[KATARIBE 18698] [HA06N] 『かぼす酎』

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Date: Tue, 18 Apr 2000 16:46:42 +0900
From: 不観樹露生 <fukanju@trpg.net>
Subject: [KATARIBE 18698] [HA06N] 『かぼす酎』 
To: kataribe-ml@trpg.net
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ども、不観樹露生@授業中(ぉぃ です。はい。

 E.Rさん、瑠璃さん、どもです。

 とゆーわけで。かなり遅れましたが、瑞鶴閉店関係。
麻樹ののワンシーンです。

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『かぼす酎』
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登場人物
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狭淵麻樹(さぶち・まき):吹利県立吹利中央病院研修医。
るりるり:麻樹の愛車に住む鉱物猫。

本編
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 かぼす酎の瓶を一本。
 瓶の口を人差し指に引っかけて。母屋から出る。
 春。
 風が既にして、春。

  笑っていた。

 ぼろぐるまの後ろから、白猫が出てくる。あとを付いてくる。
 猫の足に合わせる。わずかに、歩調をゆるめる。

 『我三界に、帰る処無し』
  そう言い放っていた。

 どこで呑むかも決めずに。ふらりと足を踏み出していたのだから。
 やはり足の向くままに。
 るりるりが、一声にゃぁと鳴く。
 その声に振り返る。瑞鶴の、猫。
 相も変わらず無愛想に。こちらを一睨めして。そっぽを向く。

 『帰る処など、必要もなし!』
  そう、叫んでいた。

〈都合によりしばらく閉店させていただきます〉
 そう張り紙がされた店の前を。
 足をゆるめずに歩き抜ける。
 帰らずともよい。
 再び訪れる。それならば、また奇しき縁だろう。
 るりるりを左手で抱え上げる。
 少しだけ、歩を早める。
 白猫の瑠璃色の瞳がこちらを見上げる。

  笑っていた。

 土手を降りる。
 るりるりを地面に下ろす。
 たんぽぽが足元に咲く。
 かぼす酎の瓶の蓋を開ける。
 立ったまま。一口、飲み干す。

  笑い声のままに、風が吹き。

 重要なのは帰る場所ではない。
 行き先だ。
「みゅ〜」
 瓶の蓋に柑橘の香りの酒を注ぐ。
 るりるりの足元に置いてやる。

  そして消えた。

 行き先が交わることも。あるかもしれない。ないかもしれない。
 桜の元で、飲み興じる集団を、対岸に見やり。
「行くか」
 そして、るりるりを抱き上げる。
 また足の向くままに。

                           (終)

時系列
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 4月初旬の花見日和なある日。

解説
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 花澄が消えた後、酒を呑む麻樹。

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 るりるりの描写など、修正ありましたらお願いします〜(^^;>瑠璃さん

 ではでは。

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不観樹露生(ふかんじゅ・ろせい)    4月の標語
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