[KATARIBE 19543] [WP01] 『時計仕掛けのオレンジ』

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Date: Wed, 14 Jun 2000 21:00:20 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19543] [WP01] 『時計仕掛けのオレンジ』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200006141200.VAA22714@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 19543

2000年06月14日:21時00分20秒
Sub:[WP01]『時計仕掛けのオレンジ』:
From:久志


 久志です。
うわぁ、WP書いてるよ!しかも全然終末ってないし(滅)

#以前IRCでネタだけ出てきた指くんのお話です(でてないけど)

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『時計仕掛けのオレンジ』
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登場人物
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 碓氷奏雅(うすい・そうが)
    :終末の住人、水神に祟られている。フリーライター
 殿間篤史(とのま・あつし)
    :奏雅の知り合いのカメラマン

本編
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 渋谷駅についた頃には、雨は小降りになっていた。
 駅の改札を出て、人であふれかえるハチ公前をすり抜け、信号が青に変るの
を待つ。腕時計を確認、約束の時間にはまだ余裕がある。
 折り畳みの傘をたたんで横断歩道を渡る、まだ雨は降っているが待ち合わせ
の店はすぐ側だ。そのまま通りに少し入ったところにあるビルへと足を運び、
地下の階段を降りていく。

 SE     :カラン
 店員     :「いらっしゃいませ」

 夕食時、酒の場に来るにはまだ時間帯として少し早い。店内には客は数人程
度しかいなかった。

 店員     :「ご注文はなんになさいますか?」
 奏雅     :「時計仕掛けのオレンジ」
 店員     :「かしこまりました」

 この店では、すべてのカクテルに映画のタイトルの名前につけられている。
しかもメニューには一切説明が書かれていない。そのタイトルの映画のイメー
ジにあったカクテルをアレンジして出すというなかなか面白いことをしている。
以前取材に訪れて以来、気に入って何度となく通うよなった、待ち合わせの時
は大抵ここ使っている。
 音もなく店員がテーブルから離れ、同時に小さくドアベルの音が聞こえた。

 殿間     :「こんばんは奏雅さん、早いですね」
 奏雅     :「まあね。今日はインタビュー二本だけだったから、結構
        :「余裕あったの」
 殿間     :「そうですか。よかった、仕事早めに終わらせといて」
 奏雅     :「あとで編集長にこづかれないようにね」
 殿間     :「大丈夫ですよ、明日からまた撮影ぎっちりはいってます
        :から。すいません、戦場にかける橋お願いします」
 店員     :「かしこまりました」

 程なく、グラスが二つ、テーブルの上に並んだ。

 奏雅     :「どう?調子は」
 殿間     :「結構評判いいですよ、最近は編集部でもヒヨッコ扱いさ
        :れなくなってきましたから」
 奏雅     :「だからって舐めてると怖いからね、妥協しない人なんだ
        :から。そういえば、今度の撮影って新作特集の奴?」
 殿間     :「ええ、やっと俺にも一人前に仕事が回ってくるようにな
        :りましたよ」
 奏雅     :「そうね、でも走りすぎは禁物」

 本当は去年から、その前からがんばっていたはずだ。

 殿間くん。
 今年から某誌のカメラマンとして一緒に仕事をしている。
 本当ならば去年の新人のはず。

 今年の新人、去年も新人……

 それを知るのはごく一握りの人のみ。

 殿間     :「でも、ここ面白いですね。映画のタイトルってとこが」
 奏雅     :「なかなか洒落てるでしょ、結構気に入ってるの。で、あ
        :の件どうなったかな?」
 殿間     :「そうそう、これです」

 鞄から数枚の紙とぼろぼろのチラシ、一枚の写真を取り出した。
 写真をつまみあげる、映っているのは十代後半か二十代前半程の男。

 奏雅     :「もっと派手かと思ってたけど……そうでもないのね」
 殿間     :「ええ、でもここいらの女の子には結構顔が通じますよ、
        :スゴイ人気です」

 確かに、顔は整っているものの手放しに美形だというわけでもなく、服装や
メイクでの派手さもないが、それ以外に内からにじみ出るような何かがある、
よくいうスター性だとか存在感とかそういった類のものか。

 奏雅     :「確かに言葉にし辛いけど、彼に魅力があるのは確かね」
 殿間     :「ええ、それとこれがライブのチラシです」

 手渡されたチラシにはライブ風景のモノクロ印刷と、時間、バンドに関する
簡単な説明がかかれていた。

 奏雅     :「ヴォーカルのトシヤ、作詞作曲はほとんどこの子ね」
 殿間     :「ライブに来てる子の九割はトシヤファンですよ、それも
        :女の子ばかりでなくて男のファンもかなり熱狂的らしいで
        :すよ、特に彼に親しい取り巻きはほとんど男だそうです」
 奏雅     :「めずらしいわね。特に男性ウケしやすいようには見えな
        :いけれど、まさか……」
 殿間     :「いえ、そっち系でも両刀でも無いらしいです。単に惚れ
        :こんでるっていうか、なんか宗教じみた感がありますね」
 奏雅     :「なるほど、めずらしくはないわね」
 殿間     :「……ええ、でも」
 奏雅     :「でも?」
 殿間     :「ちょっとヤバイ話なんですけど」

 一瞬あたりをうかがうようにちらりと見回した。

 殿間     :「このバンドのっていうか、トシヤの熱狂的なファン達っ
        :て宗教を通りこしてなんかヤバイんですよ。まるで黒ミサ
        :みたいな集会をひらいたり、側近になるための儀式があっ
        :たり、話によると集会の場でドラッグが配られたりするら
        :しいです」
 奏雅     :「儀式か、秘密結社にでも入ったつもりなのかしらね」
 殿間     :「いや、そんなもんじゃないですよ……儀式ってのが」
 奏雅     :「どうしたの?」
 殿間     :「実際に参加している子をみたわけじゃないですけど、
        :このトシヤの側近になるための儀式っていうのが」

 殿間     :「自分で自分の左手の小指を切断する、そうです」
 奏雅     :「!」

 思わず息を飲んだ。他愛の無い宗教ごっこのように思っていたが、これは穏
やかでない、宗教どころか黒魔術の生け贄のようだ。

 奏雅     :「……尋常じゃないわね」
 殿間     :「ええ、さすがにここまでするとなると」
 奏雅     :「なんだか興味が湧いてきたわ、少し、調べてみる価値が
        :ありそうね」

 とん、と写真を指先で叩いた。

 指切断。
 それだけの儀式で安易に仲間に加わる者は少数だろう、しかしその分彼らの
結束力は半端ではないだろう。何か深いものがありそうな気がする。

 このトシヤという少年に何があるのか?
 異常な入会儀式をさせて何をしたいのか?

 奏雅     :「ありがとう、ちょっと仕事を詰めて調べてみる。この子
        :の何がそこまで人を惹きつけたのか気になるしね」
 殿間     :「ええ、俺もできる限り協力しますよ」

 手をつけないままおいてあったグラスを取り上げて、一息に飲み干した。

解説
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 仕事仲間より、謎の少年の情報を得る奏雅。この後、謎の少年を調査していくこ
とになるが……
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いじょ

 まーなんというか普通のお仕事な風景を書こうかな、と(^^;)
ちなみに話に出てるカクテルのお店は渋谷に実在してたりする(笑)


    

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