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Date: Mon, 08 May 2000 23:13:29 +0900
From: 銀佳 <ginka@mutt.freemail.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 18917] [HA06P] 『粉雪の舞う中で』発掘版
To: 語り部ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <20000508153847.20059.qmail@mutt.freemail.ne.jp>
X-Mail-Count: 18917
銀佳@EP発掘♪ です。
もう3ヶ月以上前なんだな〜〜<書いたの
参加キャラの本体の方々、紹介文願います。
あとは、追加、訂正など。早めにお願いします m(_ _)m
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エピソード『粉雪の舞う中で』
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登場人物
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雪丘望(ゆきおか・のぞむ):
:悠・璃慧のクラスメート。体育嫌い(笑)
白月悠(しらつき・はるか):
:同じく体育嫌い。もう少し言ってしまえば、運動嫌いな高校生。
如月刹那(きさらぎ・せつな):
兼沢圭人(かねさわ・けいと):
滝川健一(たきがわ・けんいち):
染木忍(そめき・しのぶ):
禁忌
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一月ももう終わりかけた、そんな日に。
ちらちらと雪華の舞う吹利学校高等部のグラウンドでは、教師と生徒との間
でこんな会話が交わされていた。
体育教師 :「授業をはじめる前に。
:今日は、タブーとなる言葉がある」
生徒たち :「……(やーな予感)」
着替えのときから寒くて寒くて。
着ていた服を脱ぐのも嫌で、着替えるのも嫌だった彼らの脳裏を、同時によ
ぎった言葉…………
体育教師 :「『寒い』もしくはそれに準ずる言葉を口にしたものは、
:一回ごとに、腕立て五回!」
生徒たち :「えーっ!」
体育教師 :「周りで口にした人間がいたら、遠慮なくちくれ!」
生徒たち :「……へっ?(汗)」
体育教師 :「ただしっ!」
生徒たち :「…………?」
体育教師 :「風景描写は、認める」
生徒たち :「…………(だから何だって言うんだよ(汗))」
彼らの間を、冷たい空気が無情にすりぬけていった。
氷の刃と言葉の刃
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サッカーの時間に、雪が降るということが、そもそもの間違いなのだ。
ちらちら降ってはすぐにやみ、またしばらくして降りはじめる、その繰り返
しのため、足元がぬかるんだりすることはない。
けれど……空気は、凍りつきそうなほどに冷たい。
ふと吹く風でさえも、氷の刃のように感じられるほど。
また、一陣。
悠 :「……望くーん、寒いよお(TT)」
望 :「あっ(しっ、とひとさし指をくちびるの前に立てる)」
幸いにも教師の耳には届いていなかったらしい。
体育教師 :「おい、いまそこの、言ったな? 腕立てせえ!」
別の生徒の禁忌破りを取り締まっている。
悠 :「…………なんか、悪いかも…………」
望 :「……いいんじゃないかなぁ(乾いた笑み)」
とりあえずの自衛手段として、ジャージの上着をさらにしっかりと羽織る。
体育教師 :「ほな、今日の授業の予定の話すっから、
:……お前ら、ひとっところに寄れ」
生徒たち :「…………は?」
体育教師 :「おしくらまんじゅうせえ、とゆうとんのや!」
……いちおう、今が寒いということは理解しているらしい。
言われた通りひとところに集まり、身を寄せ合う。
けれど、まじめに話を聞いている人間など、そういるはずもない。
生徒1 :「ちらちら舞ってるあの白いものはなにかなぁ……」
生徒2 :「……なんにも見えない、なんにも聞こえないっ」
生徒1 :「そうだよねえ、気のせいだよねえ(とーいめ)」
………………
純白とブラジル体操
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体育教師 :「さて、今日は念入りにウォーミングアップやな」
ウォーミングアップ。
その言葉で、誰もがやはり同じものを連想した。
ぎぎいっ、と、隣のコートで活動に勤しむ生徒たちのほうに顔を向ける。
体育教師 :「走れーっ」
そんな様子にはお構いなしに、ランニングが始まった。
体育教師 :「はい、歩いてよーし……ほな、手を上下に振れっ」
こんな調子で生徒たちが手を上げ下げし……サイドステップやもも上げ、そ
の他奇妙な動作をしているのを見て、隣のコートの使用者たちは大爆笑。
サッカーの盛んな国……ブラジルで盛んに行われている体操ということだが
……これがブラジルで行われているのを見たことがあるという人間は、ひとり
もいない。
望 :「……璃慧、やっぱりこないねえ(なんとなく虚ろ)」
悠 :「そだねー……まさかこれがあったから休んだ……
:なんてことはないよね(汗)」
望 :「さあ……」
また、一陣。
悠 :「やっぱり、さ……(ふるふるっ)」
望 :「あ……ゆき……(虚ろな声)」
さっきまでやんでいた雪が、またちらちらと降りはじめた。
風に乗って吹きつけてくる雪は、迷惑以外の何物でもない。
望 :「粉雪の舞う中でブラジル体操か……(とーいめ)」
悠 :「雪が降ってるのって、絵的には綺麗だけど……
:もうやだ(TT)」
第三者的意見
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ところかわって、化学実験室にて。
染木 :「あら……?」
ふと外をよぎったものに、授業中とわかっていても心惹かれる。
染木 :「雪ね……さっきやんだと思ったのに」
舞い降りていくちいさな雪華に、思いを馳せて。
しばし、時間を忘れる。
誰か :「先生……先生っ」
染木 :「あ、なにっ?」
生徒の呼ぶ声に、ふと我に返る。
刹那 :「エタノール、足りないんですけどぉ」
染木 :「あ、はいはい、いま足すわね」
圭人 :「ふっ、甘いなバンダナ、足りないならば
:俺たちの班では余っていたものを」
刹那 :「バンダナって呼ぶなぁ! 毛糸のくせにっ」
健一 :「また始まった。……どっちもどっちだよなあ(苦笑)」
実験をする手は休めず、後ろの会話を聞いて小さく苦笑する。
染木 :「はいはい、追加のエタノールね」
ビーカーに測られた透明な液体が刹那に手渡される。
それを班まで持っていく途中。
圭人 :「しっかし、こうして実験とかしてると
:この部屋って暑いよなぁ」
健一 :「外で健全に運動のほうがお好みかい?」
刹那 :「……寒そうだからやだなぁ」
圭人 :「誰もそうは言ってないだろ……
:それに、いつもだいたい半袖のお前には
:言われたくないぞ、バンダナ(邪笑)」
刹那 :「だから、バンダナっていうなぁ(TT)
:さすがにこんな雪の降る中、外で運動は……」
やだよ、と言いかけた刹那の視線が窓の外へ注がれる。
視線の先には、グラウンド。
健一 :「なんかいいものでも見えるのか?」
刹那 :「……こんな天気でも外で体育するんだねぇ(^^;;;」
圭人 :「ん?」(ひょい)
三人揃って覗きこんだグラウンドでは、どこかのクラスが奇怪な体操の真っ
最中。
刹那 :「ってゆーか……あれ、なに(^^;;;」
圭人 :「あーなんだあいつらか……ってことは、
:ブラジル体操とかいうやつじゃないのか?」
健一 :「詳しいねえ…………(汗)」
刹那 :「へー(汗)」
目をさらに細めて窓の外を見る圭人。
圭人 :「ああでも、あいつがいないな」
健一 :「ん?」
刹那 :「あ、ほんとだ、輝がいない」
健一 :「ほー、遠目でよく判るなぁ(にやにや)」
刹那 :「……なんだよ、それ(汗)」
圭人 :「さーな」
一瞬の間。そして、ざあっとまた一陣。
梢が揺らぎ、木々がざわめく。
健一 :「寒そーだな」
刹那 :「そだねぇ」
圭人 :「全くだ」
……それだけかい。
生徒 :「おーい、刹那っ、エタノールまだか?」
刹那 :「あっごめん、いま行く! じゃ、実験に戻るね」
圭人 :「おう」
ぱたぱたと班に戻っていく刹那を見送っていた二人の肩に。
ぽんっと、置かれた手。
圭人 :「(……??)」(振り向く)
健一 :(同じく振り向いて硬直)
何だ? と振り向いた二人の視線の先には。
なぜかにっこりと微笑んでいる、教師の姿。
染木 :「……君たちも、早く実験に戻りなさい(にっこり)」
ただ微笑んでいるだけなのに、その美しさゆえか、異様な迫力。
圭人&健一 :「…………はい」
気圧されたか翻弄されたか。
おとなしく実験に戻る二人であった。
時系列
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1月も終わりかけた、とある日。
雪がちらちらと降る、そんな冷たい一日でした。
解説
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珍しくIRCにも出没せずに、璃慧ちゃんがお休みした日のお話です。
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ではではっ
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銀佳
ginka@mutt.freemail.ne.jp
http://www.geocities.co.jp/Bookend/4229/