[KATARIBE 17890] [WP01P]: 『新たなる力』

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Date: Fri, 4 Feb 2000 16:34:46 +0900 (JST)
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17890] [WP01P]: 『新たなる力』 
To: kataribe-ml@trpg.net
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2000年02月04日:16時34分46秒
Sub:[WP01P]:『新たなる力』:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

 終末の住人のエピソード。
 相変わらず、自キャラしか出せておりませんが……(汗)

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エピソード 『新たなる力』
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登場人物
月島直人
    終末の住人。終末の住人を集める『月影』のマスター。物体繰者。

日向錬也
    終末の狩人。直人の対。爆弾テロリストで。生命繰者。

東京ドーム入り口
----------------
 今日、後楽園に偶然に過ぎなかった。
 直人は、竜也達と別れ、東京ドームの前に来ていた。

 直人     :「やはり……結界……」

 直人の「感覚」には、明らかに東京ドーム内に張り巡らされた結界が見て取
れた。
 東京ドームは、首位攻防戦のさなかだ。地元で1.5ゲーム差と迫っていれ
ば、客が入らない訳はない。

 直人     :「すみません、今から入れますか?」
 警備員    :「いまから? もう、8回ですよ。当日券はありません。
        :前売り券は?」
 直人     :「持っていません」
 警備員    :「じゃあ、むりですね」
 直人     :「そうですか……残念です」

 ここは、潔く引き下がる。
 向こうにかんずかれる可能性はあったが、中に入らねば接触できない。

 直人     :「(仕方ないか……)」

 人目につかない場所で、直人も結界を展開する。
 胸の前に現れた球体が、爆発するように広がり、現実世界の一瞬前の時間を
封じ込める。
 あたりに、東京ドームからの歓声はもう聞こえない。

 直人     :「(すみません……)」

 一応、入場門を通りぬけるときに、結界の外にいる警備員に謝る。もちろん、
終末の住人でない警備員は、結界の中を見通す事は出来ない。

 しばらく行って、通路を曲がり、警備員の目が届かなくなってから、結界を
解く。
 目指す場所は、球場のほぼ真ん中。

 直人     :「……まさか……」

 すぐの外野席に上がり、球場を見渡す。
 人込みの奥に、マウンドを中心とした丁度内野の範囲だけを覆う結界が確認
できた。

 直人     :「な……なんてところにいるんだ……」

 結界の強さは、それほどではない。ごく薄いもので、結界の能力を持てば見
通す事はさほど難しくはない。
 だが、外野席の一番奥から、結界を張っている術者の識別をするのは難しかっ
た。黒い服を着た男だろうという事くらいは分かるが……。

 直人     :「目立ってしまうが……仕方ないな……」

 直人は、またも結界を張る。今度は、先ほどよりも大きく、外野席から内野
部まで届くように。だが、マウンドの結界には触れないような微妙な調節をす
る。結界は、重なって存在する事は出来ないのだ。
 結界の中に、魂ある人は残らない。
 無人となった外野席、グラウンドを無造作に横切り、結界の端へ。
 ここまで来ると結界の作成者も認識する事が出来る。それは、直人にとって
因縁浅からぬ人物だった。

 直人     :「日向……」

 数ヶ月前の復讐の念は、既にない。住人を集める『月影』のマスターとして、
感情だけで動く事な出来ない事は分かっていた。
 直人は、そのまま前に踏み出し、結界を消去すると同時に日向錬也の結界範
囲内に踏み込み、すぐさま侵入する。

 マウンドに座り、ピッチャーと同じ視点で野球観戦をしていた日向は、ゆっ
くりと直人の方に振り向いた。

 日向     :「お、なんだよ。お前……」
 直人     :「こんなところで、何をしているんです? 日向」
 日向     :「ああ、思い出した、思い出したぜぇ……。喫茶店の独り
        :息子かぁ……。うん、そうだろ? 少しは出来るようになっ
        :たかい?」

 以前、住人とその対としてあいまみえたときは、直人は仲間達の力を借りて
かろうじて撃退したに過ぎなかった。
 それから、直人の方も訓練を怠っていた訳ではない。

 直人     :「出来るようになったかどうか……試してみましょうか?」
 日向     :「やめろよ……止めとけよ……。俺は、お前の事好きなん
        :だぜぇ? お前の事想うとよぉ……興奮して眠れなくなっ
        :ちまう……。そこらの奴等、100人は殺らねえとおさま
        :らねえくらいになぁ」
 直人     :「お前っ……まだ人をっ……」
 日向     :「少しは強くなってんだろうなぁ……じゃねえと、面白く
        :ねえからなぁっ」

 一瞬、結界が解かれ、先ほどより大きい結界が形成される。
 その結界の形成を阻害し、強力で巨大な球形の結界が顕現した。

 日向     :「ほう……やるねぇ……うん、いいよ、そうでなくっちゃ
        :なぁ」
 直人     :「結界の能力なら、私の方が上でしたからね」

 日向が張り直した結界を、直人が破壊し、別の形で再作成したのである。
 結界の作成者が自分の結界に人や物を召還する事は、それほど難しくない。
 人の命を軽んじる日向が作成者のままでは、周囲の人間が盾として使われる
可能性がある。

 日向     :「さあて……やろうかっ」

 日向の左目が、金色に光り始める。オッドアイのコンタクトレンズ。住人や
狩人が力を高めるための意志の顕現体「鍵」だ。
 直人も眼鏡を懐に収め、目を開く。その左目は、月の瞳、銀。
 輝きの質は違えど、強さは変わらない。対同士の実力は、ほぼ互角。

 直人     :「以前の私と、同じだと思わないで下さいよ」

 直人のひと睨みで、日向の足下、マウンドがごそりと無くなる。
 視線で生命通わぬ物体を破壊する。これが、直人の住人となったときに目覚
めた力だ。

 日向     :「っと……くくっ……その程度かい。その程度だったら、
        :まだ面白くないねぇ……」

 後ろに跳び退き、足場を確保する日向。その右手が光を放つ。

 日向     :「前に食らった、命の矢と言ったか?」

 腕を振るう事で、その光は直人に向かって飛来する。
 直人が目の前に手を翳すと、先ほど消え去ったマウンドの土が再び直人の目
の前に構成され矢の飛来を防いだ。

 直人     :「光の矢……朱理さんの……」

 直人が日向を退けたときの助力者の一人が、光を腕を使う朱理のものだ。

 日向     :「こんな事も、できるんだぜぇ……」

 そういうと、日向は腕を一振りする。
 ふ……と、結界の外の選手達が、一瞬だけふらついた。その場所と全く同じ
位置に現れる、命の光。

 直人     :「結界を抜けて……生命操作か?」

 結界を異能が干渉する事はできない。しかし、結界能力者であれば、異能を
結界能力で付与する事により、結界を超えて異能力が使用できるのである。

 日向     :「透過能力はな……得意なんだよ。9つだ……よけられる
        :かぁ?」
 直人     :「くっ」

 9つの命の矢が同時に直人に飛来する。いくつかを体裁きで躱し、また地面
の破壊と再生を利用して防ぐ。

 日向     :「……やるねぇ……だが……だめだな。つまらないな……
        :お前、弱い、弱いよ」

 懐から、取り出したのは、手榴弾。

 直人     :「……なにを……」
 日向     :「興奮しちまったからなぁ……。ピッチャーがマウンドで
        :爆死したら、さぞ大騒ぎになるよなぁ……。ぞくぞくしな
        :いか? ん? お前を殺さずにすますには、それくらい面
        :白くねぇとなぁ……」
 直人     :「そんな事……させません」
 日向     :「くくくっ……弱いやつが……吠えるんじゃねぇよ! お
        :前は、弱い、よわいよわいよわい!」

 す……と、手榴弾のピンを抜き、マウンドの方へほおる。同時に日向の左目
の輝きが増し、結界から爆弾を現実の世界へとはじき出す。

 直人     :「させないっ」

 直人もまた自分の結界を透して手榴弾にむけ物体破壊を掛け、手榴弾を消滅
させる。

 SE     :ビシッ……ゴゴゴッ

 ドームの天井が裂け、降り注ぎ始める。直人によって破壊され、落ちてきて
いるのだ。
 なかに、マウンドの土であったものや、客席の椅子なども空中で再生され、
日向の元に降り注ぐ。

 日向     :「重力を利用しての攻撃じゃ、見切り易くてつまらねぇなぁ」

 ほとんどの瓦礫を笑みを浮かべながら避け、幾つかは命の矢で打ち落とす。

 日向     :「それと同時に、観客のフォローはできるのかぁ?」

 またも取り出す手榴弾。

 直人     :「させないといっているでしょう!」

 直人の左目が輝きを増す。落下する瓦礫が、重力を無視して日向を襲い始め
る。

 日向     :「……くくくっ。いいねぇ……面白くなってきたぞ!」

 物体破壊、物体再生。この二つとは違う別の能力。物体操作。直人は、物体
そのものを操り動かす術を覚えた。手に取る用に、その一つ一つが意のままに
動く。

 直人     :「(くっ……重いっ……)」

 意のままに動くといっても、重力に逆らって動かすまでは出来ない。
 今のところ、落下の方向、速度を若干変化させる程度でしかない。

 日向     :「くくくっ……いくぜぇっ!」

 愉悦とも呼べる笑みを浮かべ、日向が腕を振るうと、客席から命の光がほと
ばしる。
 それは、瓦礫の一つ一つに向かい、日向からそらす。

 直人     :「なっ……」

 周囲を見渡す。結界の外は、9回裏のクライマックスの割に、客席の歓声が
少ない。

 日向     :「くくくっ……どうした? やらねぇのか?」
 直人     :「……(これ以上攻撃できない……ドーム中の人を人質に
        :されているようなものか……)」
 日向     :「おわりか? おわりなんだな? いいだろう。今日は、
        :これ位にしようじゃないか。会うたびに強くなってくれて
        :嬉しいぜぇ……」

 そういって、にやりと笑う。ゆっくりと、ベンチに向かって歩いて行く。

 直人     :「どこへ行く!」
 日向     :「帰って寝るのさ、今日は、久しぶりに気持ち良く寝られ
        :そうだよ。くくくっ。もう少しだけ、生かしておいてやる。
        :まだ、ぎりぎりの勝負にならねぇからな。いいねぇ、せい
        :ぜいつよくなれよぉ……」

 直人は、後を追えなかった。場所が悪い。それに、新たな力は体力の消費が
大きく、既に限界が近かったのも事実だ。

 直人     :「まだまだ……か……」

 もっと強く、力を求めつつ、一方で心をも磨かねばならない。
 今日のこの事態、遊園地で一緒だった竜也達がいれば、もう少し違った展開
であったかもしれないのだ。

 自嘲の笑みを浮かべつっつ、一方で、確かな成長の成果を感じる。

 直人     :「まだ……終わりじゃない」

 直人は、自分の限界が、今子の時点でない事を再確認した。


時系列
 2度目の1999年10月頃。

解説
 二度あいまみえた対、日向錬也との勝負の中で、直人は新たな能力を目覚め
させた。

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 というわけで、ドームの天井を壊しつつ、レベルアップです(笑)

 語り部だと、技の種類が増えても、効果が上がらないのが難点ですが、
ちょっぴり便利になりました(笑)

 なお、「物体操作」と、サイコキネシスの違いなどは、余り気にしな
いで下さい(笑)


 では……また。


    

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