[KATARIBE 18245] [HA06N] :「梅花香夜」

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Date: Mon, 13 Mar 2000 18:02:58 +0900 (JST)
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 18245] [HA06N] :「梅花香夜」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200003130902.SAA09941@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 18245

2000年03月13日:18時02分57秒
Sub:[HA06N]:「梅花香夜」:
From:E.R


    こんにちは、E.R@花粉症で滅入り気味〜 です。

 どーもうちの面々、己が滅入ると、夜の町を徘徊し出す(苦笑)
 存外珍しい、店長の風景です。

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「梅花香夜」
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登場人物
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平塚英一(ひらつか・えいいち):書店瑞鶴店長。単純にして時に寡黙。

本文
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 夜桜というのはよく聞くのだが。
 夜梅というのは………

「……あまり無いな」

 夜中の、既に12時は廻っている。
 商店街は街灯のもとで、しんとしたままである。
 先程の雨で濡れたコンクリートのタイルに、弱々しげな灯りが反射している。

 微かに、風。
 香。

 この季節、雨でも降らない限りは、匂いなどわからないのだが。

 ゆっくりと、商店街を歩いてゆく。
 闇の中、細く縒ったこよりのような香が、やはり細く流れる風に添うように
流れる。
 それを、なんとなく……追う。

 しばらく歩いて、辿り付くのは河原の横の、白梅の木々の下。

 香。

 ……ああ、雨に叩き落されるほどにやわではないのだな、と、ふと思った。

 香。

 白梅の花は、闇を跳ね返すほどの艶やかさを持つわけではない。
 けれども、闇を貫くように……その香だけが流れる。

 ……どちらが本望なのだろうか、花としては?

 ひとつくしゃみをして、白梅を見上げる。
 すう、と、やはり細く、香が流れる。

 かすれるような、記憶。
 例えば色が、闇の中で変じてゆくこと。
 闇の中で、己が腕を見失うこと。

 
 総じて……それだけのことと言い得るもの。


 香。

 既に鋭さを喪いつつある月が、白梅の枝の間で傾いている。

「……梅見月……か」
 呟いてみる。
 言葉がすうと闇にまぎれてゆく。

 白梅の枝が、つう、と月を刺した。


 ある夜の風景である。

時系列
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2000年三月初め

解説
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書店瑞鶴から滅多なことでは動かない、平塚英一の風景。
夜になると歩き回るあたりは……家系というかなんというか。

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 というわけで。
 であであ。


    

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