[KATARIBE 19696] [WP01] 『夜中の客』

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Date: Mon, 19 Jun 2000 19:22:38 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19696] [WP01] 『夜中の客』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200006191022.TAA22068@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19696

2000年06月19日:19時22分37秒
Sub:[WP01]『夜中の客』:
From:久志


 久志です。
いつぞやのチャットからネタ起こしてみました。

#吉GUYしゃん、こじちゃん借りたよー

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エピソード『夜中の客』
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人物紹介 
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 呉敏也(くれ・としや): 
    :終末の住人、「指」のトラウマに囚われた男
 八島小次郎(やしま・こじろう): 
    :覚醒したばかりの終末の狩人。 

一人
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 寝付けない夜だった。
 眠れないワリにはいい曲も浮かばないし、詞もひらめかない。
 いつもは大抵一緒にいる鉄人も今日はいない、奇子はもう寝ているだろう。
芽衣子は子供を寝かしつかせてるのだろう。

 つまるところ、一人でアジトの側にあるブロック塀に腰掛けていた。
 あたりに人の気配はない。いや、ここにトシヤ以外の人間はいない。

 トシヤ    :「足りない」

 苦々しくつぶやいた。
 情報が足りない、仲間が足りない、自分に力が足りない。

 左手の小指を噛もうとして……指が無いのに苦笑する。

 トシヤ    :「まだ慣れねえのかよ」

 イライラした時、焦りを感じている時に左手の小指の先を噛むのはトシヤの
小さい頃からの癖だった。しかし一年前、その指はもっとも信頼していた仲間
の手によって切り落とされた。

 トシヤ    :「くそったれが……誰がアイツを狂わせやがった」

 ぎりっと親指の爪を噛み締める。しかし、それでも心の奥に沈んだものは収
まらない。

 トシヤ    :「畜生、いったい何が起こってやがる……」

 見上げた空にはじっと止まったままの月。
 己で作り上げた領域、まったく現実と変らない風景が広がっている。しかし、
これは偽の世界。どれほど破壊しようと、領域を解放してしまえば幻のように
消える。

 情報が足りない。
 なぜ領域があるのか、何の為に領域を作る者がいるのか、なぜ時が回るのか。

 ……なぜ、あいつが狂ったのか。

 探さねばならない、本当に自分を裏切らない仲間を。

 その為に領域を探る。
 領域を張ることと探ることに関しては、かなり自信がある。

 トシヤ    :「……今日は実り無しか」

 両肩の力を抜く、そう簡単には仲間になり得る奴はいない。
 一年かけて見つけられたのは数人、そして仲間に加わったのは三人。

 トシヤ    :「しゃあねえな、眠くもねえけど寝るか」


狩人
----

 小次郎    :「結界? やつか!?」

 小次郎がその小さな結界を感知したのは水稚の訓練の賜物だろうか。未だに
結界をうまく操れない小次郎だったが感知についてはそれなりにこなすことが
できる。

 小次郎    :「奴でなくとも、結界能力者なら、奴のことをなにか知っ
        :ているかも。」

 迷いはない。結界もさほど強く張られたものでもないようだ。

 小次郎の姿が路地の中ほどで消えた。


夜中の客
--------

 目の前に現れた男に一瞬呆気にとられた。、

 トシヤ    :「へえ、めずらしいな………お客さんか」
 小次郎    :「(……奴じゃないのか。)」
 トシヤ    :「どしたよ、ぼーっとしてよ」
 小次郎    :「…………」

 年の頃はさほど変らない。
 そのわりにはギラギラした目の奥に年不相応な暗い何かを感じる。

 トシヤ    :「……(コイツなんか背負ってんな、でも、まだ青いな)」

 ひょいと座っていたブロック塀から飛び降り、黙ったままの男の前に立つ。

 トシヤ    :「おいおい、挨拶もなしかい?」
 小次郎    :「……人違いだった。悪かったな。」
 トシヤ    :「人違い、か………」

 なんとなく、奴の目的が読めた。

 トシヤ    :「探し人は領域を持ってる奴、か」
 小次郎    :「領域……? 奴のことを知っているのか?」
 トシヤ    :「アンタのいう奴とは違うな、でも、領域を持つものはま
        :だまだいるぜ」
 小次郎    :「俺が追っているのは……髪が長くて、竹刀の袋に日本刀
        :を入れて持ち歩いている。」
 小次郎    :「心当たりはないか?」
 トシヤ    :「……随分変わった奴だな、残念ながらオレの知りあいに
        :はいない、けど、これから見つけるかもしれないけどな」
 小次郎    :「……そうか。……邪魔したな。」

 わかりやすい反応だ。こういった奴はちょっとつついてやったほうが面白い
かもしれない。

 トシヤ    :「悪いな、役に立たなくて。……そうだな、もしオレが見
        :つけたらアンタに教えてやるよ」
 小次郎    :「……ああ、そうしてくれるとありがたい。」
 トシヤ    :「……アンタの名は?」
 小次郎    :「八島小次郎。お前は?」
 トシヤ    :「小次郎か、オレは呉敏也」
 小次郎    :「トシヤか……。」
 トシヤ    :「ああ、オレは大抵ここで曲を作ってる」

 思った通り、正攻法には弱い。

 トシヤ    :「オレもアンタみたいに領域をもった探してるから、な」
 小次郎    :「俺に会うなら、新宿の月影って喫茶店に連絡をとってくれ」
 トシヤ    :「わかった」

 じゃあ、と言いたげな奴を呼び止めてみる。

 トシヤ    :「……なあ、アンタなにを急いでるんだい?」
 小次郎    :「…………(黙)」
 トシヤ    :「なんかワケありっぽいけどよ、早死にするぜ?
        :……ま、死にかけなきゃわかんねえかもしんないけどさ」
 小次郎    :「…………(不機嫌な表情)」

 とたんに目が睨んでいる。どうやらちょっと痛いところをついてしまったら
しい。

 トシヤ    :「気ぃ悪くしたかな?それとも思うフシありってか?
        :……けど、死にかけた奴が言ってんだから、多少は信用で
        :きるぜ」
 小次郎    :「…………(黙)」

 黙ったまま、奴は唇を噛んだように見えた。

 トシヤ    :「じゃあな、呼び止めて悪かった」
 小次郎    :「……ああ」

 奴の姿が消えた。領域から抜けたのだろう。悪い奴ではないのかもしれない
が、仲間にするには奴はわかりやすすぎる。どっかがとち狂ったオレ達の仲間
には向いていないかもしれない。

 トシヤ    :「とりあえず憶えておくぜ、八島」

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いじょ

 トシヤの独白とこじちゃんとの出会いっす。
しっかし、やっぱりこじちゃんをからかってるな(^^;)



    

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