[KATARIBE 18764] [HA06N] 小説『心』その2〜喜びの心〜

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sat, 22 Apr 2000 22:02:52 +0900
From: 球形弐型 <BallMk-2@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 18764] [HA06N] 小説『心』その2〜喜びの心〜
To: ML <kataribe-ml@trpg.net>
Message-Id: <01f801bfac60$c1cdef80$fb75fdd2@computer>
X-Mail-Count: 18764


ども、球形弐型です。

久々の小説『心』シリーズです。

************************************************************
小説『心』〜喜びの心〜
-----------------------

喜び……
素直に喜べない自分……
不安を拭いきれない自分の心……

------------------------------------------------------------

 それは、春まだ遠い冬のことだった。
 私は、大学に共通一次試験に合格して、本命である紅雀院大学を受験して
いた。
 紅雀院は、古くから歴史、考古学の研究が盛んで、私の義父もこの大学の
教授をしていた。
 私がこの大学に受ける理由は、長い間、眠りについていた私には、空白の
時代があるからだった。
 だから、その空白の時代を少しでも埋めるべく、歴史や考古学の道を進み
学ぼうと考えたのだ。
 本来なら、義父の推薦で大学に入れると言われていたが、まだ世の中のこ
とをに疎い私が、いきなり大学入るのは、自分自身、不安だった。
 せめて実力で入ることで、自分に自信をつけたかったのだ。
 そして、紅雀院大学の試験を無事終え、私は、試験会場から出てきた。

「ふう……」

 正直、私には自信がなかった。
 この数ヶ月の間、父や兄、そして周りの人々に助けを借りながらも、猛勉
強をしたものの、不安は拭いきれなかった。
 兄には。

「『当たって砕けろ』と言う言葉もある。とりあえず、やれることだけのこ
とはやってこい。」

 と言われた。
 だが、本当に砕けてしまったらどうしようなどと言う考えが頭をよぎる。

「はぁ……合格発表が憂鬱だなぁ……」

 私は、重い足取りで家への帰路についた。

-----------------------------------

 その日の夜のこと。
 私は、いつもの様に部屋に閉じこもって、試験の結果を気にしながら憂鬱
感に浸っていた。

「はぁ……どうしよう……」

 私の憂鬱感はドンドン広がっていく。
 もし、大学に落ちたら、何をしたらいいのか。
 何もない私にとって、大学と言う場所は、自分の存在感を証明出来る場所
になるかもしれないのだ。
 もしそれがダメだとすると、私は何処で何をすればいいのか分からなかっ
た。
 もし、自分の居る場所が無くなったら、私は消えなければならないのだろ
うか。
 私は、この世に存在してはならないのだろうか。
 考えれば、考えるほど、私の心は沈んでいく。

「優麻……起きてるか?」

 ドアの向こうから、お兄ちゃんが私を呼んでいる。

「うん……起きてる……」
「………入っていいか?」

 私はそっと立ち上がり、部屋のドアを開け、お兄ちゃんを招き寄せる。

「どうぞ………」

 お兄ちゃんは、そのまま部屋へと入ってくる。
 無言のまま、私のベッドへと腰をかけた。もっとも、この部屋で座るとこ
ろと言えば、床か、私のベッドだけだけど。
 私は、何の様だと聞きたいところだが、大体察しはついている。今日の試
験のことだろう。
 あえて私からは、口を開かなかった。それは、とても気が重かったからだ。
 暫くの間、二人の間に沈黙が続いた。

「優麻……」

 私は、ビクッとして聞き返す。

「な、なに、お兄ちゃん?」
「落ち込んでるのかい?」
「う、ううん……そんなことないよ」

 本当は、そんなことある。だけど、実力で受けると言った建前、自信がない
などと言ってもいられない。
 せめて自分のやれることだけは、自分の力でしたかったのだ。
 でも、そんな時、自分の心の弱さに痛感する。
 助けてほしいのに、その一言が言えない辛さ。私は、ただのその思いだけを
自分の中に押し込めるしか出来なかった。

「まぁ……気にするな、来年だってあるんだから……」

 来年?私に、来年なんてあるのだろうか。
 私は、もう一年、何もない生活を送るのだろうか。
 又、存在の無い生活を……。

「……そう、落ち込むなって。すべてが終わったみたいな顔するなよ」

 お兄ちゃんは、笑って言う。
 やっぱり、お兄ちゃんには分かってもらえないのかもしれない。
 確かに、最近の私は、表にも出るようになり、色々な人たちにも出会うよう
にはなった。
 けど、それだけでは、私が存在している証にはならない。
 何かを見つけ、何かを学び、そして何かを残す人になる為に。
 未だ、私の肉体は、元に戻っていない。
 実体こそあるものの、私は、魂だけの存在であるのだ。
 その為に色々なことを経験して残して行け、と言ったのはお兄ちゃんだった。
 だから、私は頑張ってるのに……。

-----------------------------------

 そして、深夜になってから、私は、家を後にした……。
 暫く、誰にも会いたくなかったからだった。

 吹利の夜、寒さが身に凍みる。
 凍える様な北風が吹く中、私は、何処へ行くとも分からない、宛のない旅に
出た。
 どの位、歩いたか分からなかったが、ふと気が付くと、河原に出ていた。

「ここ……何処だろう?……」

 遠くに町並みの明かりが見える。
 私は、疲れていたので、その河原の芝に座った。
 河原で、何の気なしに、ただぼーっと座りながら、今後のことを考えてみる。
 だが、ただ憂鬱な考えしか浮かばない。
 何も出来ない。何かしたいのに、何をしていいか分からない。
 と、ただ憂鬱な考えを巡らせていると、急に眠気が襲ってくる。
 いつもなら、とっくに寝ている時間かもしれない。
 周囲の寒さに身を縮こませながら、このまま眠りにつきたい気分だった。
 何もかも投げ出して……

 次に気が付いた時、私はたき火の前に居た。

                                 つづく
*****************************************************************

ということで、一旦止めます。

続きは……何時になることやら(w

では。
------------------------------------------------------------

球形弐型こと「伊沢英人」

メール BallMk-2@trpg.net

<ひでSWANの暇つぶしに出来たHP>
http://www.interq.or.jp/www1/hi-izawa/index.htm

雑談所    :
http://www.tsm.gr.jp/cgi/pt.cgi?room=3658
TRPG掲示板:
http://hyper4.amuser-net.ne.jp/~auto/b13/usr/me111703/brd1/bbs.cgi

******************************
  IRCサーバ「sv.trpg.net」 チャンネル「#スパロボRPG」に
  おいて、オンラインセッション用スパロボRPGルール作成中!
******************************

4月のつぶやき

「心に余裕の無い時は、人に辛く当たってしまうものだ」
------------------------------------------------------------

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage