[KATARIBE 17886] [TRPG] 世界の記述に関する感想( Re: [HA06] :書店瑞鶴について)

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Date: Fri, 04 Feb 2000 14:27:15 +0900
From: Masaki Yanagida <yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [KATARIBE 17886] [TRPG] 世界の記述に関する感想(  Re:  [HA06] :書店瑞鶴について)
To: kataribe-ml@trpg.net
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X-Mail-Count: 17886

 ども、D16です。
 E.Rさんこんにちは!

 書店瑞鶴の設定について読んで幾つか面白く感じたので。といっても、
設定云々では無く、TRPGについては素人と言っておられるE.Rさんがとて
も「パワープレイヤー」な記述をしているのを見て、面白く思いました。

#D16は以下の文章でパワープレイヤーと言う単語を以下のような意味で
使います。
 TRPGのセッションにおいて基本的にルールに準拠した世界観にのっとり
PC及びNPCの行動をルールに乗っ取って解決する態度。プレイヤー、マス
ター双方に使う。

 これだけだと普通か(^^;;
 
 
 TRPGにおいて世界を設定する方法はいろいろあります。
 が、その方法は二つに分割できると考えます。
 それは、
 数値データによる設定。(システムメカニクス)と、
 イメージ規定による設定。(フレーバー)
 です。

 数値データというのはこの場合、PCの行動判定に使用される、『ゲーム
上意味のある数値』です。つまり、666層のAbyssの平均気温がデータとし
てあっても気温がPCの行動にどの様に影響するか記述するルールがなけれ
ば、それは(システム上は)意味の無い数値です。
 イメージ規定とは、狭間のEPにおいて設定されている、「狭間さまよえ
るもの達は、いうなれば現代オカルトファンタジー世界です。現実社会の
日常と、人外のもの・奇妙な事情による非日常的事態との狭 間をさまよ
う存在たちを遊ぼうという設定になっています」
 という辺りですね。
 どのような世界であるかをイメージしてもらう材料記述により、世界観
を作ってゆくやり方です。

 で、パワープレイヤーにとって意味のある情報は(極論すれば)前者のみ
なんです。
 なぜか。
 TRPGにおいては基本的に全ての情報はマスターから提供されるもので、プ
レイヤーはある意味非常に『主観的な』情報に自分の判断を委ねることにな
ります。例を上げます、

「その暗い洞窟の中を見ます、何が見えますかマスター?」
「この暗闇の中ではほとんど何も見えないね」
「マスター、僕の魔法の剣は『光を発してうなる』って言ったよね。そのあ
かりは?」
「うーん、蝋燭の光くらい。3メートル先が見えるくらいだな」
「(このあいだは、目も眩むような閃光って言ってなかったっけ)」

「宇宙港の役人は、荷物チェックの手順をごまかすのを嫌がってる」
「5000Crの賄賂でも駄目かよ。このあいだは大丈夫だったじゃねぇか」
「『このあいだそいつがつかまったんだよ』」
「(昨日の話だろ!)」

 この二つはマスターの判断が求められる事柄において、その情報が無かっ
たために、マスターがそれまでの世界観の常識から判断をした例です。
 おそらく前者ではマスターは魔法の剣をドラマチックに演出する為に、目
も眩むような閃光といってしまったのが、まさか松明代わりに魔剣が使われ
るとは考えていなかったのでしょう。
 後者はおそらくPC達が贈賄という倫理的に問題ある行動を躊躇わず行うよ
うになることをマスターが恐れたのかもしれません。

 このように、考えようによってはプレイヤーは常にマスターの情報の外に
は出ることができず、いかなる冒険もマスターの掌の中で為されることと思
い、場合によっては冒険への意欲を失うでしょう。
 また、マスターの主観により行動への結果が判定される場合、プレイヤー
とマスターの間での見解の相違が起き、それがプレイヤーの判断を躊躇わせ
るもしくは、惑わせる物となります。
 情報量でマスターが主、プレイヤーが従である構造ゆえにこのようなこと
が起き得ます。
 そして、フレーバーによる世界観がメインである場合、この傾向を止める
のはマスターとプレイヤーの間での相互妥協です。
 つまり、マスター,プレイヤーともに相手が何かしたいのかという事を推
し量りお互いにセッションで「したいこと」を実現すると言うかたちでのセ
ッションが成り立ちます。 

 しかし、ここで「魔剣の光は半径10'を照らし出す」という記述。及び
「ヒアデス星系ハスター星の港湾管理官は贈賄に対してさまざまな応対を示
しその応対は表167に示す通りになる」という記述があった場合、マスター
とプレイヤーの立場は変わります。
 マスターが特にそれの記述を無視すると明言しているので無い限り、プレ
イヤーはその記述を持ってマスターに判断を要求できます。マスターとプレ
イヤーの持つ世界への情報量が同じ為です。ここに至りプレイヤーは客観的
な事実により行動を決定できます。
 この場合、マスターは基本的には公正な審判となります。そして、プレイ
ヤーにあるのは自由です。
 その自由は、悪いドラゴンをやっつけてお姫様を救う自由でもあります。
しかし、おそらくはそれ以上に、
 野垂れ死に、飢え死に、法に追われることの出来る自由です。
 彼らは自分の判断に責任を持つことができます。
 PCの行動は全てPC達の判断の末であり、言うなれば全ての結末(ハッピー
エンドもデッドエンドも)は彼らが選んだ結末です。

#途中のダイス目が悪かったってのも、それはダイスで判断する行動を行う
という判断の末ですから。

 まとめます。
 非常に簡単なまとめである程度誤解を招くかもしれませんが次の様にまと
めます。

 フレーバーによる世界観がメインである場合。
 マスターの出す情報の元、プレイヤーはマスターの提示する「マスターの
したいこと」と「プレイヤーのしたいこと」の刷り合わせ(セッション)の
中で双方相互に自分のしたいことを妥協しつつセッションを成立させること
が出来る。

 システムメカニクスによる世界観がメインである場合。
 プレイヤー、マスターともにある程度公開された情報をもとにプレイヤー
は「プレイヤーのしたいこと」をマスターに提示しマスターはそれに対する
リアクションにより自分のしたいことを実現してゆくことが出来る。

#オレ的には前者は「冒険譚を楽しむプレイ」後者を「冒険をするプレイ」
とか言ってます。
##もっとも、どっちでも出来るのでプレイする側の考えの差といえるでし
ょう。ただ、後者はシステムメカニクス、データを必要とするので、準備無
しに出来るのは前者ですね。

 で、ようやく瑞鶴の設定に関してなんですけど、
#ここまでで、E.Rさん読むの止めて無いかなぁ(^^;;ゲームの話ばっか

 この設定方法は明らかにフレーバーではなく、システムメカニクスなんで
すよね。
 何が出来る、何が出来ない。
 出来るとしたらこのような状況。
 出来ないとしたらこのような状況。
 それに対して数値的なデータを入れている。

 これは、確かに瑞鶴を(設定者の意図とは異なる形で)使われないように
する為の記述かも知れないですけれど、数値データがある以上瑞鶴を「乱す
こと」も可能なんです。
 たとえば、別のキャンペーンコード、技能値15もしくはそれ以上のキャン
ペーンで瑞鶴が出てきた時には(基本的にクロスオーバーは無いとは言え)
そのキャンペーンのキャラクターは瑞鶴の平安を「乱すこと」ができる。

#あらかじめ言っておきますけど、別に荒らしたいわけじゃないですよ。

 だから、この設定はパワープレイヤーにとって意味あるだけで無く、狭間
世界の吹利という場所において瑞鶴はこのような場所だとルールの形でわか
る様になっており、「意味のある」設定となってるわけです。

 自分が基本的にD&Dのような古いゲームをメインとするプレイヤーのせいか
こうした記述はとてもしっくり来る上に、イメージが湧くんです。
 つまり、数値での記述によりここで何が出来る出来ない、何かをする為に
はどうすれば良い……。と、想像に肉が付けられる。

 たとえば、自分がマスターorプレイヤーであればこの瑞鶴の状況を以下の
様に使用します。

 1.キャンペーン前半においてキャンペーンのキーとなる書籍を提示し、そ
れを探させる。ただし現在は見つからない。しかし、キャンペーン中にPCが
瑞鶴のあの前提をクリアしたならば、終盤で書籍を与える。

 2.何らかの騒動(百鬼夜行、通り魔、露出狂etc)にまきこまれたPCが逃
げこむ。この時、PCはそれらの騒動に有効に適用できる特徴を持っておらず
ここに逃げこむことで猫と店長と花澄さんの技能値、特徴を借りて状況に対
処できる。(そのあと、どうお詫びするかはそれはまた別のシナリオとなる
でしょう)

 いや、だから何が言いたいかってーと、少なくともTRPGにおいて世界観っ
ていうのは意味ある設定によって深まるもんだなと改めて認識したってとこ
でしょうか。

 しょうしょう、散逸した意見となりましたがこんな感じです。
 皆さんはどう思われたでしょうか?

 
D16
e-mail:yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp
    

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