[KATARIBE 19780] Re:[WP01P] エピソード『コンビネーション』

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Date: Fri, 23 Jun 2000 12:05:16 +0900 (JST)
From: ji-guy@dike.dricas.com
Subject: [KATARIBE 19780] Re:[WP01P] エピソード『コンビネーション』 
To: kataribe-ml@trpg.net
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 吉GUYです
 という訳で修正版です。
 
 E.Rさんに訂正していただいた部分以外も手をいれてあります。
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エピソード『コンビネーション』
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人物紹介
--------
 青天目譲(なばため・ゆずる):
    :エンパシストの狩人。かつて八島小次郎を助けたことがある。
 八島小次郎(やしま・こじろう):
    :覚醒したばかりの終末の狩人。
 厳侠児(げん・きょうじ):
    :正体不明の終末の住人。八島小次郎の"対"
 
 
人混みの中で 
------------ 
 東京の雑踏
 
 譲      :「あれ?」
 
 その人込みの中で
 
 譲      :「……」
 
 背筋を駆け抜けるような、冷たい違和。そしてその感覚を喚起する先に。
 
 譲      :「(なんだ、あれは?)」
 
 視線の先に、捉えているのは袴姿の小次郎。
 しかし……
 
 譲      :「(違う)」
 
 視覚からの模倣が完璧であるだけに、その違和感は大きなものになる。
  
 小次郎    :「…………」 
 譲      :「!?」 
  
 小次郎…そうとしか呼び様が無い…が譲のことを見つけたらしい。 
 きるきると、音を立ててこちらを向く。
 それもまた錯覚である、と、譲のどこかで声がする。
 まるで小次郎の周囲だけが別空間のような…… 
 …………暗黒?
  
 譲      :「………!」 
 小次郎    :「…………」 
 譲      :「(うぐっ……)」
 小次郎    :(ニタリ) 
 譲      :(………っつ…)
 
 暗黒の中から放たれる、指向性を持つ精神の波。
 それは、言わば鼻腔の奥深くを突き刺す刺激臭に似ている。あまりにも強烈
な彩りと変化の振幅の狭さ。
 眼底に突き刺さる、異質な感覚。
 小次郎は顔こそ笑みを浮かべたが、笑いや親愛の感情を伴っていない。 
  
 譲      :「(……殺気……食欲?)」
  
 人のそれとはあまりに異質な感情波。そこから譲が、かろうじて翻訳できる
…それは、欲。 
 譲が出した結論。 
  
 譲      :「(とりあえず、敵だな)」 
 小次郎    :(ニヤ) 
  
 SE      :メキャ……ミチミチミチッ……グチョ………… 
  
 小次郎の右掌から、皮膚を盛り上げ破って、刃のような物が突き出た。 
 それは、植物の芽が成長するように掌から粘液を伴いながらはい出て来て、一
 
振りの刀になった。 
  
 譲      :「…………」(一歩下がる) 
  
 道を行く周囲の人々は、この異様な光景に全く関心を示さない。 
  
 譲      :「(周りには見えていないのか?)」 
  
 だが、結界が張られている訳ではない。 
 譲が戸惑っていると、小次郎が粘液の滴る刃を構えた。 
  
 SE      :ダッッッ………… 
  
 小次郎が信じられない速度で間合いを詰めて来る。 
  
 譲      :「…………」(ポケットの中の鈴を握り締める) 
  
 殺意が、譲に接近する。
 
 
決断
----
 SE      :ギィイィィィィィィ………………ン 
 
 譲が死を直感した直後、強力な結界が張られ……
 
 SE      :ガッ…………
 
 譲と小次郎の間に何者かが飛燕のような速度で割って入った。
 
 侠児     :「…………(睨)」
 小次郎    :「…………。」
 
 譲を庇うように割って入った男は、小次郎の斬撃を己の太刀で受け、鍔競り合
いの体制になる。
 
 侠児     :「哈っっ!」
 
 男は己の刃の力を逸らし、小次郎の刃を抑えつつ、隙のできた小次郎の腹部に
蹴りを入れた。
 
 SE      :ドンッッ……
 
 しかし、小次郎はビクともしない。
 男の蹴りの狙いはダメージではなく……
 
 SE      :ンィィィ…………
 
 男は蹴りの反動を利用し、小次郎から間合いを離す。
 後へ跳んだ勢いで譲の手を取ると、そのまま譲を伴い驚異的な速度で地面を滑
るように後退する。
 
 譲      :「(あぐっっ……!)」
 
 突然の加速から来る衝撃で譲の肩がはずれそうになる。
 小次郎からだいぶ距離が離れた。
 
 侠児     :「大丈夫かっ!?」
 
 男は譲を庇う位置に立ち、太刀を構え小次郎を睨みつつ譲に問うた。
 
 譲      :「ええ。」
 
 譲は肩をさすりつつ、男が肩のことを聞いているのではないと察し、そう答え
た。
 
 侠児     :「そうか。で、君は……狩人……結界……」
 
 男は譲の気丈さに感心し、何かを伝えようと思ったらしいが、説明に戸惑って
いるようだった。譲は男の発したいニュアンスを読み取り答える。
 
 譲      :「"結界"ですね、知っています。」
 侠児     :「そうか、なら私のを閉じる。君がすぐ張り直してくれ」
 譲      :「……"強過ぎず""弱過ぎず"ですね。」
 
 譲が男の思考を読む。
 
 侠児     :「知っているのか?」
 譲      :「判ります。」
 侠児     :「じゃあ、話は早い。頼むぞ!」
 
 男は男のとる戦術を譲が"できる"と誤解し、男は思考をより高度な戦術へと変
える。
 
 譲      :「……でも、それはやったことがありません。」
 侠児     :「…………。だが、やらなきゃ死ぬぞ!」
 譲      :「…………」
 侠児     :「…………」
 譲      :「やります!」
 侠児     :「よし!」
 譲      :「(でも、本当にそんなことが上手く行くのか……)」
 侠児     :「行くぞっ!!!」
 
 SE      :キィィィィィィィ…………
 
 譲と男が結界を交換する。
 
 
連携
----
 男が小次郎を見据えながら太刀を大きく振り回し、ゆっくりと両手を背中に回
す。
 小次郎の位置からは、男の背中に太刀が隠れ見えなくなる。
 
 小次郎    :「かあぁぁぁぁぁ…………」
 
 小次郎が眉間にシワを寄せ、怒りの表情を作り侠児を睨む。
 
 侠児     :「任せたぞ。」
 譲      :(頷く)
 侠児     :「哈っ!」
 
 男は太刀を背中に隠したまま、小次郎へ向かって一直線に高速で地面を滑る
 
 SE      :ンィィィィ…………
 
 男が体を捻り、腰の高さに蹴りを出す。しかし、それは蹴りの当たる間合いで
はなく……
 
 小次郎    :「かっっっ…………!」
 
 小次郎が斬撃の構えを見せ、男との間合いを見切ろうとする直前……
 小次郎の視界から男の姿が消えた。
 
 SE      :ダンッッ…………
 
 小次郎の背後から、数瞬遅れて地面を蹴る音が響く。
 男が小次郎の背後の空間に出現していた。
 男の持つ太刀が一瞬輝きを増し、小次郎に襲いかかる。
 
 侠児     :「ぜやあぁぁぁぁっっっ……!」
 小次郎    :「!」
 
 小次郎の右腕の関節があらぬ方向へ曲がり、男の太刀を受けようとするが……
 
 SE      :ギィィィィ………………ザッ!
 
 男は触れ合った太刀を滑らせ、小次郎の右肩から上腕に傷を負わせる。
 
 小次郎    :「…………」
 侠児     :「(チイィィ……浅いっっっ!)」
 
 傷を負わせることはできたが、しかし致命傷では無い。
 
 侠児     :「(……早すぎる)」
 譲      :「(今なら今って、はっきり考えてくれっ)」
 
 小次郎と立ち会う間の男の頭の中は、思考が途切れ途切れで、動物的反射や無
意識の癖に近い反応が支配していた。
 譲は男の要望していたものに対し不満を覚えた。
 
 譲      :「…………」
 
 譲は、男の太刀が輝きを増す瞬間に、男の心に"痛み"の様なものが疾ったこと
に少しひっかかっていた。
 
 
災厄
----
 男の斬撃の後、小次郎は太刀を取り落とすと、一旦男から大きく離れ、男と相
対する位置に立った。
 
 侠児     :「…………(睨)」
 小次郎    :「…………(無表情)」
 
 小次郎は左手で着衣の上から傷口を抑えている。
 しかし、周囲に与える奇妙な威圧感は、傷を負う前と変わらない。
  
 小次郎    :(ニヤリ)
 
 SE      :タンッッッ…………
 
 突然、小次郎が地面を蹴って跳躍した。
 小次郎の跳んだ先は、小次郎の側にそびえていたビルの屋上。
 およそ人の跳躍力とは思えない。
 
 小次郎    :(ニタ……)
 侠児     :「……逃げる気か!」
 
 男は小次郎を追って駆け出そうとしたが、譲の方を振り向いて……
 
 侠児     :「君のような人間は……奴……奴らに狙われる。詳しい説
        :明をしている暇がないが……仲間がいるなら警戒するよう
        :に伝えるんだ。」
 
 男はそう言い残して走り去った。
 
 譲      :「("災厄"……"住人"……"狩人"……"墜とし子"……"司"
        :……あの人は一体何を? ……そして何処まで知っている
        :んだ?)」
 
 譲は男の去り際に男が説明したがっていたことを頭の中で反芻した。
 
 譲      :「(……そして、このままでは確実に訪れる"世界の崩壊"っ
        :て……)」
 
 結界の中に、譲は一人。
 
 SE      :ボシュ…………
 
 小次郎の残した太刀が、煙を上げ灰になり中に舞って溶けるように消えた。
 
 譲      :「………………」
 
 
時系列
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 3rd.1999.6.下旬
 
 
解説
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 狩人、青天目譲と住人、厳侠児の僅かな間の接触。
 エンパシストの譲は侠児の思考から"災厄の危機"を知る。
 
 $$
 
**************************************************
 とまあ、こんな感じになりました。
 変更した部分に問題があれば、訂正等またよろしくお願いします >E.Rさん
 
 では
 
 
 吉GUY
 ji-guy@dike.dricas.com
 
    

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