[KATARIBE 19800] [WP01P] エピソード『昔々の物語』

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Date: Sat, 24 Jun 2000 01:40:54 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19800] [WP01P] エピソード『昔々の物語』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200006231640.BAA11442@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19800

2000年06月24日:01時40分54秒
Sub:[WP01P]エピソード『昔々の物語』:
From:E.R


 こんにちは、E.R@骸骨です。

 ……ええと、IRCで出てきてた話から。
 こやって、書いてみましたけど。
……………滅入ってきた、ひさびさに(滅)

とりあえず、流します。

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エピソード『昔々の物語』
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 某日、喫茶月影。
 初夏のじっとりとした暑さを避けるように、譲はその扉を開ける。

 珠希     :「なにそれ?」
 直人     :「ええと…あ」
 譲      :「こんにちは」
 直人     :「いらっしゃい」
 朱理     :「……(ぺこり)」

 カウンターの前には、突っ伏して眠っている男性が一名。その隣、椅子を一
つ置いて座っている女子学生一人。
 二人のウェイトレスの片方はカウンターの奥で皿を洗っているらしい。もう
一人のほうは、手に台拭きを持ってはいるものの……いまいち機能していない。

 譲      :「何か、話し合いの最中だったんですか?」
 直人     :「いえ……(何となく妙な顔)」

 戸惑い。迷い。
 …但し……何と言うか、その感情に暗さが無い。

 直人     :「……譲さんには、お話しましたっけ。災厄は百年に一度
        :起こるものであり…」
 譲      :「当然、百年前にも、僕らのような狩人や住民がいた、と」
 直人     :「そうなるんですが……」
 珠希     :「生き残ってるって言うのよ」
 譲      :「……へ?」
 朱理     :「………」
 珠樹     :「その頃の、住民だか狩人だか」
 譲      :「…………………へ?」
 直人     :「以前、聞いた話なんですが」
 珠希     :「それを聞きかけてたの」

 目をしばたたかせた譲の目の前に、ひょい、とアイスコーヒーが出てくる。
 
 優      :「どうぞ」
 譲      :「あ、すみません」

 一礼してから、譲は直人に視線を戻す。

 譲      :「……今でも、危険なんでしょうか、その人は?」
 直人     :「いえ……ああ、今でも危険は危険でしょうが…災厄、そ
        :のものには、関わらないんです」

 で、止まった筈の言葉が、可聴音域外の声として伝わってくる。

 直人     :(の、筈だよなあ……)
 譲      :(ふむ)

 しばし、待つ。
 聞こえるのは、カウンターで眠り込んでいる男の、それはそれは気持ち良さ
そうな寝息ばかりである。
 不意に、珠希がどん、と、テーブルを叩いた。

 珠希     :「ちゃんと話しなさいよ、最初っから、わかりやすく」
 直人     :「ええ……」

 ☆☆☆

 直人     :「私も、聞いた話なんですが…その当時の狩人が生きてい
        :るらしいんです」
 譲      :「……狩人が?」
 直人     :「はい」
 譲      :「狩人って、災厄が終わっても狩人なんですか?」
 直人     :「いえ……というか、どうなんだろうなあ……」
 珠希     :「はっきりしないわねっ」
 直人     :「はっきりしないんです」
 
 すとん、と受けて返す。
 珠希がきょとんとする。

 珠希     :「何でよ」
 直人     :「相手は眠り姫なので」
 譲      :「…眠り姫?(汗)」
 珠希     :「………そういうのって、伝統的にいるの?(汗)」

 視線がまず、カウンターで安らかに寝ている男に向う。

 直人     :「まさか、そうとも限りませんが(苦笑)…まあ、結界を
        :安眠の為に使ってたあたりは、似ているかもしれません」
 珠希     :「…似たような発想するのが、百年前にもいた訳ね……
        :(げーんなりっ)」
 朱理     :「…………(汗)」
 譲      :「(苦笑)」
 鉱亮     :「……………(ぐーー)」

 やり取りを見て笑っていた譲が、ふとその表情を改める。

 譲      :「それにしても、規格外れの狩人ですね」
 珠希     :「?」
 譲      :「住人達を殺す、というのが役目じゃないんですか?」
 直人     :「………」

 月影のマスターの顔から、笑いが消える。
 しっかり馴染んではいるものの……目の前の青年は、ある人間に対し、抜き
難い殺意を抱えているのだ。それを押さえつける力を鍛えることが出来たのは
あくまで幸運であったことも、聞いて知ってはいる。
 すう、と一筋流れた感情を読んで、譲が笑う。

 譲      :「……(笑)…お気使い無用と言うことで…でもどうして
        :その姫、眠りっぱなしなんですか?」
 直人     :「ひどい話ですが、ある意味では、譲君と似ているんです」
 譲      :「?」
 直人     :「彼女の場合、対の住人を殺すよりも、睡眠欲のほうが強
        :かったらしい」
 珠希     :「…………(尚更げーんなりっ)」
 譲      :「(笑)」

 闊達な珠希にしたら、後ろから蹴っ飛ばしたくなるような相手かもしれない。

 直人     :「元々、彼女の能力は、眠ることで蓄えられる力を放出す
        :ることだったみたいです。眠る間、ほぼ仮死に近い状態に
        :なり、その間消費される筈だったエネルギーを蓄える。そ
        :してそれを、放出する」

 一旦、言葉を切って。

 直人     :「主に、寝起きの時に」
 朱理     :「……それは」
 珠希     :「恐いわね(汗)」
 直人     :「眠る時間の長さに比例して、蓄えられる力も増大する。
        :だから本当は、度々起きたほうが良かったんでしょうが」
 譲      :「眠ることが、大好きな人だったんですね(汗)」
 直人     :「そのようです」
 譲      :「…………」
 鉱亮     :「………(ぐーー)」

 なんかこー……どっと何か疲れる話である。

 珠希     :「…でもまー、対の住人にしたら、楽よね。寝っぱなしの
        :お姫様なら安全だし」
 直人     :「……その、筈、だったんですが」

 何とも…言いづらそうな、妙な顔になって。

 朱理     :「……が?」
 直人     :「…まずいことに、眠り姫は、眠っていると、本当に天女
        :のようだったそうで」
 珠希     :「(先を聞きたく無くなっている)」
 譲      :「(先を読みたく無くなっている)」
 直人     :「…一目惚れしたらしいですね、住人のほうが」
 珠希     :「…………知りたくなかったわ(ぼそっ)」
 直人     :「どうしても起こしたかった…らしいです」
 譲      :「………」

 その言葉は、素直には聞くことができなかった。

 狩人の持つ殺意が、望んでのものではないことは…譲にすればよくわかるこ
とである。近づけば何をするか自分でもわからないからこそ、対である風音の
居る所には近寄らないように気をつける。それが可能である能力を自分が持っ
ていることは、存外の幸運である、と、自覚もしている。

 だのに。

 譲      :「……むごいですね」
 直人     :「え?」
 譲      :「対の、住人の人……むごいことをされる」
 直人     :「…起こすことがですか?」
 譲      :「殺してしまう口実を、相手に与えることが」

 ほんの少し、沈黙。
 かける言葉に直人が迷う間に、カウンター席の朱理が、身じろぎした。

 朱理     :「……それでも会いたい人かもしれない」

 ぽつんと。
 凪いだ水面に石を投げ込むように。
 
 譲      :「……そんなもんなんだろうか」
 直人     :「そんなものかもしれません」
 珠希     :「深いわね」

 細波は、ゆっくりと笑いになって。

 譲      :「すみません(苦笑)」
 直人     :「いえ」
 珠希     :「で、その眠り姫、起きたの?」
 直人     :「…起こすたんびに」

 握った手を、指を上向けて、ぱっと開く。

 直人     :「………と」
 珠希     :「不毛だわね(きっぱり)」
 朱理     :「かもしれない(ぼそっ)」
 譲      :「…………(苦笑)」

 それでも、起こしてみたかったのかも…しれない。

 珠希     :「それで、その二人どーしたの、最終的に」
 直人     :「結局…眠り姫は、眠りについたそうです。災厄の終わる
        :前に、結界の中で」
 譲      :「そして、今に至るまで、眠りつづけてる……?(汗)」
 直人     :「はい」

 う、と、他の三人が身を引く。

 譲      :「…それはまた(汗)」
 朱理     :「……爆弾(ぼそっ)」
 珠希     :(汗)

 ☆☆☆

 ふと、譲が顔を上げた。

 譲      :「それで、月島さん」
 直人     :「はい?」
 譲      :「その姫君が、危険、なんですか?」
 直人     :「………一応、今のままならば大丈夫なんですが」
 譲      :「が?」
 珠希     :「が、何?」
 直人     :「……居る、と教えられまして」
 朱理     :「?」
 直人     :「月影の、地下に。その結界と…姫が」
 
 全員、一瞬硬直した。

 朱理     :「……危険物件(月影を見まわしつつ)」
 珠希     :「それって、爆弾の上にこの店が立ってるってこと?」
 直人     :「爆弾って…そもそも結界内部に入れるのは、住人か狩人
        :だけでしょう。そうそう爆発はしません」
 珠希     :「……」
 直人     :「それに、要するに起こさなければいいんですし…」
 鉱亮     :「それは、同感です」

 ごく唐突に、むくり、と今まで眠っていた男が起きあがる。

 珠希     :「聞いてたの?(汗)」
 鉱亮     :「折角ぐっすり眠っている人を起こすなんて。人道にもと
        :る話です。残酷です(大真面目)」

 ……誰に向けての台詞やら。

 珠希     :「おいといて…で、眠り姫、いるの?」
 直人     :「居ます」
 譲      :「月島さんは、見たんですか?」
 直人     :「はあ……一応は」
 
 大概。
 ここまでくると。

 珠希     :「それは見たいわね」
 譲      :「…同感(苦笑)」

 普通の好奇心の持ち主ならば、見たくなるのが道理である…かもしれない。

 
 直人     :「結界の中にいるので、普通にしていれば起こすことはな
        :いと思いますが…気をつけてくださいよ」
 珠希     :「大丈夫っ」
 
 月影の、地下。何本ものパイプの通る部屋にまず降りる。そのパイプをかい
くぐって、部屋の中央まで行くと、足元に引き上げの戸がある。
 妙に時代がかった鍵をポケットから取り出すと、直人は扉を開けた。

 直人     :「この人ですよ」
 譲      :「………」

 扉を開けたところに、青銀の色の膜が見える。
 目をこらす。と、すっと膜が透き通る。硝子の向こうに眠っている……

 譲      :「あの人ですか」

 極上の人形のようだ、というのが、第一印象だった。
 御所人形を思わせる…血の気の無い、白い肌。綺麗に切りそろえられた前髪、
そして四方に流れる豊かな黒髪。
 深紅の地に様々な絞りや刺繍を加えた振袖。重たげな絹の布の重なる中で、
しかし『姫』はひどく安らかに眠っている。

 一面を覆う、淡い紅の色。

 朱理     :「綺麗」

 桜の色に似た、微かな、紅の色。
 その中に……ほんの僅かに、掠めるように見える。
 切なげな、僅かに黄味を帯びた朱の線。

 譲      :「…………」

 自分の感情の…考え方の敷衍であることは、重々承知した上で。
 ふと、思ってしまう。

 この人は。
 百年眠ることを、選んだのではないか、と。
 起きるたびに怒りに任せて全てを壊してゆく自分を知りつつ……

 自分の無意識が、人を傷つけていることほど…辛いことは無い。

 譲      :「仮に、起こしたら…どうなりますか?」
 直人     :「…考えたくないですね」

 それでも。
 この中で、この眠り姫を目覚めさせられる存在がいることを、譲としては自
覚せざるを得ない。
 次の年の瀬に、元に戻るのは…狩人の譲のみ。元狩人である眠り姫の攻撃で
命を落とすにしても…もし、次の年がまた1999年であるならば、譲はもう
一度、生き返ることになる。
 もしも。
 もしも、住人達を、被害の無い場所まで、送ってから彼女を起こせば。
 月影の運命に、住人達が関与できないほど遠くまで見送ってから……


 譲      :「……ええと、六条さん」
 鉱亮     :「はい?」

『眠り姫を見ようツアー』に、何故か彼も加わっている。寝てなくていいの、
との珠希の言葉に、先達の偉大なる姿を見たいのです、と、分けの判らない
ことをえらく真剣に言ってのけた男性は、譲の方に視線を向けた。

 譲      :「眠ることは、幸せですか?」
 鉱亮     :「勿論じゃないですか(きっぱし)」
 譲      :「……眠るしか、出来なくても?」
 鉱亮     :「眠るしか出来ないなら、それこそ幸せです(断言)」
 譲      :「それが、百年でも?」
 鉱亮     :「それが、二百年でも」

 眠り姫は、静かに眠っている。
 眠り続けるだけ、己が内に、致死量の力を蓄えながら。

 それを、無残と見るか。
 それを、幸せと見るか。

 多分、どちらも正しくて。
 多分……どちらも、間違っているのだろう。

 珠希     :「さっきから、気になってたんだけど」
 直人     :「はい?」
 珠希     :「この話、知ってた人って、誰?」
 直人     :「…………」
 珠希     :「まさか、この眠り姫の対?!」
 直人     :「…どうなんでしょうか」

 何ともおぼつかなげな声に…流石に珠希も、それ以上の追求を諦めざるを得
なかった。
 
 直人     :「…閉じますけど、いいですか?」
 譲      :「はい」

 重い、鉄の扉をゆっくりと下ろす。
 透き通っていた結界の壁が、また青銀色に濁る。

 譲      :「この人は、いつまで眠るんでしょうか」
 直人     :「……さあ…(苦笑)」

 それが、たとえ幸福であるにしても。 
 彼女の選んだ、最善の方法であるにしても。
 
 それは、ひどく……

 直人     :「……起こしてみますか?(苦笑)」
 譲      :「…………遠慮しておきます(苦笑)」

 そうですか、と小さく呟くと、直人は扉に鍵をかける。
 ぴん、と、鋭い音が響いた。

**********************************************

 というわけで。
 …………あのーー
 すいませんーーーーーーーっ
 (びーーーー)
 あの、J覚悟ですし、あの(滅)
……すみません。
 #うう、本気で滅入ったよう…

 んではであーー



    

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