[KATARIBE 19792] [WP01P] 『終わらぬ今日』

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Date: Fri, 23 Jun 2000 15:20:40 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19792] [WP01P] 『終わらぬ今日』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200006230620.PAA85836@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19792

2000年06月23日:15時20分40秒
Sub:[WP01P]『終わらぬ今日』:
From:久志


 久志です。
昨日サボったんで今日流す。

奏雅のお話です。ちっともWPってません(おい)
しかも悪女だし(笑)

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『終わらぬ今日』
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 少し飲みすぎたのかもしれない。
 幕間、もう時間も遅いため人がまばらになってきている。

 奏雅     :「ねえ、殿間くん」
 殿間     :「なんですか?」
 奏雅     :「殿間くんは、もし永久に翌日のこない世界に閉じ込めら
        :れたらどうする?」

 ああ、少し酔っているみたいだ。


 殿間     :「え?なんですか、急に?」
 奏雅     :「そういう映画があったのよ」

 名前は……忘れてしまった。古い、それこそ映画が吹き替えになったばかり
の頃のものだったような気がする。


 乗っていた車が故障し、とある村に訪れ一泊した主人公。
 折よく村は祭の日、村の女神役の美しい女性と親切な村人と、厚いもてなし
を受ける。そしてそのまま女性と夜を過ごして、目を覚ます。

 しかし、そこはやはり祭りの日。
 昨日と同じ日。

 次の日もまた次の日も祭の日。
 村から逃げて、逃げても、次の日目を覚ますのは村の家のベッドの上。

 永遠に終らぬ今日に閉じ込められた主人公。
 そしてまた明くる日も祭りの朝が訪れる。


 殿間     :「……聞いたことない映画ですね」
 奏雅     :「古い映画だもの、内容もうろおぼえだし。でも、なんか
        :印象に残ってるのよね」

 あがいても、変わらない時に閉じ込められた主人公。
 理由もわからず、するべきこともわからず、逃げても逃げても繰り返す時に
飲みこまれていく。

 殿間     :「その話って、結局どうなっちゃったんですか?」
 奏雅     :「最後はね、主人公は結局あきらめちゃうのよ。延々と繰
        :り返す世界から逃げることに。永遠に終わらない祭のなか
        :で踊りふけって……そのまま話は終わるの」

 映画では永劫に繰り返す時間に逆らえないとあきらめた主人公。

 奏雅     :「なんかね、もし自分がそんな世界に閉じ込められたら、
        :どうするだろう?って考えちゃうのよ。変よね、なんか少し
        :回ってるみたい」

 今年は1999年。
 去年は1999年。
 終らない時に閉じ込められたのは………自分なのか?

 殿間     :「奏雅さん、俺……なんつうか。俺、そんな世界に閉じ込
        :められても、奏雅さんとこうして毎日飲めるなら、それで
        :も悪くないと思いますよ」

 なんとなく、そんな気はしてた。
 自分自身、知っててわざと話題を振ったのかもしれない。

 奏雅     :「ありがと、聞かなかったことにしとく」

 卑怯だ。
 繰り返す時間に取り残されてることを盾にとって自分だけ傷つかないように
立ち回ってる。

 殿間     :「……奏雅さん」
 奏雅     :「そろそろ、帰ろっか?」
 殿間     :「あのっ……」
 奏雅     :「大丈夫、そんなに回ってないから」

 伝票をつかんで立ち上がった。
 遅れ馳せについてくるのを振り向かずに会計を済ませ、外へと歩き出す。

 奏雅     :「おつかれさま」
 殿間     :「奏雅さん!待ってくださいよ」
 奏雅     :「あのね、殿間くん……」

 背中を向けたままだった

 奏雅     :「あたしね、今はなりふりかまってられないのよ……」
 殿間     :「奏雅さん……」
 奏雅     :「目標っていうか、どうしてもなんとかしたいことがある
        :の。その為にはあたし自身のことなんて構ってられない」

 目に浮かんだのは、おかっぱに切り揃えた髪に丸い瞳。お嬢さんらしさをま
るで見せない素朴で素直で心配性の友人。
 生まれない子供を身ごもり続け……何の疑問を持っていないあの子。

 奏雅     :「だから、ダメなの。あたしは」
 殿間     :「………」
 奏雅     :「じゃあ、ね」

 踵を返す。無言を背中に浴びて、その場から歩き去っていく。


 自宅に帰りついた時には、もう時計は十二時半過ぎだった。人前ではだいぶ
押えられるが、自宅で一人になるとそうは行かない。ずるずると倒れ込むよう
にソファに突っ伏した。

 アルコールでぐたぐたになっているはずなのに眠れない。
 よぎる顔。殿間くん、松田刑事……

 奏雅     :「なりふりかまってられないのよ…」

 誰もいないのにいい訳のようにつぶやく。

 奏雅     :「……睦美」

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いじょ

 なんだかなぁ(^^;)



    

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