[KATARIBE 18017] [WP01P]: 『届いたピアノ』

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Date: Tue, 15 Feb 2000 11:51:53 +0900 (JST)
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 18017] [WP01P]: 『届いたピアノ』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200002150251.LAA89447@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 18017

2000年02月15日:11時51分53秒
Sub:[WP01P]:『届いたピアノ』:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

 月影にピアノが入る……って事で、入った後の話しが無かったんで、
書いて見ました。

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エピソード『届いたピアノ』

登場人物
月島直人(つきしま・なおと)
    :喫茶店・月影の店長。

青天目譲(なばため・ゆずる) 

朝霞沙希(あさか・さき)

朝霞有希(あさか・ゆき)


ピアノが届いた
--------------
 今日も月影は営業中である。
 しかし、いつもとは少し違っていた。

 宅配     :「こんにちわー」
 直人     :「はい」
 宅配     :「お届け物です」

 まるで引っ越しのような巨大な荷物。中身はすぐに想像がつく。
 直人は店内を見渡し、店員と常連しかいないのを確認してから、表に廻るよ
うに指示をした。

 譲      :「なんですか?」
 直人     :「ピアノです」
 沙希     :「あ……ほんとに買ったんだ」
 直人     :「ええ、確かに、殺風景でしたしね」

 手際良く梱包を解き、数分で設置が完了した。
 もともと、ピアノのためのスペースは、数日前から空けてある。
 壁際にぴたりとつけた、アップライトピアノ。
 さすがに、グランドピアノを置ける余裕はない。

小さな演奏会
------------
 宅配     :「じゃ、失礼します」
 直人     :「ありがとうございました」

 ドアベルの音を残し、宅配便の青年は帰っていった。

 直人     :「沙希さん、いかがですか?」
 沙希     :「いや、いいんじゃない。しっくりとはまってるし、よう
        :やく落ちついたって気がするよ」
 直人     :「ええ、雰囲気も戻りましたね……。一曲弾いていただけ
        :ませんか?」
 沙希     :「あたし? 最初に弾いちゃうちゃうのは……」
 直人     :「私は、ピアノ弾けませんし。出来たらお願いしたいです
        :ね」
 沙希     :「うん……。じゃあ、一曲……」

 ぱちぱち……と軽い拍手の中、沙希はピアノの蓋を開け、中の鍵盤保護のた
めの布を取り出して、椅子に座る。
 す……と店内の沈黙を感じた後に、鍵盤に指が触れる。

 美しく、静かな旋律。

 譲      :「あれっ?」

 聞き入っていた譲は、自分の頬に流れる涙に驚く。
 良い曲だと思う。でも、泣きたくなる感情は、自分のものではない。
 過去への懐かしさ、悲しさ、切なさ、愛しさ。ひたすら過去を振り返るあふ
れんばかりの想い。

 譲は、ふ……と振り返った。
 直人の左目は銀に淡くかがき、しかしそこに涙はない。
 鍵を使ってでも殺さねばならぬ想い。その想いは行き場を失い、譲がそれを
受け取ったのだ。

 目が合うと、申し訳なさそうな表情を返す直人。

 有希     :「あれ? 譲さん……どうしたんですか?」

 涙をぬぐいもせずに泣いている譲に、心配そうに話し掛ける有希。

 譲      :「いいんです……」
 有希     :「え?」
 譲      :「僕は……泣くしか出来ないから……」
 直人     :「そんなことはありません。でも……ありがとう」

 直人は、そっと譲にだけに聞こえるように言った。

 月影にピアノが来た日。
 ピアノの音色は、月影に染みとおるように響いていた。

時系列
 2度目の1999年秋頃。

解説
 月影にピアノが来た日。直人は、かつて父も母も居た頃の月影を思い出す。

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 というわけで、Eさん、リューさん、チェックお願いします。

 なにか、ご指摘あれば修正いたします。


 ではまた。


    

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