[KATARIBE 17852] [HA06P]: 『過去探し』発掘まとめ

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Date: Thu, 3 Feb 2000 14:01:33 +0900 (JST)
From: ソード  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 17852] [HA06P]: 『過去探し』発掘まとめ 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200002030501.OAA29851@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 17852

2000年02月03日:14時01分33秒
Sub:[HA06P]:『過去探し』発掘まとめ:
From:ソード


こんにちは、ソードです。

 美都も動かんと……ってことで、以前止めていたEPを発掘(笑)

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過去探し
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けだるい午後
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 SE     :ジ……ジジジ……
 美都     :「うーん……」

 セミの音をBGMに、美都が手にとって悩んでいるのは、布の切れ端。それ
には、1つの文字と思われるものが書いてある。

 漢和辞典で照らしてみても、その文字に該当するものは見つからない。

 紫苑     :「にゃ?」

 窓際に座ったままの猫の姿で問う紫苑。
 美都も、部屋の畳に寝転がりながら応じる。

 美都     :「これ……やっぱり不思議な気持ちになるの。私と関係が
        :あるんだと思うんだけど……」
 紫苑     :「ああ、この前、木の上から取ってきた布ですか。作成時
        :期は美都があの場所に居たときと一致しますが……」
 美都     :「やっぱり、関係あるよね……これ。うーん……なんて書
        :いてあるんだろう……」

 考えながら、部屋の中をごろごろと転がる。窓を開けておいても、夏は蒸し
暑い。
 タンクトップにホットパンツだが、暑さはちっともやわらがない。

 美都     :(ごろごろ)

 それを、黙って見ている紫苑。毛皮に汗一つかかないところを見ると、放熱
機構も正常に働いているようだ。

 美都     :「……」
 紫苑     :「どこかで調べるなら、図書館などの施設が良いでしょう」

 美都の転がりが止んだところで、話し掛ける紫苑。

 美都     :「……」

 返事はない。ただの……

 紫苑     :「美都?」
 美都     :「くー(すやすや)」

 眠り姫のようだ。
 セミは、聞いているものが気だるくなるように鳴き続けていた。

助っ人
------

 ユラ     :「うちの図書館?」
 美都     :「はい。なるべく大きな所が良いかなぁ……って」

 次の日の朝食。図書館を探る事にした美都は、ユラの学校の図書館を使わせ
てもらう事にした。

 ユラ     :「でも……うちの図書館で、やたら蔵書は多いけど……資
        :料探すのは大変だよ?」
 美都     :「大丈夫です。時間はありますから」
 ユラ     :「うーん……」

 そういって、食事の手を止めて考え込むユラ。

 ユラ     :「あ……ちょっと待ってて」

 急に立ち上がり、電話に向かう。

 ユラ     :「もしもし、小滝です。美樹さん?あ……そう言えば久し
        :ぶりね。ちょっと、頼みたい事があるんですけど、今日っ
        :て身体空いてます?」

 美樹……という、グリーングラスのお得意様の名が出た。美都も何度か顔を
合わせた事もある。
 食卓で話題に出た事もあったが、「活字の事は彼に聞け」とユラが言ってい
たのを思い出した。

 ユラ     :「手伝ってくれるって。私は学校抜けられないけど、がん
        :ばってね」
 美都     :「ありがとうございます」

 美樹は、後1時間ほどで来ると言う。急いで朝食を摂り、後かたずけまで終
わらせた美都であった。


図書館の探索
------------
 冷房が程よく効き、本を繰る音すら聞こえるような静寂。
 床は絨毯が敷き詰められ、足音は吸収される。
 少し横に目を通せば、本棚に並べられた無数の本。

 美都     :「うわ……売るほどあるんですね……」

 普通の本屋よりも蔵書は多いのだ、売るほどあってあたりまえである。

 紫苑     :「さて……どこから調べるんですか?この蔵書から必要な
        :書物を探し出すのは一苦労そうですね」
 美樹     :「布施さんは、どのような本をお探しなのですか?」

 やさしい笑みを浮かべながら美都の方を見る美樹。その物腰は穏やかだ。

 美都     :「えと……この文字が何処の国のものなのか調べてみよう
        :かとおもって……」
 美樹     :「分かりました」

 そういうと、すたすたと億の方へ歩いて行く。迷う事無く、一つの区画へ案
内された。

 美樹     :「あいにくと、全く同じ模様はありませんが、似た様な文
        :字ならこれとこれ、それとこの本に載ってます」
 美都     :「ありがとうございます! 紫苑ちゃん、手伝ってくれる?」
 紫苑     :「ええ、手伝いますよ」
 美樹     :「じゃあ、私は授業がありますから、これで失礼しますね」
 美都     :「ありがとうございますっ」

 深々とお辞儀をした後、取り出された本の1冊を取り、読み始める。
 美樹は、その光景を見て笑みを浮かべた後、その場を後にした。

未だ、見つからず
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 館内アナウンス:「閉館時間となりました……」

 美都が本を読み始めてから、数時間は経ってしまっていた。
 何度見直しても同じ文字は見当たらない。

 美都     :「やっぱり駄目か……」
 紫苑     :「ふむ……ここに参考文献がかいてありますね、しかも3
        :冊とも同じものを使っています」
 美都     :「あ、ほんとだ……“吹利史”?吹利って、この街の名前?」
 紫苑     :「これだったらあるかもしれませんね」
 美都     :「ちょっと聞いてくる!」

 美都は、閉館作業をしている司書のところまで駆けていった。
 その後ろ姿を見ながら紫苑は書物を片付け始める。本箱に戻したところで、
手を止めた。

 紫苑     :「(高速スキャン開始……データ保存……)」

 数百ページある蔵書だが、CD-ROMを焼くよりは量が少ない。ものの数秒で記
録が終わる。3冊であっても、周囲から奇異の目で見られるほどではない。

 紫苑     :「スキャン終了。何かの役に立つと良いのですが……」

 そうつぶやくと、受付の方に向かって行った。

 司書     :「吹利史……ですか……。残念ながら、この図書館には置
        :いていないようですね……」
 美都     :「そうなんですか……ありがとうございました」

 一礼して、図書館を出る。後から紫苑が追いついてきた。

 紫苑     :「駄目だったみたいですね」
 美都     :「うん……」
 紫苑     :「でも、その本があっても正確な情報が得られるとは限り
        :ませんし」
 美都     :「でもっ!」

 わずかに距離をあけ、立ち止まって振り替える。正面から紫苑の顔を睨みつ
けた。

 美都     :「……」
 紫苑     :「すみません。無責任な発言でしたね……」
 美都     :「ごめん……紫苑ちゃんにあたっても仕方ないよね……」

 そういうと、また二人は歩き出した。

 美樹     :「布施さん、すみません。遅くなってしまいました」

 横合いから、美樹が歩いてくる。確かに、授業は図書館の閉館と同時刻くら
いまでと聞いていた。

 美都     :「あ……美樹さん……」
 美樹     :「どうでしたか?……と、ここで立ち話もなんですから、
        :落ち着けるところに行きませんか?」
 美都     :「あ、はい」
 美樹     :「お勧めの場所があるんです。グリーングラスからも近い
        :し、コーヒーが美味しいんですよ」

 コーヒーが美味しい、と“パン屋”を紹介する美樹も美樹ではある。


ベーカリー楠
------------

 SE     :からんからん

 ドアベルの音が鳴る。

 観楠     :「いらっしゃいませ」

 店長が出迎えてくれる。

 美樹     :「あ、こんにちは」
 紫苑     :(軽い会釈)
 美都     :「あ……こんにちは」

 三者三様の挨拶をする。

 観楠     :「やあ……美樹さんに紫苑さん……と、前のお店の……」
 美都     :「布施美都です。グリーングラスで住み込みのバイトをし
        :てます」
 観楠     :「そうでしたね。朝に何度かお見掛けしました」
 美樹     :「おや、知り合いだったんですか」
 美都     :「はい」
 観楠     :「まあ……こんな所ではなんですから、奥へどうぞ」

 奥に通される3人。何人かの常連が美樹や紫苑と言葉を交わす。
 紫苑の紹介に、自己紹介をしてまわる美都。

 簡単にパンとコーヒーを頼んでから、一息つく。

 美樹     :「その様子だと、見つからなかったみたいですね?」
 美都     :「はい。分かったのは、神道の神様に関係が有りそうだと
        :言う事くらいでした……」
 美樹     :「……」
 美都     :「で、3冊とも、“吹利史”って言う文献を参考にしてる
        :んです。でも、それは図書館には無いらしくて……」
 美樹     :「“吹利史”……ですか……」
 美都     :「はい、分かりますか?」
 美樹     :「ふむ……日本全国から探すわけには行きませんからねぇ
        :……」
 美都     :「そうですよね……」
 美樹     :「まあ、何とかなるでしょう。一息ついたら探してみます
        :か……」
 美都     :「はい……」

 しばらく、コーヒーをすすっている3人。

 美樹     :「さて、行きましょうか」
 美都     :「え?……何処に行くんですか?」
 美樹     :「足の向くまま……ってやつです」
 美都     :「はあ……」
 紫苑     :「まあ、当ても無いわけですし、仕方ないところでしょう
        :ね」
 美樹     :「大丈夫ですよ、見つかると思います。そんな気がします
        :から」

 美樹は相変わらず笑みを絶やさず、美都は不安な面持ちで、吹利の市街を散
策し始めた。
 しばらくして、美樹が立ち止まる。

 美樹     :「ここなんてどうでしょうねぇ」
 美都     :「……あの……」

 立ち止まった本屋は、瑞鶴。
 美都も何度と無く通った場所である。

瑞鶴
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 美都     :「こんにちは……ととっ」

 入り口を開いたすぐのところにいた猫を、踏みそうになり、何とかまたぐ。

 瑞鶴の猫   :「…………(失敬な客だね)」

 大欠伸。

 花澄     :「あ、美都さん」
 美樹     :「こんにちは」
 花澄     :「あ、こんにちは」
 英一     :(……珍しい組み合わせだな)
 美都     :「あの……ここに“吹利史”って本、ありますか?」

 単刀直入。挨拶を交わしている時間さえ、美都にはわずらわしかった。
 何故、これほど焦っているのか自分でも分からない、ただ“急がなければ”
という想いのみ。

 英一     :「吹利史?」

 少し怪訝そうに。

 英一     :「著者名は?」
 美都     :「えと……山口……」
 紫苑     :「山口淵鳴です」
 
 記録しておいた3冊から検索し、関係あると思われる記述を思い出して行く。

 紫苑     :「日本の古代史の論文本で……」

 更に検索、さすがに3冊同時に思い出すのは容易ではない。

 紫苑     :「吹利が題材なので郷土史かも知れません。昭和12年の
        :本なはずです」

 さまざまな部分から類推される情報を纏め上げる。しかし、分かるのはここ
まで。

 英一     :「わかりました。残念ながら注文、という形で良いね?」
 美都     :「はい、おねがいします」
 英一     :「取り寄せられるかどうか分からんが、取り寄せられたら
        :連絡します」
 美都     :「はい……じゃあ、今日は帰ります」
 紫苑     :「今日はおしまいですか?」
 美都     :「うん、もう遅いし、帰って夕飯作らなくちゃ。美樹さん、
        :遅くまでありがとうございました」
 美樹     :「いえ、お役にたてたか分かりませんが……」
 美都     :「いえ、助かりました。じゃあ、花澄さん、英一さん、よ
        :ろしくお願いします」
 花澄     :「ええ、またいらして下さい」
 英一     :「ありがとうございました」

 そのまま、瑞鶴を出て、駅の方へ向かう3人。

 美都     :「今日は本当にありがとうございました」
 美樹     :「いえいえ」
 美都     :「じゃあ、私たち、ここで失礼します」
 美樹     :「はい、何かあったら、また呼んでください」
 美都     :「わかりました。ありがとうございます」

 そういって、双方礼をし、帰路に就いた。

閉店寸前の連絡
--------------
 閉店寸前の瑞鶴。最後のお客の帰った後。

 花澄     :「で、どうするんですか?」
 英一     :「ちょっとあれは珍品だからな。もう一冊手に入れ
        :るのは難しい」
 花澄     :「ええ」
 英一     :「堀川さんに連絡して、美都さんには堀川さんを紹介する
        :くらいしか出来ないだろう」
 花澄     :「美都さんに、見せるの?」
 英一     :「堀川さん次第だろうな。俺の本じゃないんだし」

 そういって、英一は『吹利史』の最初の注文者、堀川祐司への電話番号をま
わした。
 そう、既に、『吹利史』は瑞鶴にあるのである。本が“湧く”瑞鶴で、半分
こげたように“湧いた”『吹利史』。
 今まで、新刊だと言う訳にも行かず、連絡しないでいたのだが、注文された
客よりも先に知り合いが見る訳には行かない。

 英一     :「……」

 番号を回し、待つ。電話の呼び出し音が鳴る。

******************

 というところで、会話のチェックをお願いします。>リューさん、ERさん、不観樹さん

 とりあえず、電話を掛けてみてますが……祐司さん、いかがでしょうか?>ごんべさん


ではまた。


    

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