[KATARIBE 17857] [WP01P]:055 『消えるもの、消えないもの』

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Date: Thu, 3 Feb 2000 15:00:09 +0900 (JST)
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17857] [WP01P]:055 『消えるもの、消えないもの』 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200002030600.PAA32723@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17857

2000年02月03日:15時00分08秒
Sub:[WP01P]:055『消えるもの、消えないもの』:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

 止まっているエピソードにおお返事をば。
 多分、私が止めていたのだと思います。どうもすみません。

 登場人物、会話を修正します。

*************************

エピソード055『消えるもの、消えないもの』
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登場人物
月島直人(つきしま・なおと)
    喫茶・月影の店長にして、住人組織『月影』のマスター。


年末、月影


 一年が過ぎる。
 一年が………

 ……始まると言ってしまって良いものだろうか。


 直人     :「……あ、いらっしゃいませ」
 風音     :「…こんにちは」

 ふう、と、静かに入ってきた客の顔を見て、月影のマスターは苦笑する。

 直人     :「一昨日、譲君が来ましたよ」
 風音     :「そう、聞きました」

 青白い顔が、微かにほころびて。

 直人     :「……風音さん、未来は見えますか?」
 風音     :「……………いえ。どんどん減っていきます」

 妙な物言いだったが、彼女の異能を知る限り、それは納得のゆく言葉である。

 直人     :「まあ……今年はこのまま、繰り返しでしょうね」
 風音     :「そうですね(苦笑)」
 直人     :「それで風音さんは、今日は?」
 風音     :「本を買いに来たのと……久しぶりだったので」
 優      :「そういえば……」

 珈琲とケーキを風音の前に置きながら、優が小首を傾げる。

 風音     :「出不精ですから、私も(苦笑)」
 直人     :「まあ、それは……」

 未来視。
 未来の断片を絶え間無く見続ける者。
 人に信じられることの無い、人が信じることの無い未来を見続ける者。
 人ごみは…故に苦手なのだ、と、聞いたことがある。

 風音     :「あ、そうだ」
 直人     :「はい?」
 風音     :「年末……ここは、開いてますか?」
 直人     :「はい、その積りですが……来られますか?」
 風音     :「私じゃなくって、譲君が来たいって……」
 直人     :「ああ、はい。大丈夫です、開いてますよ」
 風音     :「良かった」
 直人     :「彼は、帰省するのかと思ってましたが」
 風音     :「ご両親と妹さんに相当無理言って勝ち取ったらしいです。
        :年の繰り返しを、見極めたいって…」
 直人     :「…………」

 微かに、直人の表情が曇る。
 その表情を、やはり微かに目を細めて、風音が見やる。

 風音     :「…本人も、多分無茶は承知でしょう」
 直人     :「それにしても」
 風音     :「私と繋がっていた時の風景は、良く覚えている、と」

 かろく、首を傾げて。

 風音     :「住人と一緒の記憶は…消えない。それがどのくらい混乱
        :するものなのか、試してみたいって……」
 直人     :「それが無茶です」
 風音     :「無茶でも怖いよりはましかもしれません」

 間髪を入れずに切り返す。

 風音     :「でも……そうしたら、譲君はどうなるんですか?年を越
        :えた時点で」
 直人     :「去年の位置に、逆戻りです。全部……僕達に関わること
        :以外はリセットされますからね」
 風音     :「…………」

 ふと。
 風音の表情が変わった。
 
 風音     :「……全部?」
 直人     :「全部、です。多分譲君は、ここにいたことは覚えている。
        :僕のことも覚えているでしょう。でも、年を越えれば彼は
        :去年の位置に戻る」
 風音     :「…混乱しますね」
 直人     :「だから心配なんです」

 返してから……直人はもう一度風音を見直した。

 直人     :「……風音さん?」
 風音     :「……………はい?」
 
 聞き返された時にはもう、いつもの顔で。
 いつものように、ほんの少し目を細めて。

 直人     :「……いえ」

 すう、と、語尾が消える。
 それはそのまま、沈黙へと繋がってゆく。


 全て。
 元に戻る。
 全て。
 元に返る。

 ならば…………

 風音     :「ただいま」
 志郎     :「お帰りなさい」

 月曜日は少年。
 それも、聞き分けの良い。

 志郎     :「ご飯、風音の分、おいてあるから」
 風音     :「ありがとう……」

 火曜、水曜、木曜と、その精神は成長し………
 ……そして、崩壊してゆく。


 全て。
 元に戻る。
 全て。
 元に返る。


 転げ落ちるように。


 志郎     :「……風音?(心配げ)」
 風音     :「なんでもない」

 自分よりも背の高い相手の顔を、振り仰ぐようにして笑う。笑ってみせる。

 つまりは。
 彼もまた、消える……………………

 
 住人であること。
 時を記憶し、歪みを受けとめること。
 その、代償なのだろうか。

 風音     :「ケーキ、買ってきたから、どうぞ」
 志郎     :「ありがとう」

時系列
 2回目の1999年12月27日

解説
******************

 しかし……「年末による人間の消去」は、狩人にも起こり得ます。
 とくに、住人と縁の深い狩人の方が、矛盾が生じ易く、消え易い筈です。

 このEPが出来た後に「消去」の設定が決まったので、今思うと「無茶」で
は済まない事態のような気もしますね(笑)

 とりあえず、修正&まとめ版、でした。





    

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