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Date: Wed, 21 Jun 2000 22:57:14 +0900
From: kazuki <aaq45040@hkg.odn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19740] [HA06P] エピソード『まるぼうろ』
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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軍光一@逆境に弱い です。
なんかいやなことがあったらしい。
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エピソード『まるぼうろ』
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登場人物
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西夜一輝(にしよる・かずき):紅雀院大学総合歴史学科助手。九州出身。
来栖せら(くるす・−):西夜に撃墜された天使。天界出身。
本編
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今日も今日とて残業が辛い。
SE :ガチャ
ただいま、と挨拶をする慣習のない西夜は黙って帰宅。
西夜 :「ん?」
ふと、床に10センチ四方ほどの小さなビニールの包装紙が落ちている。その少
し先に一つ。その又先に又一つ。
西夜 :「……」
捨ててある包装には見覚えがあった。包装紙を拾い、ゴミ箱に捨てつつ、包装
紙の跡を辿る。自分の部屋へ。
SE :カチャ
ノックする慣習も、断りを入れる慣習もないので、黙ってドアを開けて入る。
来栖 :「もが?」
中くらいのダンボールを前に、茶色い直径10センチほどの円盤をかじっている
天使がいた。周囲には先ほど見た包装紙が散乱している。
西夜 :「……なにをしている?」
来栖 :「あのね、宅急便が来たの」
西夜 :「で?」
来栖 :「危険物だといけないから、開けてみたの」
西夜 :「で?」
来栖 :「中にこれが入っていて。よくわかんなかったけど」
西夜 :「わからんだろうな。で?」
来栖 :「毒だといけないから、食べてみたの」
西夜 :「で?」
来栖 :「……おいしいね」
西夜 :「……で?」
来栖 :「お茶頂戴」
西夜 :「まずゴミを片づけろ」
天使に掃除を命じると、西夜はダンボールの中身を見る。包装された茶色くて
甘い、小麦粉で出来た円盤がぎっしりと詰まっていた……ようだった。残された
敷居の数から推測すると。
帳付けを見る。九州の地名が書かれていた。
西夜 :「……」
天使に食い散らかされたダンボールの中を漁ってみる。底の方から白い封筒を
発見した。達筆な字で一輝様と書いてある。読む。
西夜 :「……」
破く。粉みじんに。
来栖 :「掃除終わったよー。お茶ー」
西夜 :「ああ」
紙屑をゴミ箱に捨てると、やかんに水を入れて火にかける。緑茶を飲む慣習が
ないので紅茶か珈琲しかない。両方ともインスタントだが。
西夜 :「……なにをしている?」
ゴミ箱から紙屑を拾い出し、ジグゾーパズルしている天使を冷たい瞳が睨む。
来栖 :「……ひょっとして、本気で怒ってる?」
西夜 :「どうしてそう思う?」
来栖 :「つっこみがない」
目だけで片づけろ、と言う。大人しくゴミを捨てる天使。
お湯が沸く。紅茶をいれる。
来栖 :「で、これなに?」
西夜 :「まるぼうろ、という佐賀名産のお菓子だ」
来栖 :「ふーん」(はむはむ)
西夜 :「鍋島藩主の命令で作られたという伝統的なお菓子だな。
行事で使われることが結構ある。向こうじゃ結構ポピュ
ラーな和菓子だ」
来栖 :「たくさんあるし、あちこちまいてきても良い?」
西夜 :「かまわんよ」
来栖 :「甘くて美味しいね」
西夜 :「そうだな」
来栖はぽん、とまるぼうろを一個マリア像の前に供えた。
時系列
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2000年6月。
解説
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九州の食べ物フリーク(?)である来栖のまるぼうろとの出会い。
しろくまとの出会いは謎である。
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