[KATARIBE 19088] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第二章再編集版

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Date: Sat, 20 May 2000 17:27:24 +0900
From: "球形弐型" <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 19088] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第二章再編集版
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[HA06N][Novel] 『11年目の真実』
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第二章 『再会』
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昭和59年 夏…

 「おお、由依ちゃんじゃないかね。大きくなったなぁ。」
 「こんにちは、木原のおじちゃん。」

 私を呼び止めたのは、私の従弟の娘の由依ちゃんだった。
 私は一人っ子なので、両親も既に他界したこの吹利に自分の家は無い。
 だから私は、ここ十数年、里帰りなどしなかったのだった。
 だが、今回は何かが私を里帰りさせたいと心を駆り立てる。
 それは、あの「少女」のせいだろう。

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 その夜から暫くの間、私は従弟の家に厄介となることとなった。
 次の日、昔の幼なじみ達と出会って、宴会をしようと言う話になった。
 さながら同窓会と言ったところだろう。
 ただ、私は数年前に肝臓を悪くして、酒を止めてしまった。
 でも、昔の仲間と語り合えると言うのは、酒が無くても私は嬉しかった。

 「いやー、けんちゃん久しぶりやのう」
 「おぉ、懐かしい、会うのは何年ぶりかな〜……」

 などと、お決まりの文句を言う。そして、子供の頃の話に華を咲かせた。
 川で遊んだこと、山で木登りをしたこと、近所の小うるさい爺さんの家に悪
戯したこと…全て懐かしい思い出だった。

 「そういや、けんちゃん、昔よう伊吹山に登っとったなぁ」
 「お? そうだったか?」
 「子供の頃……せやな、確か小学校の頃やったと思うんやが……親に黙って
 伊吹山によう登っとったって、自慢しとったやないかい」
 「そうだったかなぁ……もう忘れたよ……」

 私は、苦笑しながら曖昧に答えた。戻ってきた理由が「その伊吹山での話」
なんて言えるわけもない。
 確かに、私は伊吹山に登っていたのは自慢していた記憶はあった。
 がしかし、少女については誰にも言ってない。
 当時は、恥ずかしくて少女のことなど人に言えるはずもない。もっとも今と
なっては、誰も信じてくれないだろうし……。

 「伊吹山っつーたら、なんや公園を作る話が出てるそうやで」
 「ほほう、あんな山の中に公園かね?」
 「よう知らんけど、学園都市化事業の一環やいうて、あちこち工事しとるん
 やわ」

 幼なじみ達との思い出話…私は、やはり伊吹山に登ってみたくなった。
 年のことを考えると、普段ならそんなことは思いもつかないだろう…。
 がしかし、登ってみたい…そして、会えるなら会ってみたいものだ…あの
「少女」に…。

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 暫く経ったある日の夜、私は又あの「夢」を見た。
 夢の中で少女は、ひたすらあの「言葉」を繰り返していた。

 『少女:「約束だよ…」』

 どうして、少女は私に助けを求めたのか…。
 腑に落ちず、何度も何度も考えていた。だか、答えは見つからない…。
 私は、焦りと苛立ちにも似た感覚に襲われていた。
 どうしても答えを見つけたい。何故、そんなに考えるのか?…
 それは、今の私にも分からない…、が、少女の言葉だけが耳から離れることは無
かった。

 「…良し、伊吹山に登ってみるか…」

 私はそう決心する。
 もっとも、伊吹山に登ったからと言って、答えが見つかるとは限らない。
 だが、心の取っ掛かりくらいは取れるだろう。そう私は考えた。

******************************

 次の日、私は先祖の墓参りの後、伊吹山へと向かう。
 今では、道も整備され、登るのには楽だ…と言っても山道は年寄りには堪え
るものだ。

 「ふぅ〜…しかし、良くこの山を登ったものだなぁ…」

 私は、流れる汗を拭いながら、ふとぼやく…。
 子供の頃とは言え、子供の体力で良くこの山に登れたものだと、子供の頃の
自分に関心していた。
 都会に慣れた、初老の私には、流石に山道は辛いものだ。
 しかし、心の蟠りを晴らすには、この伊吹山を登るしかなかった。

 歩くこと2時間…私は、とうとう伊吹の頂に登ることが出来た。
 其処には、相変わらず「伊吹神社」がそびえ立っていた。
 と言っても、子供の頃見た伊吹神社では無い。
 その社は、数年前にでも新しく立て直したのだろか。
 そこから見える景色も、変わらないのは山並みだけ…伊吹山の頂から見える
吹利は、子供の頃見た景色とは大分違いを見せていた。
 吹利の中心街は、ビルが建ち並び、あちらこちらに空き地も目立っている。

 そして、私の目指す「頂」これからもう少し奥に行ったところにあるのだっ
た。
 更に奥に進む…暫くして、こそに「何かを祭っているモノ」が見えた。
 一体何を祭っているのかは、未だに私にも分からない。

 「はぁ、はぁ…ここだ、ここだ。」

 私は息を整え、其処へしゃがみ込んで、見える景色を眺めた…。
 そして、変わらない眺め…社も山並みも…そして、少女も…。

 ……少女も?

 私は目を疑った…。
 そう、其処には昔と変わらないままの、あの少女が立っていたのだった。

 「こんにちは、賢治君…」
 「き、君は?……」

 そして、私は少女と再会することが出来たのだった…。
 だが、この歳にになっては、その現状を理解することが出来ない
 子供の頃に会った少女…そして、今見ている少女…
 この少女は同じ娘なのか…だが、私のことを「賢治君」と呼んだぞ…。
 一体、何が起こっているのか…私は堅くなった思考を、張り巡らし考えに考
えた。

 「賢治君……変わらないね。」

 その一言で、私は考えるのを止めた。
 ふと、周りの景色が更に輝いて見えてくる…。
 まるで、子供の頃にタイムスリップしたかの様に思えた。

 「や、やあ、又会えたね。」
 「くすくす…約束だからね。」

 確かあの時、少女は私に約束した。

 『また会おうね。』

 そう言ったことを思い出した。
 
 「私との約束覚えてる?」
 「うん、覚えているよ。」
 「そう、良かった…。」

 そう言うと少女は、嬉しそうに微笑んだ後、私の手を取りこう言った。

 「お願い、助けて欲しいの…」
 「…うん、助けるよ。…絶対にね。」

 少女は、事実を語ることは無かった…が、しかし、私には少女が何故助けて
欲しいのか…そして、何処に居るのか…何となく分かった様な気がした。

******************************

―――――少女との再会

 私は不意に目が覚めた。其処は、伊吹神社の前だった。
 日は暮れ、既に辺りは夕刻となっていた。
 その後、私は「頂」へと向かったが…其処には何も無かった…。
 やはりあれは「夢」だったのだろうか?
 ……いや、そんなことは無い。確かに少女は居た。
 そして、私の手には、模様の書かれた、何かの「かけら」があったのだった。

                            つづく
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球形弐型こと「伊沢英人」

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5月のつぶやき

「自己完結は、その時点で既に、思考が止まっているとも言える」
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