[KATARIBE 19089] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第三章再編集版

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Date: Sat, 20 May 2000 17:27:33 +0900
From: "球形弐型" <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 19089] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第三章再編集版
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[HA06][Novel] 『11年目の真実』
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第三章 『約束を果たす為に…』
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昭和60年 冬…

 私は吹利に居た…。
 少女との約束を果たしたい…その理由だけで、又吹利に戻って来たのだ。
 しかし、この一年半、これと言って収穫は無いも同然だった。
 結局、あの少女から貰った「かけら」だけが頼みの綱となっていた。

 あの日から、私は吹利に度々戻っては、何かの「きっかけ」を探していた。
 いくつもの文献を漁り、いくつもの社を訪ね……
 それでも、少女に繋がる「きっかけ」を見つけることは出来なかった。

 「ふう…やはり、ただの幻だったのか…」

 私は「かけら」を見つめながら、ふと呟いてみる…。
 一体この「かけら」は何なのか?私は、考古学的に考えながら、これが何か
の文明を示すものだと、目星は付けていた。
 だが、如何せん「かけら」に書かれた模様だけでは、それが何を示すものな
のか私には、其処までは分からない…。
 少女との約束を果たせぬまま、ただ、徒に時は過ぎていた。

 「どうしました、賢治兄さん?」

 私の従弟の晴樹だ。
 両親が既に他界した私には、吹利に家は無い。
 だから、吹利に来た時は、従弟の晴樹の家に厄介となる他無いのだ。

 「そうそう、賢治兄さんが言ってた物、借りてきましたよ。」

 私は、晴樹に吹利にまつわる文献があるかどうか、探してもらっていた。
 晴樹は、知り合いにお願いして、集められるだけの文献を集めてもらってい
るのだ。

 「ああ、悪いね晴樹。其処に置いといてくれ。」
 「しかし、賢治兄さんも研究熱心だねぇ。何も田舎に帰って来てまで、文献
 を漁ることないのに…。」
 「うーむ…いやどうしても調べておきたいことが有ってな……。」

 晴樹の持ってきた文献を傍らに置き、私は一息ついた。
 ごろっと、畳に寝転がり、天井を見ながら物思いにふけこむ…。

 「賢治兄さん、あまり根を詰めると体に良く無いですよ。」
 「…ああ。」
 「気晴らしに散歩にでも出かけたらどうです?今日は日が出て暖かいですか
 ら、散歩日寄りですよ。」
 「…ふむ、そうだな。」

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 私は晴樹の薦めもあって、散歩に出かけることにした。
 吹利は四方を山に囲まれ、冬は寒い。今日はいつもより暖かいと言っても、
東京に比べたら、まだまだ寒い方だ。

 「そうだな…久しぶりに町中にでも行ってみるか……。」

 私は、吹利の中町まで、足を伸ばしてみることにした。
 吹利中町は、元々吹利の中心街で、私の若い頃は活気に溢れていたものだ。
 最近は、近代化の波に押されて、昔ほどでは無くなってしまった様だ。
 昔ながらの建物が建ち並ぶ、趣のある町並みとなっている。
 その中を歩いていく…。私はふとした表示に気づいた。

 『吹利県立民俗資料館』

 私の子供の頃には、こんな所無かったな……。
 建物の外観から言って、多分、古い銀行か何かを改装し、利用しているものだろ
う。
 ……民俗資料か…此処に何か「きっかけ」はないだろうか?
 と思うと、私は中へと入っていった。

 「…すいません…誰か居りませんか?…」

 私は、中へと入った後、人が居ないか呼んでみた。
 ……しかし、返事はない。
 仕方がないので、もう一度呼んでみる…。
 ……暫くすると、奥の方でガタンと音がして、人が出てきた。

 「よいしょ……あー、はいはい……えっと……何でしょう?」

 男は、山積みの本を抱えて、私の前に現れた。
 見た目は、私と同い年くらいの初老の男だ。私は用件を彼に言ってみる。

 「私は、東京の某大学で教授をしている『木原』と言うものです。」

 と言って、私は彼に名刺を渡した。

 「……ほうほう、考古学者なのですか?……なるほど。それで、何か御用で
 すか?」
 「ええ、実は、とある資料を探しているのです。」
 「とある資料?……と言いますと?」
 「実は、吹利に纏わる昔の文献を探しているのです。」
 「昔と言いましても、どのくらいの時代のものでしようか?」
 「まぁ、なるべく昔……出来る限り昔の資料が欲しいのです。……そうです
 ねぇ…少なくとも、南北朝時代よりは前になると思います。」

 南北朝時代より前…それについての根拠は無い。ただ、私の知る限り、あの
「かけら」に書かれた模様が、それより後の時代には無いものだと言う感じだ
った。

 「はっはっはっ…いくら何でも、そんなに古い文献は無いですよ。」
 「いや、それより古い時代のことが書かれている物で良いのですよ。」
 「そうですか…そうですねぇ…」

 と言うと、男は暫く考えてから…。

 「…まぁ、無くはないですが、ちょっと待ってください…。」

 男は、そう言うと、奥に入って行った。
 暫くして、男がドアから顔を出して、私を手招きする。
 私はそれに従って、奥へと入ってみた。

 「いやー、今、新館を建設してましてね、それに伴って、この旧館の書物の
 整理をしてるんですよ。」
 「ほう…」

 ふと見渡すと、あちらこちらに本が山積みになって、散らかっている。
 男と話しながら、私は奥へ奥へと歩いていった。

 「ここですよ。……ちょっと待ってください。」

 と男は、ポケットから鍵を出し、掛かっている鍵を外した。
 其処には「民族資料室」と言うプレートが書かれていた。

 「そうですねぇ、南北朝時代より古いとは限らないと思いますが、時代が不
 確定な物や、時代背景が掴めていない古代資料などなら、此処に有る物だけ
 ですね。」

 男は、そう言って私を中へ案内した。

 「ほほう…これはこれは…。」
 「ただ、民話紛いな物ばかりなのでねぇ…ご参考になるかどうか…。」
 「いえいえ、そんなことはありませんよ……。」

 この日から私は、数日の間、この資料館に通うことにした。

******************************

 数日経ったある日のこと…。
 私は、いつもの様に、この「民族資料室」に隠って調べていた。
 ここに有る物は、主にこの吹利に纏わる伝説や民話など…民話紛い所の騒ぎ
では無い。
 正に、そのものと言う資料ばかりだろう。
 だが、行き詰まっている私には、もう、伝説や民話レベルでの資料探ししか
残されていなかった。
 どんな「きっかけ」だって良い。そう縋る以外に道はない。
 などと思いつつ、既にここに来て数日経っているのだ。たが、未だ道は開け
ていない。

 「うーむ……必ず『少女』に繋がるきっかけはあるはずなのだ…。」

 などと、呟きつつ…

 「……おや?これはなんだろう?」

 私は、一つの書物の中から、何かとっかかるものを感じた。
 それは、民話として語り継がれている物らしい。
 ある国の姫が、国の滅びようとしている時に生け贄として、神に捧げられた
と言う話の様だ。
 その時に王は、何時か姫が蘇ることが出来る様にと、魂を一緒に封じ込めた
と言うことになっている。
そして、その魂が「加由羅」付近にて、彷徨っていると言うことらしい。
 「加由羅」とは、かなり昔の伊吹山周辺の地名らしい。
 何となく、胡散臭い気もするが……何故かとっかかりを感じたのだった。
 そう思いつつ、私はその本をペラペラと捲っていく…。

 「ん?……こ、これは!?」

 私は、驚愕した…。なんと、その本には、少女から貰った「かけら」に書い
てある模様と同じ模様が書かれていたページが有ったのだ。
 どうやら、その模様はその「国」を象徴するものの様だ。

 「……しかし……いや、間違い無いだろう…だが…。」

 如何せん、民話である。民話と言うのは、何かの根拠があって成り立つもの
だが、あまりにも、この場合根拠が無さ過ぎるとも言える。
 その時、私は少女の声を聞いた…。

 「約束だよ…」

 私は、心で少女が呼んだと思い、ふと天井を見上げる…。
 そう、私は約束を果たさねばならないのだった…。

 「約束だからね、賢治君…」

 いや、空耳では無い……、私は振り向くと、其処に少女が立っていた。

 「……き、君は、一体……」
 「約束……守ってくれるよね?」
 「……ああ、守る…絶対、守るとも…」
 「良かった……」

 少女は安心した様に、微笑みながらすーっと消えていった…。

******************************

―――――加由羅と少女

 その日から、私の「加由羅」探しが始まった。
 だが、私は、このことを論文にしてみたが、あまりにも根拠が無い。
 あるのは分かっている……だが、存在を実証出来ない…。
 こんな根拠ない話に、大学が金を出してくれるはずも無い。
 私は、悶々とした日々を送るより仕方がなかった…。
 そう、昭和62年の「あの出来事」が来るまでは……。

                        つづく
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球形弐型こと「伊沢英人」

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5月のつぶやき

「自己完結は、その時点で既に、思考が止まっているとも言える」
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