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Date: Sat, 06 May 2000 23:37:38 +0900
From: 銀佳 <ginka@mutt.freemail.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 18858] Re: [HA06P] 『れっつ ふぁらんどーるっ☆』
To: kataribe-ml@trpg.net
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銀佳@活動再開第2弾 です。
『ふぁらんどーる』の続き、公演当日編です。
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慌しい公演当日の朝
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そうして、とうとう訪れた11月6日。
ほとんどの人から見れば、今日は11月の第一土曜日でしかない。
しかし一部の人間にとっては、別に意味がある。
吹利学校の高等部にて。
朝から音楽室には人が集まり、真剣な表情を見せている。
楽器を手に取る者、楽譜を何度も見なおす者、開き直ったかのように平然と
している者。行動はさまざま。
しかし、彼らの頭の中に渦巻いているのはただひとつ。
本日、午後三時から……
同じ吹利学校の初等部、中等部、周辺の学校などに配られたポスターとチケットは、いったいどれだけの宣伝効果を持ったのだろうか。
そんな音楽室の片隅に、楽器を手にたたずむ少女がふたり。
ひとりはヴァイオリンを、ひとりはクラリネットを持っている。
……水瀬璃慧と雪丘望。
璃慧 :(楽譜をめくりながら)
:「……あー、もう、あと一ヵ月はほしいっ」
望 :「(苦笑) そだねぇ」
璃慧 :「だって〜(泣)
:やっぱり、一ヵ月でのるのって無理(汗)」
望 :「(汗) まぁ、全部のるわけじゃないし(汗)」
璃慧 :「そーだけどさぁ……」
言葉を交わすふたり。
しかし、お互いに愚痴をこぼすだけ時間の無駄だと思ったらしい。
望は弓を持ちなおし、弦に指を滑らせて。
璃慧はほおをぷっとふくらませ、クラリネットを吹きはじめた。
望 :「そりゃ、僕だって今日公演なんてイヤだよぉ……」
鏡の前で姿勢を確認しながら練習する望のこぼしたひとこと。
……まぁ、自信を持って本番にのぞめる人間など、そういないだろうが。
璃慧 :「……そーいえばさ、悠、こないね」
望 :「こないねぇ」
璃慧 :「まぁた、遅刻すれすれにくるのかな(汗)
:ま、本番に休みはしないでしょ」
望 :「……休んだらあとで刺されるよ(汗)」
しばらくして。
きんこんかんと、始業を告げるチャイムが鳴り響く。
チャイムが鳴る前に音楽室を飛び出していた人間は……皆無だった。
璃慧 :「あー、片付け片付け(汗)」
望 :「急がなきゃ(汗)」
練習に興じて時間を忘れていた人間ばっかし(汗)
みんな、手早くしかし丁寧に楽器を片付け、音楽室から逃亡。
璃慧 :「さっきの……本鈴だよね?」
望 :「……たぶん、っていうか絶対」
璃慧 :「一時間目は……英語1……(汗)
:……なぁんで、公欠、三時間目からなのっ(汗)」
望 :「そう決まっちゃったからねぇ(汗)」
教室への廊下を急ぐ。
と、目の前を見覚えのある姿が横切り、教室に駆けこんだ。
望 :「あれ、いまのって……」
璃慧 :「悠だ……(汗)」
教室に入ると、出欠を取っている真っ最中。
しかし、璃慧は女子の真ん中の方、望にいたってはほぼ最後である。
名前を呼んで出欠を取ってくれる授業では、そんなに急ぐ必要がない。
悠 :「(はぁ……間に合った……
:なんで今日に限って寝坊したのかな……)」
全員の出欠を確認したあと、つつがなく授業ははじまった。
今日に限って……
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1時間目が終わったあとの休み時間。
次の時間が体育なので着替える。
璃慧 :「悠……なんで、今日に限って(汗)」
悠 :「ごめんっ」
璃慧 :「まぁ、べつにいいけど
:……なんでほんとに、体育が二時間目なんだよお(泣)」
だね、といいかけた望の目は、黒板に貼られた連絡の紙に向けられていた。
書いてあることを読んで、力ない笑みが浮かぶ。
望 :「……いま気づいたけど、三時間目調理実習(汗)」
悠 :「四時間目休むと数学ついてけなくなる……」
調理実習は……さすがに休んだ分を取り返すというわけにもいかないし……
天が与えた二時間という公欠は、どうやらマイナスに働いたらしい。
璃慧 :「数学なんてどーでもいいよ(きっぱり)
:どーせ、授業聞いてないし〜。調理実習だってなあ……」
言いかけて気づく。
璃慧 :「(あ、でもなあ……。
:料理は少し勉強しときたいんだよね)」
と、いくら願ったとしても、時間割が変わるはずもなく。
璃慧 :「あ゛〜! なんでなんだよお(TT)」
望 :「……世の中そんなものだよ……」
悠 :「……そだね……」
二時間目の体育は、バスケットボール。
コート面で、シュート練習などしていると。
聞き覚えのある音色と旋律が聞こえてくる。
悠 :「あ、トランペットの音……」
璃慧 :「あそこ、音楽室……ってことは、おけらの人??」
望 :「……そーいや、どっかのクラス、
:一、二時間目が休講だっけ」
璃慧 :「あー、うらやましいっ……練習したいよお(泣)」
悠 :「……とりあえずさ、突き指しないように、
:気を付けよ?」
璃慧 :「だね(汗)」
こうして、とりあえず受ける義務のある二時間は乗り切ったのであった。
もう、体力勝負っ
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体育が終わって、着替えを終わらせて。
指示のとおりに音楽室に行くと、もうみんな揃っていた。
部長がプリントの指示をもう一度読み上げて、あとは各々仕事についた。
公欠二時間+放課後のわずかな時間で、準備を完了させなければならない。
璃慧 :「女子は木箱運び……だっけ?」
望 :「うん、男子はパーカッション運ぶからね」
璃慧 :「腕、もつかなぁ……」
三、四時間目に教室で授業のないクラスから木箱を持ってくるのが仕事。
黒板の前を一段高くするために、各教室には木箱が三つずつ置いてある。
この木箱を会場となる体育館に運んで、ステージの上で金管用に組むのだ。
望 :「悠、そっち側持ってー」
悠 :「あ、うん」
璃慧 :「うわ、重そー……」
まぁ、60×150×30の、けっこう頑丈な木箱である。重くないはずがない。
その証拠に、あっちこっちで「ちょっと待って、腕が……」という科白が。
璃慧 :「(いまこんなことやってたら、本番で楽器を持つだけの
:力が腕に残らないよお……)」
とは、木箱を運びながらの璃慧の心のつぶやき。
体育館に木箱を持っていくと、男子がそれを受けとって、積みに行った。
昨日みんなでシートをひいて、椅子並べをした体育館。
いつもと違うたたずまいを見るだけで、緊張はつのる。
木箱を運んで、合間にお昼を食べて、練習をして。
あっという間に午後になった。
この時間になると、OB・OGも顔を見せはじめる。
体育館前に貼り出された宣伝。
白い紙にくっきりと書かれた『秋季定期演奏会』の文字。
いったいどれくらいの人が、見にくるのだろうか……?
(題未定)
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1時……1時15分……1時半……
時間は確実に過ぎて行き、開演時刻がせまる。
保護者会のおかげで本番一時間前まで会場に入れないため、音楽室にて。
本番を目前にすると、逆に度胸が据わるものらしい。
みんな、楽器をそばに置いて、談笑に花を咲かせている。
璃慧 :「あ、望くん、かわいい〜♪」
公演の正装である白のブラウスと黒のロングスカートに身を包んだ望。
長身で華奢なため、とても優雅で、ヴァイオリンを持っていると絵になる。
悠 :「ほんと……似合ってるよ」
望 :「そう……かな……」
璃慧 :「うんっ♪」
音楽室でいつもいっしょに練習している面々がみんなそういう服装なのは、
ちょっと奇妙な気分だけど。
『公演の雰囲気』を纏っていられるみたいで、落ちつける。
1時45分頃。
関係者は全員中にいるはずの音楽室のドアが、外から開いた。
来訪者に、視線が集中する。
刹那 :「(うっわ〜、な〜んか入りづらい雰囲気〜)」
悠 :「あ……刹那だ……」(璃慧と望をつっつく)
璃慧 :「あ、やっほ〜♪」
望 :(手を振って)「やっほ〜」
刹那 :「や!」
見知った顔を見つけて、安心したらしい。
人のあいだをすりぬけて、あっという間に奥まで来た。
悠 :「……なんで、来たの?」
刹那 :「なんでって……特にやる事なくて暇だったからねぇ」
望 :「よく、へーぜんとここにこられるよね……(汗)」
璃慧 :「普通は寄りつかないよ(苦笑)
:……って、刹那も普通じゃないか(笑)」
悠 :「オケラ人を取り巻くオーラが恐いとか、
:いろいろ言われてるよね……」
刹那 :「普通じゃないってどーゆう意味だよ!
:まぁ輝たちがいなかったらこんなとこ来ないけどね」
璃慧 :「……本番、聞きに来なくていーからねっ(力強く)」
刹那 :「へっ?」
望 :「うん、こなくていい(汗)」
刹那 :「へー(汗)」
悠 :「たぶん、聞きにきたらまた寝るよ?」
刹那 :「うっ……(汗)
:でも別にあの時はそんなに寝てないじゃん!」
文化祭の時に室内楽を聞きに来た刹那は、途中で睡魔に屈したらしい。
まぁ騒がしいお祭り音楽の『ファランドール』ならともかく、ゆったりと流
れるワルツである『ドナウ』では寝る可能性高し。
刹那 :「たぶん寝ないと思う……(汗)」
望 :「あはは、まぁ、好きなようにして」
刹那 :「…………まあがんばれ!」
璃慧 :「……結局来るの(汗)?」
刹那 :「さ〜ねぇ」
璃慧 :「こらっ」
刹那 :「だって〜、まあ、くるかもしれない」
悠 :「じゃ、とりあえず」(チケット渡す)
刹那 :「サンキュ!
:まぁ聞きに行くなら寝ないように努力しよう。
:……輝たちの正装姿も見たし部外者はさっさと退散するか。
:んじゃ公演がんばってくれ!」
まあ気分で決める、という一言を残して、刹那は音楽室を出ていった。
璃慧 :「正装……か」
ふっと、かすかに笑って。つぶやく。
璃慧 :「(かむにゃに……見せたかった……な。
:見たら、どーするかな)」
呼べば、来てくれただろう。
でも、声をかけなかったのは。
自信がなかったから。下手な姿、見せたくないから。
なのに…………。一方で来て欲しいと願っているのに気付いて。
そんな自分に、苦笑。
(題未定)
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そして、二時。会場に楽器と楽譜を持って移動を開始する時間。
各々自分の楽器を抱えて、足早に体育館に向かう。
由摩 :「……? あっ♪」
萌 :「どうしたの?」
昼に打ち合わせていたように、高等部を名目つきで見学にきていた由摩の視
線の先には、悠、望と談笑しながらこっちに向かってくる璃慧の姿があった。
いたずらっぽい笑みを浮かべて、由摩は急に走り出した。
萌 :「あっ、由摩ちゃんっ」
萌もそれを追う。
前方で展開されていることには気づかず、そのまま歩いてくる璃慧たち。
由摩 :(たったったっ……抱きつきっ)
:「璃慧ちゃんだぁ〜〜♪」
璃慧 :(思わず振り払う)「きゃっ!」
歩いてきた璃慧に抱きつく由摩。
しかし、過度の敏感肌の璃慧。
相手に悪気はなくても、抱きつかれると、とってもくすぐったい(汗)
反射的に振り払ってしまう。
そして。抱えていたクラリネットと楽譜が宙に舞う。
悠 :「あ〜〜っ、楽器っ(汗)」
望 :「あっ、と」
後方にいた望が楽器をナイスキャッチ。
悠 :(楽譜を拾いながら)「望くん、ありがとっ」
萌 :「あ……ごめんなさいっ、手伝います」
悠と追いついてきた萌は散らばった楽譜を拾い集める。
振り払われた由摩はというと。
由摩 :「ひっど〜〜〜い」
璃慧 :「あ(汗) えっと、由摩ちゃん、だっけ(汗)」
由摩 :「うんっ♪」
璃慧 :「ごめんね、くすぐったくて(汗)」
由摩 :「ううん、気にしてないよっ♪(にこっ)」
けっこうご機嫌である。
由摩 :「ねぇねぇ璃慧ちゃん、綺麗な格好して、
:これから何するの?」
璃慧 :「……(汗)」
由摩 :「??」
璃慧 :「初等部にも、貼ってなかった?
:って普通、あんなもの見ないか……」
部員にあんなもの呼ばわりされるポスターくん。
公演が終わったあとも、浮かばれないだろう(汗)
璃慧 :「オーケストラ部がね……今日、発表会なの」
由摩 :「ふ〜ん……初耳……」
萌 :(小声で)「昨日の休み時間に自分で言ってたでしょ」
由摩 :「ほえっ? そうだっけ?……璃慧ちゃんも出るの?」
璃慧 :「うん……」
由摩 :「じゃあ、もしかしたら聞きに行くかもねっ♪」
璃慧 :「え゛っ……(汗)」
由摩 :「じゃーねっ☆ いこっ、萌ちゃん」
萌 :「あ、うん」
悠 :(小さく手を振って)「ばいばい(にこっ)」
望 :「ばいばい」
由摩 :「ばいば〜い☆」
由摩たちに手を振る二人をよそに、璃慧は固まっていた。
璃慧 :「(う゛……なんか切実にやな予感……
:知り合いがいっぱい現れたり……しないよねぇ……)」
それは神のみぞ(?)知る。
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次は、会場にて……です。
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銀佳
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