[KATARIBE 19024] [MM02N] 『藁しべ貧者』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Wed, 17 May 2000 20:56:10 +0900
From: kazuki <aaq45040@hkg.odn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 19024] [MM02N] 『藁しべ貧者』
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <392288D7.7C4DCD7A@hkg.odn.ne.jp>
X-Mail-Count: 19024

 軍光一@気分が青い です。
 MMでギャラリーフェイクな真似をする白夜です。
 困ったやっちゃ。

**********************************************************************

MM小説『藁しべ貧者』
===================

大学研究室内作業場にてひとり
----------------------------

 目の前の文書群に目を凝らし、丁寧な手つきで一つ一つ整理していく。和紙を
ちぎり破損部分に補修を加え、汚れている部分を洗浄する。一段落すると台紙を
張り付けて裏打ちをして、次の作業にはいる。
 神経と指先を使う手作業の、非能率的な作業。額に浮かぶ汗を拭き、指ににじ
む汗を拭き、作業を続ける。
 朽ちかけた紙を補修し、洗浄し、裏打ちして体裁を整える。作業前はごみにし
か見えなかったものが、作業により一人前の文書の観を呈するようになる。
 数時間に渡るぶっとおしの前屈姿勢のため、腰が痛い。それでもピンセットを
動かして補修を続け、糊と刷毛を動かして裏打ち行う。
 糊……米から出来るもの。貴重なもの。
 もやは自分のやることに全く価値も生き甲斐も見いだせず、ただ惰性で生き続
ける自分を何となく発見する。
 しかし、手は休めない。

京都にてEU学術文化関連団体の人間と
----------------------------------

「内乱発生から、図書館や多くの研究施設から文化財が散逸することになりまし
たが、これはおそらく京都の常民文化研究所から盗難された文書群だと思われま
す。いぜん京都で見たものに酷似しています。これらの史料はもはやほとんどが
失われたと思われていましたが、一部が偶然保存されていたようです」
「……ええ。そうです。はい。援助は食糧と医薬品立てでお願いします。それで
は」

某地方にて土地の旧家の老人と
----------------------------

「昔は紙が貴重品でしたし、文字の書かれたものに対して一種信仰に近いものが
ありました。だから、非公式な書きものが障子やその他の日用品の中に使われ、
それが発見されることにより民俗学やその他民衆史の貴重な史料となることはよ
くあります」
「はあ。しかし、あんなごみみたいなものが、本当にこれだけの価値があったの
でしょうか?」
「ありはしませんよ。では、これは提供していただいたあなた方の取り分です」

大学学食にて友人と
------------------

「で、いつまでこんな事を続けるんだい?」
「……が……」
「ん?」
「修復と裏打ちに使う和紙が、もう手に入らないんだ……」
「……そうか」

**********************************************************************

であであー。

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage