[KATARIBE 19087] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第一章再編集版

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Date: Sat, 20 May 2000 17:27:17 +0900
From: "球形弐型" <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 19087] [ HA06N ] [Novel]  『 11 年目の真実』第一章再編集版
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[HA06N][Novel] 『11年目の真実』
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第一章 『忘れられぬ約束』
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昭和59年 春…

 私は研究室に居た…。
 去年発掘作業をした、遺跡のレポートを書くために。
 この頃の私は、東京の某大学の教授をしていた。

 「……まぁ、なんとも懐かしい夢だな。」

 そう、私はさっきまで疲れて眠っていたのだ。
 「夢」…そう、夢を見た…懐かしい…そして、忘れてはならないこと…。

 『少女:「約束だよ…」』

 少女は確かにそう言った。

 「しかし、何故今頃になってこんな夢を見たのだろう?」

 私は多分疲れていたせいで、そんな夢を見たのだと思っていた。
 …少女…それは、摩訶不思議な出会いであった…。
 しかし、あれからその少女には一度も会っていない。
 多分、親が帰ってきたのだ…そう私は、自分に言い聞かせ、少女の後を追う
のを止めた。
 それから、40年ほどの年月が経ち、少女との約束など、当の昔に忘れてい
て大人になり、そして考古学者となっていた。
 私が考古学者になった理由は、これと言って無い。歴史に興味持った…ただ、
それだけのことだった。

 コン、コン……研究室のドアをノックする音がする。

 「せんせー、居ますかー?」
 「ん?ああ、開いてるよ。」

 静寂を破る様に、私の教え子が入ってきた。

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 あの夢を見てから数日…私は、どうにも気になって仕方がなかった。
 少女の『助けて欲しい』と言う言葉が、どうしても頭から離れなかったのだ。
 少女は何を助けて欲しかったのだろう?
 これと言って思い当たる節も無い。もっとも、それほど親しい間柄になった
わけでも無いので、彼女の素性については全く知らない。

 「助けて欲しい…か…。」

 私は、大学の廊下を歩きながら、もう一度その言葉を繰り返してみた。

 「やあ、木原先生。」

 ふと、私の名を呼ぶ人が居る。

 「おぉ、伊佐見君じゃないかね。」
 「お久しぶりですね、先生。」

 伊佐見泰三…元は、私の教え子だった男だ。大学を卒業してからは、私と同
じ考古学の道を歩み、今では世界各国を周り遺跡の調査、発掘をしている。

 「どうしたのかね、こんなところに来るなんて…」
 「いえね、丁度昨日イタリアから帰って来たところなんで、挨拶だけでもと
 思いましてね。」
 「ほうほう、今はイタリアかね?」
 「いや、来週から南米なんですよ。」
 「君も、忙しい身だねぇ…。」
 「ええ、お陰様で。日本に居着くことすら出来ませんよ。」

 伊佐見君は、そう言って私に苦笑いを浮かべる。
 この男、少々変わった所はあるが、なかなか優秀な考古学者である。
 私と違い、日本国内に拘らず、主に国外の文明遺跡を調査しているのだ。

 「先生は、今何の発掘をしているんですか?」
 「ん?…あぁ、今は去年発掘調査をした奴のレポートに追われているよ。」
 「そうですか…大変ですねぇ。」
 「何を言っとる。君の方が、よっぽど大変じゃないか。」

 私のような、研究室に篭って仕事をしているより、世界を飛び回っているの
だ。年寄りには、出来ない仕事である。

 「いやー、まぁ、机の上で書き物してるより、現場で動いている方が、楽で
 すよ。」

 私も年を取った。そろそろ引退して、こういう若い世代に譲る時期に来て
いる。
 そう実感せずにはいられなかった。

 「先生もどうです?今度の南米の遺跡の調査に加わりませんか?」
 「いや…私は、もう国外の調査をやるには、年を取りすぎたよ。」
 「何言ってるんですか。まだ先生は若いですよ。」

 廊下を歩き、研究室へと入る。
 確かに、国外の遺跡に興味が無い訳ではない。しかし、私は国内の遺跡に拘
っている。
 何故かと言うと……別にこれと言って無い。
 多分、国外に出るのが嫌なのだろうか…。私は、やっぱり古い人間なのだ。
 私は、彼にお茶を入れながら、ふと考えてみた。

 「そう言う伊佐見君は、国内には興味が無いのかね?」
 「いえ、そう言うわけではありませんよ。ただ…」
 「ただ?」
 「…ただ、老後の楽しみに取っておこうかと」

 そう言って豪快に笑う。
 老後の楽しみか……確かに、この男なら、死ぬまで現場で働いていることだ
ろう。

 「はっはっはっ…、なら、私は老後の楽しみで、国内の遺跡の調査をしてい
 ることにしておこうか。」

 と、私はお茶を濁してみた。

 「あ、そう言えば、先生って吹利の出身でしたよね?」
 「うむ、そうだが…確か、君もそうだったねぇ。それがどうかしたのかな?」
 「いや…確か、吹利には色々興味深い、古代の文献や神社などがあったなぁ
 と思いましてね。」

 故郷の吹利。
 古い街並を残した小京都で、古代から色々文明が栄えたと言われている。
 だが、どれ一つ取っても、根拠の無い話が多い。

 「ふむ…胡散臭い噂なら、色々知っているがね。」
 「まぁ、考古学とは、そう言う所から、きっかけが出来るモノでしょう?」
 「ふふふ……興味が湧いたら、それとなく調べておくよ。」

 吹利か……私の故郷だ……そう言えば、もう何年も帰っていないことに気づ
く。
 久しぶりに里帰りでもしてみるか…
 私は、何故、少女の夢を今頃見たのか…多分、そろそろ里へ帰ってこいと言
う暗示なのだろう…そう考えてみる。と途端に故郷が恋しく思えた。

******************************

――――懐かしき故郷

 そして、再会の予感…

昭和59年 夏…

 「…おぉ…この駅も久しぶりだな…。」

 蝉の嘶く頃…私は、吹利元町駅に降り立った。
 駅も古いままで、当時の面影を残し、此処だけは時が止まっている気さえ感
じていた。
 懐かしい…私はふとそう思ってみた。

 「あ、あのー……」
 「ん?……私を呼んだかね?」
 「はい。」

 其処には、私を呼び止める少女が居たのだった…。

                       つづく
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球形弐型こと「伊沢英人」

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5月のつぶやき

「自己完結は、その時点で既に、思考が止まっているとも言える」
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