と小さく呟くと、直人は扉に鍵をかける。
> ぴん、と、鋭い音が響いた。
>
> **********************************************
てなわけで、ちょこちょこっと修正でした〜。
でわ。
…………。…………。…………。…………。…………。…………。
不観樹露生(ふかんじゅ・ろせい) 6月の標語
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…………。…………。…………。…………。…………。…………。