[KATARIBE 19091] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第五章再編集版

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sat, 20 May 2000 17:27:55 +0900
From: "球形弐型" <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 19091] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第五章再編集版
To: "ML" <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <00a101bfc235$50232900$5b099dd2@computer>
X-Mail-Count: 19091

======================================================================
[HA06][Novel] 『11年目の真実』
======================================================================
第五章 『遺跡の向こうに…』
===========================

 私は、伊佐見泰三…大学で助教授をしている。
 専攻は考古学…今では、世界中を飛び回って、あちらこちらの遺跡調査をし
ている。
 周りのみんなは、アクティブな研究者だと言っているが…何、要はじっとし
ているのとデスクワークが嫌いなだけだ。

 こんな私を可愛がってくれる人が居る…。
 私は彼を師と仰いでいる。
 それが木原教授だ。
 そんな彼が取り憑かれた『加由羅』とは…。

******************************

昭和62年 冬…

 私は、東京に居た。
 その頃の私は、木原教授と同じ大学にいたのだ。
 それと言うもの、木原教授が私と共に研究したいと言ったらしいので、私は
同じ大学へと来ることとなった。誠に有り難い話だ…。
 そして私は、殺風景な研究室で、嫌なデスクワークをしていた…。

 「うーむ……あー、止めだっ!、止め…。」

 私は、デスクワークに嫌気がさし、その場で放り投げた。
 と言っても、誰かがやってくれる訳ではない。やっぱり私がやるしかないの
だ。

 「はーっ…早くどこかの調査に行きたいものだ…。」

 私は、溜まった書類を憎々しげに眺めながら呟いた。

 コン、コン…
 その時、研究室のドアと叩く音がした。私は、「はい」と言って答える。
 すると、ドアを開けて入ってきたのは、私の恩師、木原教授だった。

 「あー、伊佐見君、ちょっといいかね?」
 「ああ、木原先生…いいですよ、今、書類整理が一段落した所なんで。」

 本当は、書類整理などほとんどやっていない。
 まぁ、木原先生と話をするもの、気分転換にはいいだろう…私は、そう自分
を納得させた。

 「話と言うのは…実は、吹利である遺跡を調査したいのだよ。」
 「吹利に遺跡?……と言いますと?」
 「ほら…前にも一回話しをしただろう?あれだよ。」
 「…もしかして…『加由羅』ですか?」
 「ああ…その『加由羅』だよ。」

 加由羅…それは、木原先生が数年前から、吹利で探している遺跡のことだ。
 詳しいことは、私もよく分かっていないが、何でも歴史的発見の価値がある
ものだそうだ。

 「それって、伊吹山付近に作っている公園の工事中に見つけたと言う奴です
 かね?」
 「ああ、その通りだよ。……とうとう、その『加由羅』の発掘調査の辞令が
 降りたんだ。」
 「へー、それは、おめでとう御座います先生。」

 私は心から、先生に祝福の声をかけた。

 「ついては、伊佐見君にお願いがあるのだよ。」

 木原先生は、急に真剣な顔立ちで、私に話しかけて来た。

 「そんな…改まってお願いだなんて…私は先生の為なら、何でも協力します
 よ。」
 「実は…二つお願いがあるのだ。」
 「二つ?……いやー、先生の頼みなら、二つでも三つでも好きなだけ構いま
 せんが。」

 私は、苦笑いを浮かべる。

 「一つは…今回の発掘調査に君も参加して欲しいんだよ。」
 「そりゃ、願っても無いことです。こちらからお願いしたいくらいですのに
 ……で、二つ目とは?」
 「実は…誠に言いにくいこと何だが……資金のことなんだよ…。」
 「資金?」
 「ああ…実は、辞令が降りたことは降りたんだが……経費が足りないかも知
 れないのだよ。」
 「ほほう…しかし、大学もケチですなぁ…もっとぱーっと出してくれてもい
 いのに。」
 「確か、伊佐見君の家は、資産家だったと聞いたんでな…。」
 「資産家だなんて……そんな大層なものじゃないですよ。」

 まぁ、確かに、私の家系は元々武家の家柄で、戦前はかなりの土地を所有し
ていたと聞いたけど、今では、その半分も無い。と言っても、普通の人から見
れば、余裕があるだろうと思うが……。

 「うーん……まぁ、時と場合によっては、資金提供もしますが…そんなに予
 算が足りないんですか?」
 「いや、それほど深刻な問題でもない。ただ、今回の調査自体、まだはっき
 りした歴史的根拠に基づく遺跡の調査では無いんでなぁ…。」
 「はぁ…。」
 「歴史的価値が無いと分かれば、大学側も資金を削減してしまうことだろう
 ……が、今回ばかりは、中途半端に終わらせたく無いのだよ。」
 「そうですか…うーん…まぁ、そこまで言うなら、助力は惜しみませんが…」
 「……理由を聞きたいかね?」
 「出来れば……あ、言いたくないなら、別に良いですよ。私は、そんなに心
 の狭い男じゃないですから。」

 木原先生の『加由羅』に対する思いは、かなりのものだ…私は、先生の話を
聞いてて、それがはっきりと分かっていた……いや、もしかしたら、私が、単
なるお人好しなのかもしれない……。

 「すまないね、伊佐見君……。理由を言ってもいいのだが…これから言う話
 を信じてくれるかね?」
 「……分かりました、心して聞きますよ。」

 木原先生は、『加由羅』に取り憑かれた経緯を、私に話し始めた…。
 幼い頃出会った少女のこと、少女から貰った「かけら」のこと、その他色々
なことを、私に話てくれた。
 確かに、先生の話だけを聞いたなら、馬鹿げてると言う人も多いだろう。
 だが、私は、先生ほどの人格者が、夢幻の出来事だけを鵜呑みのして、今回
の調査をしている訳がない……やっぱり私は、ただのお人好しなのだろうか?

 「分かりましたよ、先生。要は、その遺跡を調査してみれば、全てが分かる
 でしょう。それだけのことですよ。」
 「すまない、伊佐見君…。」

 木原先生は、私に深々とお辞儀をして、謝っていた。
 私は、そんなことより、その『加由羅』の方の興味が湧いてきた……と言う
より、今のデスクワークから逃れたいだけかもしれないが…。

******************************

昭和63年 春…

 吹利県伊吹山……
 
 その頃、『加由羅』遺跡の発掘は既に行われていた。
 幾つかの出土品も出てきている。が、しかし…どうも、木原先生の言ってい
たものとは違っていた様だ。
 私が見るに、この発掘した出土品は、恐らく縄文時代の物だろう。

 「……違うな……こんな物じゃない…。」

 先生が、何かを噛みしめる様に呟いていた。

 「違うんですか……困りましたね。」
 「うむ……まぁ、この吹利にも縄文時代に、集落が存在したと言う証明には
 なったがな……。」

 先生は、腑に落ちない趣の様だった。先生の言っていたのは、もっと高度な
文明の様に聞こえた。とても、こんなありがちな遺跡ではないはずだ。
 と言っても、これだけでも十分歴史的価値はあるのだが…。

 「やはり……長期戦になりそうだな…。」
 「そうですな……。」

 私は、先生の言っていた「中途半端に終わらせたくない」と言う言葉を思い
出した。
 本当、このままでは、長期戦になりかねない…。遺跡はあるのだが、求めて
いたものと違う……こんな例は、世界でも珍しく無いものだが…、少なくとも、
私は今までのこんなことを味わったことが無かった。

 「まぁ、仕方ないですな。やれるだけのことはやりましょう。」

 私は、先生を励ます様に言ってみせた。遺跡調査とは、こんなにも難しいも
のだったのだ…私は、改めてそう実感せずにはいられなかった。

******************************

昭和63年 初夏…

 まだ、『加由羅』の発掘調査は終わってない…。
 しかし、未だに先生の言っている文明に関する出土品はおろか、痕跡も発見
出来ていない。
 やはり、先生の言っていたことは、夢幻のことだったのか…。いや、そんな
ことはないはずだ……とにかく、今はやれるだけのことをするだけだ。

 「先生……ちょっと休みましょうよ。」
 「ん?……ああ、そうだな、少し休むか…。」

 私は、休憩所へと足を運んだ。

 「うーむ……間違いだったのか…いやいや…。」

 先生は、何やら独り言を言っている様だ。私は、何とかして先生の願いを果
たしたい…。
 しかし、こうも当てが外れると、何を言って励ましてあげればいいのか分か
らない…。

 「先生……場合によっては……。」
 「……いや、私は諦めんぞ……諦める訳にはいかないのだ。」
 「しかし……」

 その時だった……調査隊の一人が、私たちを呼んでいたのだった。
 私たちは慌てて駆けつける……。

 「教授!!こっちです、こっち。」

 教授の助手である、三木君が何かを発見した様だ。
 その場所は、実際に調査している場所より、更に伊吹神社よりの方だった。

 「こ、これは!?……」

 そこには、ぽっかりと穴が空いていた。しかし、意外に大きな穴だ。人が入
れるくらいはあるだろう。

 「先生……もしかして、これが…。」
 「ああ……かもしれん。」

 見た目でも、人工的に掘った穴だと言うことが、私たちには分かった。

 「実は……出土品を掘り出してした時、随分大きな岩が出てきたので、邪魔
 だと思い退けてみたら、いきなりこんな穴がぽっかり空いていたんです。」

 そこは少しなだらかな、斜面になっていた。だが、その辺り一帯は、最低で
も10m以上掘っているはず……この辺り一帯で、10m以上の位置なら、多
分、縄文期以前だろう。
 私は、掘り起こした岩を見てみる…、岩と言うより…何かの蓋の様にも感じ
る…。
 色々な角度から見てみる……うーむ…自然の岩だが…何か手を加えた感じが
する。

 「……やはり、私の探していた『加由羅』だよ…」

 そう言った先生の視線の先にある壁には……何かの模様が書かれていたのだ
った…。

                               つづく
======================================================================
------------------------------------------------------------

球形弐型こと「伊沢英人」

メール BallMk-2@trpg.net

<ひでSWANの暇つぶしに出来たHP>
http://www.interq.or.jp/www1/hi-izawa/index.htm

雑談所    :
http://www.tsm.gr.jp/cgi/pt.cgi?room=3658
TRPG掲示板:
http://hyper4.amuser-net.ne.jp/~auto/b13/usr/me111703/brd1/bbs.cgi

******************************
  IRCサーバ「sv.trpg.net」 チャンネル「#スパロボRPG」に
  おいて、オンラインセッション用スパロボRPGルール作成中!
******************************

5月のつぶやき

「自己完結は、その時点で既に、思考が止まっているとも言える」
------------------------------------------------------------


    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage