[KATARIBE 18416] [HA06N] 『廃屋』

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Date: Tue, 28 Mar 2000 00:14:16 +0900
From: Miyachi <soutou@mc.neweb.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 18416] [HA06N] 『廃屋』
To: kataribeML <kataribe-ml@trpg.net>
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ど〜も。
総統です。

 ふと思いついて、ひらったーの仕事ぶりを書いてみたり。
 ……あまり出来はよくないですな(w

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『廃屋』
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本編
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 薄闇。
 夕暮れでも明け方でもない。
 無粋な建造物の中にだけ生じる闇。外はまだ昼間だ。
 真冬の廃屋は肌を斬りつけるような寒さに包まれてる。
 静寂。
 風の音しか聞こえない。

 『私』は、正直、この仕事に向いてないと思う。少々銃が使えるだけの怠け
者に、教会は面倒な事を押しつけてくる。こんな寒い日は、昼間からぐだぐだ
したり、事務所で飲んだくれてる方が楽でいい。第一、嫌な事を思い出さずに
済む。
 嫌な事……なんだったかな。よく思い出せない。きっと寒さのせいだろう。
まあいい。手早く済ませて酒でも飲もう。スコッチはまだ残ってたか………
 バタンッ
 入ってきたドアが勢いよく閉じた。合図だ。連中、昼間の珍客をもてなす事
に決めたらしい。光栄な事だ。
「キイイィィィ!」
 甲高い叫び声とともに頭上から降ってくる。鋭く伸びた鉤爪に、真っ赤な
瞳。いささか古びた着衣。そして乱杭歯。吸血鬼だ。正直、見飽きた。
 サイドステップで身体をかわし、着地の衝撃を吸収するため、へばりつくよ
うに床に沈みこんだ吸血鬼に向かってコルトガバメントを構え、撃つ。意識し
なくても、指が勝手に8回トリガーを引く。シングルカラムのマガジンには7
発、チャンバーに1発の45ACP弾が装填できる。ホールドオープン……
 両肩と両膝に被弾した吸血鬼は必死に身体を起こそうとするが無理なよう
だ。無理矢理力を込めたのか、膝がみちみちと嫌な音をたてている。
 不快だ。吸血鬼の顔を蹴り上げ、あお向けになったところで、腹を踏みつけ
る。
 みしり、とブーツの裏から骨の軋む感触が伝わってくる。弾倉を交換し終わ
ったガバを持ち上げ、頭をポイントする。一発、二発、三発……五発で吸血鬼
は動かなくなった。ついでに残り二発を心臓に撃ち込んでおく。
 映画のように、清められたものでも、銀の銃弾でもない。だからこれで、吸
血鬼は殺せない。しかし、肉体を破壊してしまえば動きを封じることは出来
る。その点で、銃は優れた道具だ。十字架を振りかざして白木の杭を打ちこむ
労力を考えれば、楽でいい。
 かぁん かぁん かぁん……
 ふと、何処からか、足音がする。隠形に優れているはずの吸血鬼が足音を隠
さない。怒り狂っている証拠だ。次第に数が増える。2人、3人……5人ほど
か。
 ガバをホルスターに納め、コートからUMPを抜く。そして、少しづつ精神
のタガを外していく。少しづつ少しづつ……
「……くくく」
 笑い声がもれる。
「あはははっ」
 楽しくて仕方が無い。ゴミどもが何匹集まったところで、『俺様』をどうに
か出来るつもりか?

 そして、また静寂。

 夕暮れ。
 灰色のコンクリート壁にはすっかり長くなった自分の影が映っている。
 低くなった太陽は開けておいたドアや窓から差込み、穴だらけの骸を青白い
光とともにチリに変えていく。
 全てチリに帰った事を確認して、ゆっくり立ちあがる。
 もう、ここに用は無い。

 事務所に戻って一休みしていると、インターホンが鳴った。親しい……とは
いえない知り合いの声だったが、なぜかひどく安心できた。


時系列
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 2000年のまだ寒いある日。


解説
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 軟化の進む平田の仕事ぶり。


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ではまた。
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総統<Nobuki miyachi>
E-mail : soutou@mc.neweb.ne.jp
ICQ : 51043006
URL : http://www.geocities.co.jp/Bookend/8749/
    

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